第440話 ◆裁判と判決
◆裁判と判決
東の国の国王に仕える大魔導士エルサ。
あの大魔導士エルサとヴォルルさんとは、どっちが強いんだろう?
エルサが馬車に乗っているときに発した気は、相当な強さだった。
こっちの言い分を聞こうとしない性格はあまり関心できないが、この国での地位と発言力はかなりのものなのだろうなと思う。
・・・
そして2日後、裁判が開かれた。 裁判といってもあたしに弁護士がつくでは無く、一方的に罪状と判決が述べられた。
九条セレネは不法入国の罪により、北の銀山での労役1年を科すこととする。
な、納得できません。 そもそも不法入国とは、故意に入国することではないのですか。
迷い込んだ者に、罪はないと思いますが! ←うそ
お黙りなさい! 証拠は揃っているのです。 これを見てもあなたはこの国に迷い込んだというのですか?
そこには、大きな丸い鏡のようなものがあって、あたしが山を越えてこの国へ入った様子が映し出された。
それは明らかに意思を持って山越えをした自分の姿が映っている。
あー これは迷いは一切なしっスね。 すみません。 でも、ほんとうにヴァカンスの候補地を探していただけなんです。
これ以上の言い訳は無用だ。 本来ならば死刑でもおかしくはないのだぞ!
既に判決は下されたのだから、判決に従って罪を償うがよい。
はぁー 1年も働くのかー こりゃーヴァカンスどころじゃないや。
あたしは無情な判決にがっくりと首を垂れた。
・・・
次の日、あたしは再び馬車に乗せられ、北にある銀山に連れて行かれた。
いつでもバックレることは出来るけど、せっかく東の国に来たのだから、もう少し様子を見てみようと思った。
(本当は、粗末でも食事が出るから逃げなかっただけなんですけどね)
馬車はなんと2日かかって銀山に着いた。
銀山では、多くの鉱夫が働いていた。 もちろん鉱夫たちは奴隷でも罪人でもなく普通の労働者である。
あたしが見た限りでは労働は特に過酷には見えない。
みんな楽しそうに働いているし、夕方にはそれぞれの家に帰って行く。
それを見てあたしは、ほっとした。
なぜなら馬車に揺られているうちに居眠りをして、北の果てに連れて来られて重労働をさせられたうえに病気になって死んでしまう夢を見たからだ。
今日からお前はここで寝泊りし、鉱山で採掘の仕事を1年間するのだ。
もし逃げ出そうとすれば、その場で銃殺になる。
あたしをここに連れて来た警官は、そう言ってにやりと笑った。
・・・
一般の鉱夫と違い罪人たちは、坑道の最先端で 鑿のみとハンマーを使い岩肌を削って行く。
坑道の中は40度を超える温度と90%以上もある湿度で生き地獄のようだった。
あたしは、もともと汗っかきなので、すぐに体中から滝のような汗をかいた。
作業を始めて30分もしないうちに意識が朦朧としてくる。
手足が痺れやがて痙攣し始める。
おい、こいつはもうダメだ! このままだと死んじまうぞ!
ちっ 余計な仕事を増やしやがって。 仕方がねえな。 トロッコに乗せろ!
なんとも情けないことだけど、あたしは初日に坑道内で倒れてしまった。
おもてに連れ出され裸にされて、バケツで水をぶっかけられる。
体のほてりが急速に冷やされ、意識もはっきりして来て全裸で地べたに放り出され、びしょ濡れで横たわっている自分の姿に悲しくなった。
***
ねえ、ラグエル。 もしかしたら終末のラッパをセレネさまが吹いた時、少しだけ音がでたんじゃないですか?
いいえ、終末のラッパはわたし以外の者が吹いても何事も起こりません。
それでは、セレネさまは・・
ただ運が悪いかあまりに罪深いため罰を受けているのかのどちらかでしょう。
なるほど、そうでしたか。 サリエルは納得した。
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