第368話 ◆スケスケネグリジェ

◆スケスケネグリジェ


目が覚めるとあたしは知らない部屋で寝かされていた。


えーっと  ここはどこ?


ベッドから、のろのろと起き上がった途端、よろけて焦る。  なんだか頭がぼぉーとしている。


なんだろう、これってネグリジェ?  知らないうちに白いスケスケの服まで着せられている。


そろそろと部屋の出入口と思われるドアをそっと押すと普通に開いた。


長い廊下には人影はない。  靴がないので裸足のまま廊下に出て歩き始める。


なんとなくだが、ここは知っている場所のような気がするのは気の所為だろうか。



どんどん歩いていくとおいしそうな匂いがしてきた。


匂いにつられて、なおも進むと急に ドシンッ と大きな何かにぶつかって尻もちをついた。


そのまま目線を上にあげれば、なんとそこにはフネットさんが立っていた。


フネットさん、ここは?


まあ、セレネさん、まだ出歩いてはいけません。 お部屋で大人しくしていてください。


ここはどこなんですか?  あたしには、もうここがどこなのか分かっていたのだけど、聞かずにはいられなかった。


ここですか・・ ここはエリージャ伯爵様のお屋敷ですよ。


いったいどうして・・ さっきまであたしはアリーチェさんの家に・・・ それにサステマさんだっていたのに。


・・・よろしいですか。 あたしもサステマもセレネさんのためを思って、これが一番よいと決断したのですよ。


フネットさん、何をいっているの。  あたし自分の事は自分で決めるわ。


あたしは怒りで体が震えていたけれど、また廊下を無言で歩き始めた。


待ってください。  いったいどちらに行かれるんですか?  だれかー  だれか来てーー!


・・・


あたしは、廊下を全力で走っていた。  ここに居てはいけない。  早く逃げないとエリージャ伯爵と結婚させられてしまう。


ああ、ここには居ないけどシルフたちは、どうしたのだろう。


まさか捕まってどこかに閉じ込められていたりしないだろうか。  あたしは不安で胸が絞めつけられるように痛い。



止まれっ!  ここから先へは立ちってはならない!


急に大きな声がして驚いて立ち止まった。


見れば、槍を持った親衛隊の男が二人、こっちに向かって駆けくる。


あたしは向きを変えて、夢中で男たちから逃げ出した。


途中、廊下が交差しているところを左へ行くと中庭らしきところに出た。


なんだか、懐かしい気持ちになる。


きっとフネットさんから聞いたように、メイドの仕事をしていた時にここに来たことがあったのだろう。


ちょっとの間立ち止まったが、噴水の先にまだ道が続いているので、出口を求めて再び走り出す。



セレネ女王様、我が屋敷は戦時には要塞となるのです。 二か所の出入口を閉鎖したからには、もう逃げ道はありませんよ。


二階の窓から必死で逃げようとしているセレネを見て、エリージャ伯爵は上着を脱ぐと部屋から階下へと向かった。




大ピンチのセレネ、いったいどうするのでしょう・・・  次回をお楽しみに・・・

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