第385話 ◆バカの尺度

◆バカの尺度


アイデンとフネット、サステマの3人は、街中や漁港で聞き込んだ内容を報告し合っていた。


セレネの評判はすこぶる良く、正義感に溢れ勇敢で優しいが、おっちょこちょいな所もある良い国王であった。


国民たちは、皆幸福であると言っている。 エリージャ伯爵さまも領民に慕われているが、これ程までではない。



そして、なんとセレネ女王が週に1回は自ら商店街に買い物に来ることも判明した。


伯爵さまは、お城には入れてもらえないだろうし、セレネ女王に接触できる機会は、もうこの商店街に買い物に来た時しかないだろう。


そこで3人は相談の上、セレネが買い物に出かけるのを見張るため、交代で張り込むことにした。


・・・



あたし(葵)は、まだ混乱していた。  伯爵の付き人たちは、セレネさんのことを調べていたのは間違いない。


すると自分の今回のターゲットは、セレネさんということになる。


そうすれば、自分たちにあんなに親切にしてくれた人をこの手で殺めることになってしまう。


出来れば、あたしの勘違いであって欲しい。



そう思いながら部屋の窓から前の通りを監視していると、一番大きな女が宿屋から出て来た。


あたしは急いで、その女の後を追うために、宿屋を飛び出した。


・・・



ここはセレネ城の大広間。  ティアとセレネが立ち話しをしている。


ねぇ、ティア。 最近ルイの姿を見かけないけど、喧嘩でもしてるの?


いいえ。 お兄さまは、3日前からアリシアさんの下僕になり下がっているんですよ。


なにそれ?


あれは、巧妙に仕組まれた罠だったんです。  なにしろお兄さまは、純粋な人ですから人を疑うことを知りません。


あちゃー  世間知らずのボンボンってやつかー。  そりゃー悪ガキのアリシアの餌食ですわ。


で、お姉さんに、そのへんをもう少し詳しく教えてくれないかなー。



はい。 3日前、あたしとお兄さまとアリシアさんの3人で、トランプゲームをやったんです。


うわっ  トランプゲームって、あたしが教えたやつじゃん。



七並べとババ抜きと神経衰弱をそれぞれ3回ずつやって、一番負けた人が勝った人の下僕になるって伝統的なルールに従って真剣勝負をしたんです。


ふ~ん  伝統的なルールねぇ。  


それで、ルイ兄さまが9回とも最下位だったんです。


よわっ!


それで、3日前に連れて行かれてしまったんです・・・  なんでも下僕期間は、伝統的なルールだと最低でも3日以上らしくて・・・


(プッ 伝統的なルール。 今度、あたしも使わせてもらおうっと)


そうなんだー  それは気の毒だねー。  (鼻ほじ)


でも、あたしは見たんです。


な、なにを?


なんだかカードが生き物みたいに動いたんですよ。  それで、お兄さまのところに良くないカードが集まって・・・


(やだ、モロいかさまじゃないの!  あいつ魔法使ったなー)


あたしは、おかしいって言ったんですけど、お兄さまはそんなわけがないだろって。


あー  人が良いっていうか、バカなんじゃないの?


キッ!  なんて事をいうんですか。  お兄さまは、IQが180あるんですよ!


いやーー  バカの尺度ってIQだけじゃないから!


ううっ  セレネさん、なんとかなりませんか?



う~ん  でもさ、ルールはみんな納得の上でゲームをやったんだよね。


法律に触れるような事は無効だけど、この国の法律ってまだ細かく決まってないんだ。


怪我をしたり病気になっちゃうような酷い事はされてないんだよね?


それはないと思います。


だったら、3日間はおとなしく夫役(ぶやく)に就くしかないねー。


そんなーー。




ルイとティア・・・ どっちも大丈夫なのかってレベルっすねーー  では、次回へ続くーー。

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