第456話 ◆ルックとアンナとラグエル

◆ルックとアンナとラグエル


メイアを捕まえそこなった二人は、ルックの各種センサーを駆使して調査対象物(生き物)が多い場所へと移動していた。


ルックはキャタピラなので最大時速は30km/h、アンナは二足歩行で人間並みの35km/hである。


本来ならば調査用のホバークラフトがあったのだが、宇宙船の爆発に巻き込まれてしまったため自走するしかない。


二人は夜通し走り続けて、首都近くまでやって来ていた。



夜が明けて来たし、これだけ家があるとルックは目立つわね。


おいおい、スカート穿いてないアンナに言われたくないぜ。


えっ やだ、本当。 どうしよう?  アンナはメイアに引きずられたときにスカートが脱げてしまったことに気付いていなかった。


なんだ、今ごろ気が付いたのか。  ルックが少々呆れ気味でアンナを見上げる。


なんだかいつもより動きやすいと思ってたけど・・  困ったわ、どうしようルック。


だからパンツくらい穿かせてもらえって言ってたんだよ。


でもまあ最悪あたしはアンドロイドだからセーフでしょ。


いや、残念だけどお前は人にしか見えんよ。


ぐっ・・  アンナは首をガックリ垂れる。



それよりアンナ、あそこを見ろよ。


ルックのマジックハンドが指した方をみれば、なんとさっきの幼女がこちらに向かって歩いてくるではないか。


どうするよ?


ルック、後をつけてみましょう。  もしかすると他の調査対象が見つかるかも知れないわ。 


OK、アンナ。


こうして二人は、メイアの後をこっそり追跡し始めた。


・・・



幼女はトコトコ歩いてお城のような建物に向かって歩いて行く。


まだ早朝のため、通りには人影は無いが、パンを焼く匂いがほのかに漂ってくる。


ロボットやアンドロイドのエネルギー源はバッテリーであるが、匂いは重要な情報でありセンサーはそれをしっかり検知する。


アンナ、そろそろ人が起きて来る時間だぞ。


そうね、あそこの大きな建物の中なら隠れるところもあるでしょう。


そうだな。


二人は幼女の後について、お城の中へ入って行った。



普通のお城なら門のところに警備兵がいるのだが、ここは貧乏城なので警備兵など雇うお金は無い。


このようにセキュリティはガバガバであるが、この城の住人の人の良さと恐ろしさは国民に知れ渡っているため問題は無いのだ。



幼女は建物の中に入って行ったが、ルックとアンナは当然ついて中に入るわけにはいかない。


二人は建物の左側に回り込んで中庭の植え込みの陰に身を潜めた。



おい、アンア。  その座り方だと用を足してるようにしか見えないぜ。  ワハハ


ゲシッ  アンナはルックの胴体に蹴りを入れる。


おい!  いきなり何をするんだ!   見ろよ、此処。 こんなにへこんだじゃないか。


なによ! ルックが下品なことを言うからじゃない!



隠れているをすっかり忘れて二人が大声で怒鳴り合っていると・・


あらあら、そこのお姉さま。  こんなところでオシッコなんかしたらダメですよ。


はっ?


二人が振り返るとそこには、なんと天使が立っていた。


あ・・あたしオシッコなんかしてないわよ!  失礼ね。


でも、そこに水たまりが。


ええーー?  見れば確かにアンナの傍に大きな水たまりが出来ている。


あああっ  アンナが蹴りを入れたから、俺のタンクから冷却水が漏れたのか?


ルック、きっとそうよ。


あ、あのね天使さん。 あたしはアンドロイドだからオシッコなんてしないの!


アンドロイド?  なんですかそれ?


つまりね、人間に見えるけど機械なのよ。


機械? 新手の魔物でしょうか?  ラグエルは初めて見る二人に少し興味を持った。


そんなところではなんですし、どうぞ中にお入りになってください。   (この城の住人はみんな親切である)


は、はあ。  どうもお邪魔します。


ねぇ、ルック。 この人なんでこんなに警戒心がないの?


いや、アンナ。 もしかしたらこれは罠かもしれないぞ。


そんなことを言っても、もう見つかっちゃったし。  行くっきゃないわよね。


二人は仕方なしにラグエルの後について、中庭から広間に入っていく。



兄さま、あれは!  ちょうど広間にいたティアが、ラグエルと一緒に部屋に入って来たルックとアンナを見て驚く。


ティア、あれはθ星の探査用ロボットと指揮官アンドロイドだ。


でもどうしてここに?


きっと僕たちを助けに来たに違いないよ!


兄さま、あたし嬉しい。  あたしたちやっとお家に帰れるのね。


二人は嬉しくなってルックとアンナの傍に走って行く。



ルックも自分に向かって来る二人を見つけ、直ぐさまデータベースの情報と照合し、それがルイとティアだと認識した。


おい、アンナ。 あれは、俺たちが探していたルイとティアだ。


ええ、そうみたい。  でもやたらと嬉しそうなのが気になるけどね。



き、きみたちはθ星のロボットだよね?  ルイがルックのボディに書かれた製造Noプレートを撫でながら確認する。


そうだ。 俺たちはこの星の調査と君たちを探しに来た。


やっぱりそうか。  それで二人が乗って来た船は今どこにあるんだ?


残念ながらあたしたちが乗って来た戦艦はβ星に攻撃されて爆発してしまったわ。  アンナがルックのかわりに答える。


なんだって。 それじゃ君たちは、この間のドルフ級戦艦に乗ってたのか。


兄さま・・・  ルイとティアは、期待が大きかっただけにガックリとうな垂れる。



こちらの方たちは、ルイさんとティアさんのお知り合いだったのですか?


ラグエルが床にへたり込んでいるルイの後ろから声をかけるが、ルイは放心状態で反応がない。



ラグエルさん、あの2台のロボットは、あたしたちの星からやって来たのです。


兄の代わりにティアがラグエルに説明をし始めた。


そうなんですか。


はい。 でも彼らが乗って来た船はβ星の船に破壊されてしまったので、結局彼らもあたしたちと同じで帰れなくなってしまったのです。


まあ・・ それはたいへんでしたね。  わかりました。  それでは、わたしがセレネさまにお二方をこのお城においてくださるようお願いしてみます。



そう言うとラグエルは、広間を出て行ったのだった。

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