第447話 ◆天使フェチのエルサ

◆天使フェチのエルサ



東の国の大魔導士エルサは天使フェチだった。


フェチとは異性の身体的特徴あるいは装飾的な部分や要素に対して性的魅力を感じる性癖のことである。


エルサは天使を崇拝しているのだが、あまりに好きすぎて変態の域に達しようとしていた。


まあ、リリーも似たようなものだったのだが。



今回は、天使に知り合いが出来てエルサは舞い上がっていた。


国王に仕える魔導士であるがゆえに、勝手に自国を出ることは出来ない。 また鎖国政策も然りである。


半年は耐えた。 だが、どうしてもセレエルに会いたくて我慢ができなくなった。


そこで、セレエルが自国へヴァカンスに訪れたいと言っていたこともあり、天界を崇める国王にうまく取り入ってセリエルに会いに行く許しを得たのだ。


そして、天使セリエルが東の国へヴァカンスで訪れた際には、自分も接待役として一緒に彼の地に行く予定だった。



しかし、セリエル様はご自分はヴァカンスには行かず、日ごろの大臣たちの労をねぎらうとおっしゃった。


さすがに天使様は慈悲深い。 そしてエルサはヴァカンスに出かけたこの国の大臣たちに代わり自分がセレエル様のお世話にしようと思ったのだった。



・・・


さて、セレエルさま。 さっそくですが、10人の神官たちに仕事を割り振りたく存じます。


大まかで結構ですので、仕事の内容を教えてくださいますでしょうか。


わかりました。  それでは、まず書類の整理があります。 処理済みの書類を分類し、それぞれ日付順に綴じて行きます。


それから、各所で要請があった道路や公共施設の修理、病気になった人たちを病院まで送り届ける仕事、役所に提出される書類の整理、国境の警備状況調査というところでしょうか。


なるほど、承知いたしました。  それでは連れて来た神官を最も効率のよい担当分けをし、さっそく任に当たらせましょう。


それは助かります。 ヴァカンスの受け入れだけでなくこのような雑務まで助けて頂いて、感謝の念に堪えません。


いえ、このエルサ、天使様のお役に立てて至極光栄でございます。 そう言いながらエルサは、ぐいぐいセレネに近づいて来る。


近い、近い 近い なんなのこの人?  セレネはちょっと引いた。


スゥー ハァー スゥー ハァー


スン スン スン


嗅がれてる? あたし嗅がれてるの?


おっと失礼いたしました。  天使様があまりに良い匂いなものでつい・・


はぁ・・ それは良かったです。  (いや、何言ってんだあたし!)


それでは、また後程伺います。


そう言ってエルサは、広間から出て行った。



ふぅ 前からちょっと変な人だったけど、だいじょうぶかなぁ・・


そしてこのセレネの心配は、すぐに実際のところとなる。



夕方になって、エルサが今日の仕事の状況を報告しに来た。


まあ、ざっとこんな感じになっております。


すごいです。 みなさん真面目にやっていただいて、どのようにお礼を申し上げればよのかわかりません。


天使様のそのお言葉だけで十分でございます。


ああ、そうでした。  お食事のご用意が出来ておりますので、どうぞダイニングまでいらして下さい。


まあ、食事の支度までしていただいてたのですか?  ←セレネは冷や飯に納豆で夕食をすませる予定だった。


はい。 料理が得意な者も連れてまいりました。 セレエル様のお口にあえば良いのですが。


あたしは、なんでも食べちゃいますよ!  太ったら激やせダイエットすればいいのですから。  


はあ・・


いや あの  オッホッホッホ  


・・・


用意してもらった食事は、とても美味しかった。  たぶん東の国の郷土料理なのだろう。  なんというか、素朴で田舎のおばあちゃんが作ってくれそうな料理だった。


コン コン


お腹いっぱい食べて、ぽっこりお腹をさすっていると部屋のドアがノックされる。


はーい。 


お風呂のお支度が出来ております。


ありがとうございます。


のちほどこのエルサがお背中をお流ししにまいります。


えっ?  いや、それは・・・


天使様、ご遠慮は無用です。


いや、そうでは無くて・・


いやいや、天使様のお世話を怠ったとあれば、わたしが国王より叱られてしまいますれば、ご遠慮は無用です。 それでは、また。


あ、ああ~  あー もう!  まあ、お風呂に入ったら中から鍵かけとけばいいか。



・・・



ちゃぷん ザザァー 


ふぅ  いいお湯だ~  ヴァカンスに行かなくても、うちのお風呂は温泉だしね~


今日は少し食べすぎちゃったかなぁ  お腹がポッコリさんになってるよー


今頃はアリシアたちも、ご飯食べてお風呂に入ってるくらいの時間だよね・・・



みんながいないとこんなに静かなんだ。 あたしは、こっちの世界に来たばかりのころを思い出す。


シルフは普段、口数が少ないし二人の時も騒がしくは無かったなー



体が温まったので、髪と体を洗うため洗い場に座って石鹸を取った時、何気に目の前の鏡を見て驚いた。


うわっ  エルサさん。  なんで入ってこれたんですか?  鍵かかってたでしょ!


ああ、このエルサに開けられない鍵などこの世に存在しません。


ってか、なに勝手に入って来てるんですか!


いや、先ほどお背中をお流しするとお伝えしておりましたが。


いや、裸の女の背中を数回会っただけの男の人が洗うというのはどうかと思います。


えぇと エルサは女ですが、それでもダメでしょうか?


えっ?  女?  エルサって女だったんですか?  振り返ってみれば、たしかにおっぱいが・・・でかい!


あの~ いままで男だと思ってたのでしょうか。


いや、声も低いし、最初にお会いした時に毛布みたいのを被ってたんでてっきり男かと。


誤解が解けたようですので、お背中をお流しいたします。


そういいながら、エルサはタオルに石鹸をつけ始めた。


はぁ  はぁ  はぁ  


なんだか、エルサの息が荒くなってきている。


どどど、どうしよう。   あたしの頭の中の警報機がこれは危険だとカンカンなり始めた。



***


あんたって、もしかしたら巨乳好きなの?


いやあ  大は小を兼ねるって言うじゃないですか。  でも貧乳もカワイイと思いますよ。


ふ~ん


で、コリン君はデカ○ンなんですか?


ななな なんて事聞くのよ!


だって、セレネさんが443話で言ってたんじゃないですか。


ノーコメントです。

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