第261話 ◆アリシア大人になる

◆アリシア大人になる


アリシアが起こした騒動で、国王様がモモちゃんの一件を知ることとなった。


また2日経っても、まだ意識が戻らないアリシアを心配して、王様もお見舞いに来てくださった。



あたしは心配で、時々アリシアの瞼を指で押し開けてみるが、やっぱり白目を剥いている。


このまま気が付かなかったら、ララノアさんに何と言って謝罪すればいいだろう。


こんな時ニーナが居てくれたなら、治癒魔法で治してもらえたのに・・・



セレネさん、ちょっとよろしいでしょうか。


うん。


実は父が事情を知って、王室と行政を切り離すと言ってるんです。


そ、それって、もしかしたら?


はい、王室は政治に一切関与せず、選挙で議員を選び議会を開いて国政を行うようになります。


それなら、もし従兄さんが王様になっても大丈夫じゃないの。


はい。 だから王位の継承についても、叔父側はあまり感心がなくなったようなんです。


それはいい方向になってきているね。


ええ。  それに王室の影響力も小さくなるので、父もあたしの夫になる人の身分もどうでも良くなったそうです。


へぇ~  それもなんだかなぁ・・・  もしかして照れ隠しの演技なんじゃないの?


そうかも知れませんね。


あとは、アリシアさんの意識が戻ってくれれば安心できるんですけど・・


アリシアはハーフエルフだし、魔力も強いから大丈夫だと思う。


あたしは、左手でアリシアの髪を撫でながら、右手でおでこに犬という文字を書いた。


ププブッ


どうせ、アリシアは漢字なんて知らないから、早く良くなる おまじない とでも言っておけばいい。


・・・


ここに来てからメイアの機嫌がすこぶる良い。


理由は簡単で、美味しい魚がたくさん食べられるからだ。


以前、触手人間さんに餌付けされてたけど、今度は魚をくれる人魚のおじさんに懐いている。


おじさんもメイアの本当の姿を知らないので、幼女のメイアをめちゃくちゃ可愛がっている。


まあ、お互いwinwin?なので、放っておいた方がいいだろう。



そして3日目のお昼に、その時は訪れた。


そう、アリシアの意識が戻ったのだ。


ちょうどあたしは、これからお昼ご飯を食べに行こうとしたところだった。


さあてとっ と言ってベッドの横の椅子から腰を上げようとした時に、アリシアがあたしの手を握ったのだ。


うわっ!


突然手を握られたので思わず驚いて声がでた。



アリシア、良かった。  目が覚めたんだね?


あたし・・・  いったい・・


壁と床で頭を打って、2日ほど意識がなかったんだよ。


そうなんですか?


でも、本当に良かった。  みんな心配してたんだよ。


よく分からないのですが、みなさんにご心配をおかけしたのですね。


ん?  アリシア、大丈夫?  なんか変だよ?


いやですわ、セレネお姉さまったら。


こ、これは絶対どこか打ちどころが悪かったんだな。  いや~ 実に気持ち悪い。


ひどい。 お姉さまったらあんまりですわ。 


ちょっ、マジでキモイんですけど~


ぐすっ



セレネさん、アリシアさんが気が付かれたって、本当によかったです。


モモさん・・・


アリシアさん、ごめんなさい。 あたしが酷い事をしたばかりに・・・


この償いは必ずいたします。



あれっ? 


モモちゃんとアリシアの会話がすごく上品な感じがする?


むしろ場違いなのは、あたし?


いやいや、これはダメでしょ。  早くアリシアを元通りに戻さなくちゃ。


でも、いったいどうやって・・・


おばあちゃんから聞いた昔のテレビをなおす時みたいに、右斜め45度からもう一発殴るとか?



セレネお姉さま、何を独りでブツブツ言ってらっしゃるのですか。


ギャーー  アリシア、変な芝居はもうやめなさいーーー!


あたしは、体中に鳥肌が立って部屋から飛び出した。



次回へ続く・・・

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