第459話 ◆予選突破なるか?

◆予選突破なるか?



セレネさん、たいへんです!


コリン君そんなに慌ててどうしたの?


ちょっとこれを見てくださいよ。


コリン君が手に持っていた紙をあたしに手渡してくる。


なになに・・・  えっ・・ 5000人って・・・


これは昨日の数字でエントリー数は、まだまだ増え続けています。


ど、どうしよう。  まさかこんなにたくさん参加したい人がいるなんて・・・


国民大運動会なんて大々的に宣伝したからじゃないですか!


だって・・・


こんなに大勢がいっぺんに運動できる場所はありませんよ。  それにもう運動会は1週間後ですし。


えーっと・・ そうだ!  大雨なら中止だよね。


そんなに都合よく雨なんか降りません!  ここのところ10日に1日くらいしか雨が降らないじゃないですか。


それに今は雨季じゃないですし・・  どう考えても当日に中止になるほどの雨が降るとは思えませんよ。


あ、あたしフルフル坊主作る。


セレネさん、現実逃避はやめましょう。



しかしもし仮に場所が何とかなったとしても8000人集まったら競技時間だけでいったいどれくらいになるんですかね?


んっ! 閃いた!  最初の競技をマラソン大会にして、その地区の上位200人が本大会に参加できるってのはどう?


なるほど、それはいいアイデアかもしれませんね。  それなら参加者を1000人まで絞り込めます。


うふふ なんだか高校〇クイズみたい。  頭の中に高校生がたくさん集まってクイズをやっている映像がよみがえる。


みんなニューヨークへ行きたいかーーー!  おぉーーー!



でも、セレネさんって走るの得意でしたっけ?   自由の女神を頭に浮かべ、ぼーっとしているところにコリン君から衝撃の一言が・・


えーー もしかしてあたしも走らなくっちゃいけないの?


当たり前です。 一人だけズルはできませんよ!  国民のみなさんが見てる前で、女王さまがズルするなんてみっともないでしょう。


えーー マジかーー あたし長距離は苦手なんだよーー   ←うそ セレネは、運動全般ダメダメです。



でもなんとか優勝して、優勝賞品を他の参加者に渡すのを阻止しなくっちゃね。


あたしは悪知恵を働かせ始める。


みんなに気づかれないように、ときどき魔力を使って瞬間移動するとか・・・


走ってるふりして、地上すれすれを飛ぶとか・・



ちょっと、セレネさん。 気づいてないかもしれませんが今の思いっきり声に出てますから!


え? やだ、ほんとに?  アハハ



***


こうして、まずはマラソンが第一競技となった。  


よーい  パァーン


東京マラソンの3万人には及ばないが、8500人のランナーが一斉に走り出す。


時間やこの後の競技も考慮して、距離は15kmとした。


あたしも一応参加してはいるものの、あっという間に4000番くらいまで順位を落とす。



はぁ はぁ  やっぱりあたし、長距離には向いてないわ~


セレネ、おっさきにー。  アリシアがあたしを横目で見ながら追い越していく。


ばかめ ペース配分を考えないで飛ばして行ったって後半で絶対にへばるって!



それにしても他のみんなは、かなり先を走ってるのよね?


まあ、ミミさんは10位以内は確実だろうし、ニーナも意外に早そうだ。



コリン君は、えんじ色の短パンを穿いていたけど、やっぱり女子にしか見えなかった。


エントリーシートの性別は、どっちを書いたのだろう?  ちょっと気になる。


コリン君も意外に早いので、かなり上位でゴールするだろうな。



そんなことを考えていると後方から凄い勢いで走ってくるランナーがいた。


それは走ってくる足音だけで分かる。


その足音はあっという間にあたしに追いついた。



セレネちゃん、こんなところに居たのね。


あれ? 軽快な足音の正体は、ヴォルルさんだったんですね。


そうなのよ。 ちょっと体の改造に時間がかかっちゃって。


そう言われてヴォルルさんの体を見れば、全身の筋肉がすごいことになっている。



ど、どうしたんですかそれっ?


オホホ ちょっと魔力を使って筋肉を増やしてみたの。  もう体が勝手に動いてくれるので寝ながらでも走っていけそうよ。


す・・すごい。  でもそれってドーピングみたいですけど!


うふっ  大会規定にはそんなこと書いてないからセーフでしょ。


そっか、規定に書かれてなければ何をやってもOKなんだ。  ←いやいやダメでしょ!


あたしはまだ、ヴォルルさんみたいに魔力の応用がうまく出来ないので、規定にある競技中に魔法を使ってはならないという条項が大きな壁になっている。


確かにヴォルルさんの肉体改造は競技中には魔法を使っていない。


あたしも、なんとかうまい方法を考えないとこのままでは予選競技のマラソンを突破することは出来ない。


何かいい方法がないかと走りながら考えているとシルフがあたしのところに飛んできた。



どうしたのシルフ?


セレネの応援に来てやった。


ほぉ・・ これはずいぶんと上から目線の応援ありがとう♪


シルフがあたしの肩にとまったと思ったら、ブラックも飛んできてあたしの頭にとまった。


セレネ、遅いぞ!  セレネより後に走ってる仲間は一人もいないし。


そう言ってブラックは頭の上でケタケタ笑う。


なんだよ。 二人がたかったら、その分よけいに重なるだろ!


そう言って、あたしは急に閃いた!


そうだ!  シルフとブラックがあたしの両肩を持って少しだけ飛んでくれれば、体が軽くなるじゃん!


ということで、二人にやってもらいましたわ。 オホホホッ


大会規定の反則行為は、ここまで詳しく書いてないしギリセーフってことでいいよね?



この効は抜群だった。 ひと蹴りで20mは飛ぶように進む(半分飛んでるけど)。


結果、あたしはゴール地点の手前200mでセカンドグループに追いついた。


そしてそのままゴール。 中央ブロックでは20番目に入ることが出来た。


やった♪  これで予選突破よ。


あたしが喜んでいると、アリシアが中央ブロックの198番でゴールして来てそのまま倒れた。


ありゃりゃ。 これは脱水症状じゃない?  シルフさん、悪いけどお水出してくれる。


セレネ、人使い荒い!


ハハハ  ごめん。


この後、シルフが出した水を全身に浴びて、むっくり起き上がったアリシアだったけど、白い体操服が濡れてちっぱいが透けていたのを、本人は全く気付いていなかった。


プププッ




***


セレネさん、予選突破おめでとうございます。


ありがとう。 久しぶりに頭を使ったわ~。


本当にこういう事にかけては、セレネさんの右に出る者はいないですよ。


ねえ、それって褒めてる?


・・・


ちっ

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