第441話 ◆セレネ第二形態に変化を遂げる
◆セレネ第二形態に変化を遂げる
覚悟はしていたけれど、初日でしかも30分であのざまの自分にあたしはショックを受けた。
まだ、こっちの世界に来たばかりのころに、エイミーたちと火の山の洞窟で魔物と戦った時を思えば、こっちの方が全然楽じゃないか。
これは、冒険をやめデスクワークばかりになって、体も精神も鈍なまってしまっていたんじゃないのか!
ここであたしは変なスイッチが入った。
女の意地というスイッチだ!
坑道の中に入るのに暑さ対策を十分にしたあたしは、ほかの鉱夫たちの倍の仕事をこなした。 ←ほんとはズルをして魔力を使った
うぉりゃーーー
ガッ ガッ ガッ ザクッ ザクッ
その結果、一日の採掘量としては過去最高を3日連続で記録した。
あたしは、他の鉱夫からも一目置かれる存在になり、食事もおかわりが3杯まで許された。
これは破格の待遇だった。 あたしは、こんな些細なことでも超嬉しくなって、その後の採掘仕事に更に全力を注いだ。
そして一月が過ぎた。 坑道の長さはとんでもないくらい伸びて、掘り進めていた坑道にはもう鉱脈がなくなってしまっていた。
そんな状態になったため、今日は採掘作業が中止となって、あたしは体力回復のためまるまる1日を寝て過ごすことにした。
昼近くになって食事が出来たと同僚の鉱夫が呼びに来たが、なぜか食欲がなくてそのまま眠り続けた。
・・・
夜になり、また食事の時間に起こされたが、今度は立ち上がる気力までが失せていた。
これはいったいどうしたことだろう?
がむしゃらに働いて来たが、それが中断したことによる喪失感なのか、それとも病気にでもなってしまったのだろうか・・・
そして、あたしはまた深い眠りに落ちていった。
・・・
翌朝、早くに目が覚めたあたしは、体がとても軽くなっていることに気づいた。
1日ぐっすり眠ったことで、いままでの疲労が回復したのだろう。
あたしは少し嬉しくなって、背中の羽をパタパタと動かした。
ん? 羽って?
確かに背中に違和感を感じる。 首を後ろに回してみると白くて大きな翼のようなものが見える。
あたしは、急いで洗面所に一つだけある小さな鏡の前まで走った。
そして、鏡を見たあたしは、思わず息を飲んだ。
あたしは背中の翼よりも、むしろ頭の上にサリエルと同じ天使の輪が輝いていた方に驚いたのだ。
これはヤバイ。 もしかしてあたしは、重労働の挙句に病気になって死んでしまったのだろうか。
この銀山に移送される馬車の中で見た夢が、きっと正夢になってしまったに違いない。
あたしは、その場にガックリと膝間づいた。
あたしがショックで洗面所で固まっていると周りがザワザワし始める。
おい、あれは天使様じゃねえか?
間違いない。 でもなんでこんなところに天使様がいるんだ。
おい、責任者を早く呼んで来い!
なんて、ありがてえことだ。 俺は天使様を初めてこの目で拝んだぞ。
みんな、天使様をこんな汚いところにおいておくわけにはいかん。 早く鉱山事務所へお連れするのだ。
おお、そうだな。 みんな、道を開けるんだ。
こうして、あたしは鉱山事務所の所長室に連れて行かれたのだった。
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