第329話 ◆見つけた!

◆見つけた!


あたしの体が臭くて、お母さんドラゴンの匂いを嗅ぎ分けるのに梃子摺てから、ロロ君が口をきいてくれない。


せっかくお姉さんが親身になってついて来てあげたのに。  シク シク



ねぇ、ねぇ、ロロ君。  もう臭わないでしょ?  臭わないよね?


あたしは、偶然降ったスコールの中、全裸になって全身隈なく洗い、ついでに服も下着もきれいに洗濯したのだ。


こういう時、ドラゴンって羨ましい。  まあ、汗をかかない生き物は人間ほど臭くならないからなあ・・・



お母さんドラゴンがこの海岸から船に乗せられてから数日が経っていても、ドラゴンの嗅覚は匂いを捉えられるのが凄い。


ロロ君は、イヤイヤあたしを背中に乗せると、船の後を追い始めた。


あたしは、ロロ君の背中の上で、もう針の筵むしろ状態である。


あ~あ あたし自分で飛んで帰った方がいいかな?  ロロ君、あたしが足手纏いだったらハッキリ言ってね!


不貞腐れ気味にそう言うとロロ君は、「ごめんなさい、僕が悪かったです」と謝ってくれた。



もし、お母さんドラゴンが船に乗せられたのが数日前ならば、ドラゴンが飛ぶスピードで追えば、1日以内で追いつく可能性が高い。


それに心なしかロロ君の飛ぶ勢いにも力が溢れているように感じる。


あたしは、時間が取れる時に勉強した視力拡大魔法を使い、遥か先の海原の隅々までを見回した。


すると島から遠ざかるように北東方向に進む船を2隻見つけた。



ロロ君、右前方2時方向に船がいる!


するとロロ君も既に発見していたようで、大きく首を縦に2回振った。



敵は相当手強いはずだから、みんなが応援に来てくれるまでは、そっと後をつけるだけにするのよ。


敵の正体が分からないうちは慎重に行動するしかない。  下手に動けば、こちらが殺られてしまう可能性だってあるのだ。


あたしは、籠に入れて連れて来た伝書鳩に手紙を付けて、お城にいる仲間の元へと放った。


・・・


見つけた船に接近するに連れ、船の全容が見えて来る。


一隻は商船ぽいフォルムで、並走しているもう一隻は明らかに護衛船に見える。


その護衛船はあたしが見た限りでは、密猟者の組織が持てるような船ではなく、明らかにどこかの国の軍艦にみえる。


もしもそうならば、厄介なことになる。  なぜならば最悪、国家間の戦争に発展しかねないからだ。


この時あたしは、伝書鳩を飛ばすタイミングを見誤ってしまったと思った。



ロロ君、あれはただの密猟者じゃなさそうよ!   いい、くれぐれも軽率な行動をしては駄目だからね!


そうしないと、お母さんを助けることが出来なくなるかも知れないよ。



まったく、国家ぐるみなら大人のドラゴンを容易に捕まえられるわけだ。


おそらく国として、強力な魔法使いを何人も抱えているのだろう。



あたしはロロ君に、船から見たらあたし達がけし粒くらいにしか見えない高度まで上昇するように指示した。


こうしないとドラゴンが追いかけて来たことがバレてしまうからだ。



さて、ここからの作戦の善し悪しが運命のカギを握るってことか。


あたしは、ロロ君の背中でゆっくりと深呼吸を二回した。

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