第162話 ◆ツンデレ アリシア
◆ツンデレ アリシア
あたしが居なくても船は、隣国目指して順調に進んでいた。
あたしは、あれからずっと考えているのだけれど、あの時仮にあたしが育った世界に戻っていたとしても、肉体はこの船に在ったはずだ。
それは、この船に居るみんなが知っている。
では魂みたいなものだけが二つの世界の間を往復したのかというと、向こうの世界の肉体がどっから来たのか説明が付かない。
ただ二つの世界の間では、15年の時間のずれがあった。 ここが解決の糸口で、もしかしたら全体の謎が解けるのかも知れない。
コン コン
あたしが謎解きで、うんうん唸っていると部屋のドアがノックされた。
はい、どうぞ~ 開いてますよ~。
失礼しま~す。 セレネさん、具合はどうですか?
コリン君があたしのために部屋まで朝食を持って来てくれたのだ。
うん。 もうそろそろ完全復帰と行きたいところだけど、まだ首が痛いんだよなぁ・・・
なんたってアリシアが手抜きをするからさあ・・
ハンバーグ対決だって、あたしよりアリシアの方が美味しかったんだし、もう少しお姉さんに優しくして欲しいよ~。
あ、ほらっ きっとアレですよ。 好きな子に意地悪しちゃうってやつ?
えーーー? コリン君、それ本気で言ってる?
はい、もちろんです。 アリシアちゃんは、皆さんの中では唯一のツンデレキャラですからね。
そうかなぁ・・・
そうですよ。
僕が分析したところによると・・ コリン君は右手を自分の顎に当てながら言った。
まず、シルフさんは、我関せず&でも嫉妬深いキャラです。
うん うん 当たってる。
メイアちゃんは、甘えん坊さんです。
うん うん それも当たってる。
で、ニーナさんは、不思議ちゃんキャラですね。
そう そう あたしもそう思う。
それで、アリシアちゃんは、どう見てもツンデレです。
そうか~? でも、あたしはあの子のデレは、まだ見たことが無いよ!
なんなら、一回デレさせてみればいいじゃないですか。
どうやって?
そうですねぇ・・・ 例えば・・ ごにょごにょ・・・
ふん ふん それで?
で、ごにょごにょ・・ ではどうでしょう?
なるほどね。 でも失敗したら長期冷戦状態になりそうで怖いよ!
まあ、実行に移すかは、セレネさんのご判断にお任せします。
う~ん・・・
では、ごゆっくり。 食器は1時間くらいしたら取りに来ますね。
そう言うとコリン君は部屋から出て行った。
・・・
コリン君目線でアリシアとあたしの関係を分析すると次のようになるらしい。
アリシアは本当はララノアママの代わりに、あたしにすっごく甘えたいのだけど、メイアの方が小さいから甘えられないでいる。
だからアリシアと二人きりになる機会を作ってあげて、あたしに甘えられるように誘導してあげる。
例えば髪を梳かしてあげて、リボンをプレゼントするとかだ。
で、午後からメイアのお守りをニーナにお願いして外出させ、アリシアと二人きりになる時間を作った。
そうしたら、早速アリシアに動きが・・
セレネ、ちょっとここに来なさい!
ここよ! ここに座って!
いい。 絶対に動いてはダメよ。
じゃあ、膝枕ね。
おっと、いきなりそう来たか ←心の声
ふんっ い、意外と柔らかいのね。
はいっ それじゃ次! これを持ちなさい。
なに? これって耳かき棒なの? ←心の声
アリシアがあたしに渡して来たのは、先っぽがタンポポの綿毛みたいになっていて、反対側が極小の金魚すくいのポイみたいだ。
ねっ、 アリシアこれって何に使うの?
み、見れば分かるでしょ! 耳掃除するアレよ!
ハイハイ どれどれ?
あたしは、アリシアの少し尖った耳を優しく引っ張りながら、棒を穴に痛くないように少しずつ入れて行く。
あっ そこ、いい。 気持ちいいわ。
はぁ はぁ
あれれ? アリシアの呼吸がちょっと えっちに聞こえるぞ!
どれどれ ここがええのか? えっ おじょうちゃん。 ←心の声ですよ~
あふぅ・・
んっ・・
はい 綺麗になったわよ。 じゃあ反対側。
ポンっと肩を叩くとアリシアは、 クルンッ と音がするかのように、素早く反対側を向く。
ウホホ 素直なアリシアって、やっぱり可愛いいじゃん。 ←心の声
はい、挿いれるよ~。
んっ・・
首がわずかにビクッっと縮む。
ほぅ おじょうちゃん こっちの方が感じやすいんだな! ←何度も書きますが心の声です
はぁ はぁ
ゴソ ゴソ
あ、もうちょい・・・ アリシア動かないで!
おっ! おぉぉ やっ とれたぁ・・・
はぁーーー すっきりしたわーー セレネ、ママの次に上手じゃないの!
また、やらせてあげるから、ありがたく思いなさい!
あーー はい はい。
じゃぁ、このまま寝てもいいからね。
アリシアを膝枕したまま、長くて柔らかい髪を何回も優しく撫でてあげる。
しばらくすると、小さな寝息が スゥー スゥーと聞こえて来た。
アリシアはきっと幸せそうな顔をして寝ているだろうと覗き込んだあたしは、はっとした。
だって、アリシアの小さな頬が涙で濡れていたから・・・
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