第198話 ◆アリシアの帰省(その12) エルフの里

◆アリシアの帰省(その12) エルフの里


次の日、アリシアは母であるララノアに会えるのが嬉しくて、朝早くに目が覚めた。


窓の外は、ちょうど朝日が昇ってくる前で、綺麗な朝焼けが広がっている。


ニーナ、早く起きなさいよ!


う~ん もう少し寝かせて~


ニーナは、昨日のAVの刺激が強すぎたのか、なかなか眠れなかったのだ。


ほら もう、おひさまが昇って来ちゃったじゃないの。


・・・


アリシアはニーナが起きないので、指先に小さな氷を作り出し、ニーナの胸の谷間に放り込んだ。


きゃっ


これには、堪らずにニーナは飛び起きる。


あ゛ーーー 冷たいーー   今ので魔力が消えちゃたわ~。


えーー  ほんとうにーー  


ふふっ  うそ。


ニ~ナ~ よくも騙したわねーー   アリシアはニーナが寝ているベッドへ フライング・ボディ・アタックを仕掛ける。


きゃー たすけてーー


朝からじゃれ合う姉妹のような二人である。


・・・


二人は洗顔と着替えを済ませ、いよいよ鉱山の町へジャンプする。


アリシア、しっかり掴まっててね。


うん。


それじゃ、いくわよ。


フッ


白い霧りの向こうに、鉱山の町が見えて来た時、ニーナが叫んだ。


たいへん、キーカード持ってきちゃった!


・・・


二人とも鉱山の町を訪れるのは初めてである。


エルフの里へは行くには、この町を経由するのが一番近いのだが、アリシアはこの歳になるまで里から出たことは無かった。


また、モッフルダフを尋ねて来たときは、途中まで熱気球に乗せてもらったので、この地へは足を運んでいない。



今日も街道は、鉱石を運搬する巨大な荷馬車がすごい勢いで走っている。


それをじっと眺めていたアリシアが、「セレネが住んでいた世界にあった大きなクルマがこの世界にもあったらいいのにね」とニーナに言う。


ニーナもアリシアを見て確かにと頷く。



エルフの里へは、この鉱山の町から東の山奥に向かう、細くて険しい道を歩いて行かなければならない。


ニーナの瞬間移動でジャンプすれば、あっと言う間に着くのだが、ララノアから言われている十の約束の(2)に引っかかりそうなので、怖くてやめたのだった。


■ララノアの十戒

(1)ママの言うことを守ること

(2)むやみに魔法は使わないこと

(3)知らない人とは口をきかないこと

(4)日記をつけること

(5)人には親切にすること

(6)人を傷つけないこと

(7)人の悪口はいわないこと

(8)嘘は絶対につかないこと

(9)食事ができたときは感謝すること

(10)自分で考えて行動すること


鉱山の町から10kmくらいは、緩やかな登りが続くのだが、そこを過ぎると断崖絶壁に作られた人が横になってやっと通れるような板の上を永遠と歩く。


高所恐怖症の人なら気絶するだろう。


一歩前は千仞せんじんの谷で、もし足を滑らせれば谷底へ真っ逆さまである。 


この断崖絶壁があるため長い間、外部からエルフの里へ人が来ることがなかったと言っても過言ではない。



断崖絶壁を抜けると、今度は深い森が続く。  森を熟知した者でなければ、この森を抜けることは出来ない。


ただし、エルフたちにだけ分かる道しるべが付けられているので、アリシアたちはそれを頼りに森を進んだ。


これだけ深い森の中なのだが、魔物などは一切住み着いてはいない。


なぜなら、この森はエルフたちの狩の場であり、定期的に見回りがあるからだ。



アリシアたちは、半日かかってようやく森の3分の2くらいの地点に着いた。


ここには、ララノアが水浴びをした泉がある。  


そして、アリシアの父親であるリカルドが、ララノアの裸を覗いたためアリシアが生まれたのだ。 ぷぷっ(作者笑う)


アリシアとニーナは、この泉で少し休憩を取ることにした。


あーーー お腹空いたーーー!


二人は、昨日のお昼過ぎに代々木公園で焼きそばを食べたきりだったので、当然腹ペコ状態である。


ほんとうにお腹が減りましたぁ・・・


日頃あまり活発的な方でないニーナは、ここまでの強行軍でかなりヘバッテいる。


二人は、泉の畔ほとりで横になって休んでいるうちに、すっかり寝込んでしまった。


・・・



パキッ


突然二人のすぐそばで、何者かが落ちている木の枝を踏んだ音がして、慌てて飛び起きるた。


誰かいるの?


気付けば、もう陽が山の陰に落ちて辺りは薄暗くなって来ていた。

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