第495話 ◆アリシアの大冒険(その6)
◆アリシアの大冒険(その6)
モッフルダフに無理を言って、島の東沖からボートに乗せてもらい、漁村の小さな桟橋に着いた。
この漁村から山に向かって更に20kmほど行くと、伝説の勇者さまの玄孫
やしゃご
が住む村があるはずだ。
漁村は確かに小さく家が5、6軒あるだけだった。
人の姿は見えない。 おそらく漁にでも出かけているのだろう。 道を歩いているのは、鶏と犬くらいだ。
まだお昼前だし、夕方までには目指す村には着くだろう。
あたしは期待に胸を膨らませ、足取りも軽やかにずんずん歩いて行く。
道は土がむき出しで、ところどころに砂利が敷かれている。 こういう道は久しぶりだ。
道幅はだんだんと狭くなり、途中からは上り坂になった。
どうやら、この先はずっと上り坂が続くようだ。
坂道が続くということは、道は九十九折り(つづらおり)になっていて、実際に歩く距離は直線距離の何倍にもなる。
案の定、山道の途中で日が暮れて、辺りは真っ暗になってしまった。
大きな木々が月を隠し、もう誰かに鼻をつままれても全く分からない状態である。
この島には魔物はいないと言っていたけど、山の中で一人真っ暗な道を歩くのは超怖い。
あとどのくらい歩けば村に着くのだろう。
あたしは、いままでの疲れがどっと出て、近くにあった石の上に腰を下ろした。
そうだ! モッフルダフがお弁当を持たせてくれたのをすっかり忘れていたわ。
歩くのに一生懸命になっていて、あまりお腹が減ったと思わなかったけど、あたしは座った途端に猛烈な空腹が襲ってきた。
急いでリュックを下ろして、中から葉っぱで包んであったお弁当を取り出す。
いったいどんなお弁当かしら? ワクワクしながら包みを広げていく。
わぁー おいしそー。
なんと包みの中には、ものすごく大きなおにぎりと巨大な卵焼きが入っていた。
おにぎりはセレネがよく作ってくれた。 初めて見たときは、なんだこれと思ったけど意外に美味しい。
魔物退治に出かけるときによく持っていったし、夜遅くお腹が減ったときなんかに、ちょこっと食べるのにも適している。
セレネは海苔っていう真っ黒な紙を巻いて、パリパリ音をさせて食べていたけど、あたしは焼きおにぎりやお味噌を塗ったのが大好きだ。
それにしても、このおにぎりは大きい。 あたしの顔くらいある。 どおりでリュックサックが重かったわけだ。
卵焼きも大きかった。 セレネは甘くない卵焼きが好きだけどあたしは甘いのが好きだ。
どっちが美味しいかで、よく喧嘩にもなった。
そんなことを思い出しながら、モグモグ食べたのだけど、結局どっちも大きすぎて半分くらい残してしまった。
***
山の中で夜になってしまったので木の上に登り、枝を寄せて蔦で縛って寝床を作った。
魔物はいないかもしれないけれど、獣がでる可能性がある。
今は一人しかいないため交代で見張りができないので、眠るにはこの方法がベストだ。
あたしは、明日のことを考えながら、深い眠りに落ちていった。
***
ねえ、いつになったらあたしを登場させるつもりなのよ!
いや、しばらく出番はありませんよ。
ねえってば!
しつこい!
チッ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます