第379話 ◆アイデンは知っている
◆アイデンは知っている
人とは、それが手に入らない物だと分かると余計に欲しくなる生き物である。
それはエリージャ伯爵も例外ではなかった。
セレネに2回も逃げられてしまったため、なおさらセレネを妻にしたくなったのだ。
それにセレネを正妻に向かえれば、豊かな大国も一緒に自分のものとなる。
この前は、あと少しのところでセレネに逃げられてしまった。
しかも、なんだか怪しげな光に包まれたと思った次の瞬間には、セレネはもう目の前から忽然と消えていた。
あれはいったい何だったのだろう。
その後、領内で謎の大爆発があったのも何らかの関連があったらしいと報告を受けたため、内密に調査を進めている。
調査では、何やら見たことがない熔けた金属の大きな塊も見つかっており、近いうちに何らかの調査結果が出るだろう。
・・・
セレネの国は、エリージャ伯爵の領地から見るとちょうどこの星の反対側に位置する。
船を使えば、物資の補給で途中の港に立ち寄りながら1年半はかかるだろう。
自分は領主であり、そんなに長い期間、領地を離れるわけにはいかない。
しかし最近では飛行船を使い、途中の海上基地を中継しながら短期間で目的地まで行ける交通手段が確立された。
往復で3か月程度なら、国王の許可がでる可能性はある。
理由は、他国の技術調査とでもすれば問題はないだろう。
・・・
アイデン、フネットにあとでわたしの部屋に来るように伝えてくれ。
はい、かしこまりました。
アイデンは、エリージャ伯爵の執事である。
奴隷市場でセレネを落札したが、セレネの身上を察して助けてくれたよい人である。
やれやれ、また伯爵様の悪い癖が始まりましたか・・・
アイデンは、エリージャ伯爵の女癖が悪いところをずっと見てきている。
13歳から20歳のいままでアイデンが知っているだけで、伯爵は100人以上の女性と深い仲になっている。
そして、修羅場の後始末は全てこのアイデンが行って来たのだ。
今回も遠国の女王セレネさまを何とか物にしようと動いているようだ。
おまけに今回は、メイド長のフネットと副メイド長のサステマまでが一枚噛んでいるようだ。
まったくあの人の女性に対する情熱を伯爵としての仕事に注いでもらえば、いまの半分の時間で片付くのではないだろうか。
・・・
次の日
フネットは、最近できた航空会社へ出かけて行った。
なんでも、この国の間裏にある例の女王の国までの飛行船チケットを買いに行ったらしい。
しかも、あとで知らされたのだが、フネット、サステマに加え、このわたしまでもが伯爵様に同行することになってしまった。
わたしは幼いころに木から落ちたのがきっかけで、高所恐怖症なのにである。
伯爵さま、わたしはどうしてもお供しなければなりませんでしょうか。
当たり前だ。 アイデンがおらぬと何事もうまく行かぬわ。
さようでございますか・・・
なんだか嫌そうだな、アイデン。
いえ、高い所が少々苦手でして・・・ その、飛行船に乗れば伯爵様にご迷惑をおかけするのではと心配なのです。
案ずるな、アイデン。 飛行船は揺れないし、窓際に行かなければ屋敷の中に居るのと同じだ。
はぁ・・ そのようなものなら、わたくしも安心でございますが。
こうして、伯爵一行はセレネ王国を目指し、飛行船で旅立ったのだった。
さて、また一波乱あるような気がしますが、いったいアイデンはどのような騒ぎに巻き込まれてしまうのでしょうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます