第323話 ◆ハートチョコ
◆ハートチョコ
かつて戦地で戦う若者たちは、国のために命を捧げても悔いが残らぬように結婚を禁じられていた。
なぜなら、愛する家族を思う心は戦場での戦意を喪失させてしてしまう可能性が大きかったからだ。
バレンタインはそんな若者たちを哀れに思い、密かに結婚させていたらしい。 ほんま、ええひとや。
皇帝はそんなバレンタインに怒り、ついにバレンタインを処刑してしまった。
そしてバレンタインが処刑された日が2月14日なのだ。
でも女子高生は、そんなことなんかどうでも良くて、好きな男の子にチョコを渡してキャッキャウフフが出来れば良いのだ。
よし! これだな。 これならチョコさえあれば、ひと儲けできるってもんだぜ!
って、ちがーう! 退屈なこの世界に何か楽しいイベントを広げようと思っただけなのに・・・
あたしは心の中でサリエルにつけられた、あの金の鎖がいま外れていて本当に良かったと思った。
・・・
このイベントを世間に広げるには、ロマンチックなお話しをでっち上げて、好きな人に自分の思いを伝えるためにチョコを贈るという・・・
セレネさま、なんでもでっち上げるのは感心しませんね。 ふいに背後から声がして驚く。
げっ、サリエル・・・ しまった、無意識に声に出ていたのか・・・
き、君たちは、もしかしたら24時間あたしのことを監視しているのかな?
セレネさまが何を言っているのか、サリエルにはさっぱり分かりません。
まっ、まあ あれよ あれ。 ちょっと表現を間違えただけっていうか・・・ でっち上げるじゃなくて、庶民に夢を与えるためよ。
それは、神のお告げを伝えるようなものでしょうか?
そうそう、それそれ! すてきな物語を人々の間に浸透させて、恋人どうしの愛を大きく育ててより幸せな国にするのよ!
まあ、それなら是非このサリエルにお手伝いさせて下さい。
えっ あー まーいいか。 うん、それじゃあ手伝って。
はいっ♪
こうしてバレンタインデーは、セレネ王国のイベントのひとつの目標として掲げられ、そのプロジェクトメンバー第一号にサリエルが採用されたのだった。
・・・
サリエルだけじゃ、人手が足りないからもう少しメンバーを増やさたきゃだね。
まずは、現在流通しているカカオ豆の産地や生産量の調査をする人材とおいしいチョコレートの試作開発が出来る人でしょ。
あとは、思わず恋人に贈りたくなるような、可愛いラッピングデザインができる人。
生産量調査は、あたしとメイアでやればいいでしょ。 チョコレート開発はコリン君、ラッピングはニーナでいいかな・・・
などとウシウシ考えていたら、やって来ました暇人どもがワラワラと。
ねぇ、サリエルから面白いこと聞いたんだけど、あたしも混ぜなさい! ←アリシア
セレネちゃん、あたしはチョコレートの中にお酒入れて欲しいのぉ・・・ ←ヴォルル
セレネ、あたしたちも混ぜろ。 ←シルフ&ブラック
で、結局フルメンバーになってしまいました。
・・・
あたしはまず、布教活動が得意そうなサリエルに、バレンタインにまつわる切ないお話しを創作するようにお願いした。
第一作目
昔、天界に可愛らしい織ちゃんとイケメンの彦ちゃんがいた。
二人はラブラブで神様から言われた仕事をほったらかして、キャッキャウフフの毎日だった。
それを見た神様はたいそうお怒りになり、二人を年に一度だけしか会えないようにしてしまった。
二人はとても悲しんだが、年に一度会える日にはチョコを贈り合って愛を育んだのだった。
なんじゃこれ? サリエルさん、前にあたしが聞かせてあげた話しをパクったでしょ!
これは却下です!
第二作目
昔、浦ちゃんというイケメンが虐められている亀を助けたら、お礼にすてきな竜宮城に連れて行ってもらえた。
浦ちゃんは、竜宮城でキャッキャウフフの毎日を過ごしていたが、ある日ふと自分の住んでいた村に帰りたくなった。
乙ちゃんは、浦ちゃんに玉手箱を持たせ、亀を呼んで浦ちゃんを村に帰してあげた。
浦ちゃんが村に戻るとそこは、たいそうな時間が流れていて、もう自分のことを知っている人は居なかった。
浦ちゃんは、もう一度乙ちゃんに会いたくて泣いた。 ふと手元をみれば玉手箱がある。
浦ちゃんが、玉手箱を開けると白い煙が立ち込めたが煙が薄れた時、玉手箱の中には手紙がついたチョコが入っていたのだった。
あのね~ サリエルさんや。 これ、どこのキャバクラの話しやねん!
しかも毎回、キャッキャウフフって・・
こうして楽しいイベント作りの時間は過ぎて行ったのであった。
二作目が若干某CMに似ているのではないかとのご意見があるかも知れませんが、もともとの原作は昔話であり、著作権などの発生はありません。 と、セレネが勝手に言っておりました。
それでは、次回に続く~ ・・・
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