第180話 ◆魔王討伐作戦(その13)

◆魔王討伐作戦(その13)



アリシアは、魔王の部屋へ真っ先に飛び込んだ。


あっ!


いつも勝気のアリシアだが、目の前の魔王を目の当たりにした途端、すっかり闘志を失った。


立ち尽くしているアリシアの後から、ニーナ、キャロン、あたし、モッフルダフの順で飛び込んで来たが、魔王を一目見て同じくその場に立ち尽くす。



あ・・あれが魔王だっていうの?


どっちかっていうと、女神様じゃないの?


いや~  実にお美しい。


モッフルダフ、 何をデレデレしてるのよ!


ちょっと、そこのあなた。  あなたがこのお城に棲む魔王なのかしら?



アリシアの問いかけに、目の前の美しい女性が豪華な椅子から、ゆっくりと立ち上がった。


わたくしは、この国の王妃のアンジェリクです。


魔王は、わたくしの亡くなった夫です。



王妃さま・・・ でもなんで?



わたくしと夫は、とても愛し合っていました。


でも父は、魔王である夫との結婚を許して下さらなかった。


それで、わたくしは城を出て夫とこの城で夫婦となったのです。



つまり、駆け落ちね。


でも、魔物の所為で、あなたの国はこのありさまじゃないの!


いいえ、夫が生きている間は、こんなではなかったのです。


あたしに力が無いせいで、魔物たちを抑えておくことが出来なかった・・・



それは、うそよ!  アリシアが王妃に向かって言い放つ。


アリシア、何を根拠に嘘だって言ってるの?


あたしは、アンジェリクが嘘をついているようには見えないよ!



だって、コリン君を操っていたのは、この女じゃないの!


あっ・・・


そうだ、どうしてコリン君は、あんなことになってるんですか?


それは、魔王・・ いえ、夫が最後の力で、敵意を持ってこの部屋に入ったものが、わたくしの奴隷となるよう、部屋に魔力を込めたのです。


それで、コリン君が・・・



でも、それならなんであたし達は大丈夫だったの?


魔力は男性にしか発動しないのです。


へぇ~ そうなんだ。


いくら女装してもダメだったのか・・・  ぷっ  哀れね。


やっぱり、アリシアはS女だわ~。



いやいやいや  それならモッフルダフは、どうして平気なのかしら?



ホッ ホッ ホッ


実は、わたしは男でも女でもないのですよ。


ええーーーっ!  

にゃぁーーー!




そう言えば、体は毛糸で出来てるんだっけ?



何よ、モッフルダフって、ピィーーー(自主規制)はついて無かったの?


もう、ララノアってどんな育て方をしたのよーー!



・・・


アンジェリクの話しを整理すれば、この部屋に込められた魔力の所為で、王妃に近づいた魔物は奴隷化し、王妃に尽くすようになってしまった。


当然、王妃はこの部屋から出してもらえず、魔物たちは王妃のために暴走して人間の支配を始めたということだ。


また、この部屋には、時間の遅延魔法もかかっているようで、魔王が死んでから50年が過ぎていたが王妃は若いままだったのだ。


・・・


この後、苦戦の上、翼竜部隊を殲滅させたメイアに塔の上に来てもらい、アンジェリクを乗せて救い出した。


魔王の間の主あるじを失った魔物たちは、ばらばらになって山谷に散っていった。


そして、コリン君も正気に戻ったのだが、この後またアリシアにいじめられるのは確実で、可哀相な気持になったあたしだった。

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