第247話 ◆妖精の国 その4
◆妖精の国 その4
シルフは、戸惑っていた。
目の前の妖精の大群からは殺気は感じられないが、自分の周りを高速でグルグル回られて目が回ってきた。
思わずクラッとした正にその瞬間、自分目掛けて妖精たちが一気に押し寄せて来た。
そして、抵抗する間もなく意識を失ってしまった。
・・・
・・
・
次に目を開けると、なにやら大きな祭壇のような場所に寝かされている。
シルフは辺りを警戒しながら、ゆっくりと体を起こした。
あれほどの数がいた妖精たちも、今は自分の周りに一人も居ない。
それに、ただただ広い花畑と水晶が光る川が流れている以外は何も見えない。
シルフは自分がいったい何処に居るのか分からなくなっていた。
そう、どこまでも同じ風景が続いている。
そうだ。 川の流れだ。
シルフは川の流れを見て確信した。 そして川の下流に向かって飛んで行くことにした。
なぜなら、洞窟に入って来て初めて川を見た時、川の流れは自分たちが来た方に向かって流れていたからだ。
つまり、下流を目指せばセレネ達に会えるはずだ。
シルフはゆっくり飛ぶときは羽を蝶や蜻蛉のように使う。
高速で飛ぶ場合は魔力を使って飛ぶため、羽は動かさずジェット機のように固定する。
いま、シルフは結構なスピードで飛んでいた。
が、この空間は洞窟の中とは思えないくらい広大だった。
この広大なフィールドがシルフの体力を奪う。 魔力の元は体力にも連動するから・・
ランナーに例えるなら、シルフの魔力は短距離タイプで、スタミナが必要な長距離には向かない。
そう、シルフはMPはあるがHPが先に尽きてしまうのだ。
おまけにこの時、シルフはお腹も減っていた。
だんだん飛び方もフラフラして来て、いつの間にかひらひらと蝶のような飛び方になっていた。
もう・・ダメ・・
へろへろになったシルフは、いったん川辺に降りて休むことにした。
透き通った水は、冷たくて美味しかった。 おそらくこの洞窟の上の山から湧き出ている水なのだろう。
しかし水では満腹になるはずもなく、元気もでない。
あとどのくらい飛んだら、みんなと合流できるのだろう。
仰向けに寝っ転がってみても、ここでは青空や白い雲は見えない。
しばらく休憩して、シルフは重い体に鞭を打って起き上がった。
さあ、飛ぶかと羽を広げようとして下流の方を向き、シルフは驚愕した。
なぜかと言うと、前方にさっき自分が寝かされていた祭壇のようなものを見つけたからだ。
1周回って戻って来たのか・・ いや、それはあり得ない。
川の水は、高いところから低いところに向かって流れる。
自分は、ずっと川の上を飛んで来た。 もしも、1周したのであれば下流から上流に向けて弧を描いて流れなければならない。
でもそれでは、水は流れずに淀むはずだ。
これではセレネ達に会う事は叶わない。 シルフは混乱した。
とその時、シルフの上空に俄かに黒い雲が沸き立った。
いや、雲ではない妖精の群れだ!
その雲は、前と同じようにくるくると輪を描き始めた。
シルフは、ただその場に呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
次回へ続く・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます