第211話 ◆捕まっちゃった

◆捕まっちゃった


あたしは港の中で一番高い塔のような建物に入ったのだけど、突然開いていた扉が勢いよく閉まって、部屋の中が真っ暗になってしまった。


えっ?  なに?  なにも見えないよ!


メイアーー  どこにいるの?  戻っておいでーーー


美味しそうな匂いに誘われて飛び出していったメイアを呼び戻そうと、入口に向かって大きな声でメイアを呼ぶ。


ダメだ。 聞こえてない?


あたしが大声で呼ぶ声は、目の前の大きくて分厚い扉で外へは届かないようだ。


扉も開かず真っ暗な部屋の中で、一人どうしようかと考えていると・・


カツン カツン カツン


大理石の床を自分の方へ近づいて来る足音が聞こえてくる。



だ、だれ?  そこに誰かいるの?


あたしは、そのヒールのように響く足音にビビりながら自分の背後の暗闇に向かって声をだす。



ふふふ 思ったとおり、プリプリね。  


ひっ


耳元に息がかかり、思わず小さな悲鳴が出る。


あら、そんなに怖がらなくてもいいのよ。  ちょっと食べちゃうだけだからね。


あたしは、急に腕を掴まれて固まってしまい、身動きできない。


ここもここも、おいしそうに熟しているわ。


ゾゾゾー


もう片方の手で、体中を触られて全身に鳥肌が立つ。


は、離してください。


何を言っているの?  これからが楽しいんじゃない。


さぁ、あたしの部屋に行きましょう。  こっちよ。


いやっ


逆らおうとしても無駄よ。 ほらっ。


あああっ


声の主はあたしに何か魔法を使ったらしく、体の力が抜けて腕を引かれた方へと足が勝手に歩き出してしまう。


早く離してください。  いったいあたしをどうする気なんですか?  


悪いけど少し静かにしててね!


うぐぐ


今度は口が開かなくなってしまった。


心臓がバクバクして、涙が滲んで来る。


メイア、お願いだから早く助けに来て!

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