第85話 ◆不死身のモッフルダフ 

◆不死身のモッフルダフ 


あたしは宿屋に帰ってから、エイミーとリアムにモッフルダフが生きている可能性が高いことを報告した。


二人とも凄く驚いた後、すぐに大喜びで手を取って踊り始めた。

こっちの世界の人たちって、ちょっと欧米人みたいだなって思った。 これで、またひとつ記憶が戻った。


モッフルダフは、この日から2日後に桟橋に現れた。

ちょうどフィアスがメイアに魚を獲ってきてくれると約束した日だった。


きらきらと光る遥か沖の波の中を、大きな船が港に向かって進んでくる。

メイアとそれをのんびり眺めながら、フィアスが来るのを待っていたところ、不意に後ろから肩をポンポンと叩かれた。


ハットして振り返ってみれば、そこには懐かしい顔?があった。 (モッフルダフの顔は黒い毛糸玉がグジャグジャ動いていてようで目鼻口は見えない)

モッフルダフ!  やっぱり生きてたんだ!

心配かけましたね。 すみません。  でも、もう大丈夫です。  わたしは完全に元通りですよ。


モッフルダフーーー!

嬉しくてモッフルダフに思いっ切り抱き着こうとしたのだけれど、毛糸玉男は手ごたえが無く、あたしはそのまま桟橋のコンクリートにダイブした。

イタタタッ

そっか、そうだよね。 それでも嬉しくて顔がニコニコしてしまう。


ねぇ、あんなに凄い爆発だったのに、どうやって助かったの?   あたしは今までのモヤモヤを直球で聞いてみた。

するとモッフルダフは、爆発の直前に自分の毛糸紐の端を千切って、近くの岩影に投げたのだそうだ。

本体は、あの壮絶な爆発とともに跡形もなく消滅したが、残りの紐の端からすこしずつ全身を再生させて行ったので、こんなに時間がかかってしまったらしい。


生物の授業でならったが、プラナリアという生き物は体を10個くらいに切り刻まれても、それぞれが元の形に再生されて、最終的に10匹の個体になるそうだ。

モッフルダフの体も、それと同じようなものなのか、それともクローンみたいな自分自身の複製なのか悩む。

でも本人は記憶を失っていないのだから、トカゲの尻尾の凄い奴みたいなものかも知れない。 

これ以上考えても、あたしの頭では正解など分からないので、考えるのをやめた。


モッフルダフに話を聞いていたらフィアスが魚を獲って来てくれたので、それをメイアが食べている間に、大陸へ渡るのにフィアスに一緒に乗せてくれないかを、ダメ元でお願いしてみた。

するとモッフルダフは、この港町で商品を仕入れるのに1週間(12日)ほどかかるが、それでも良ければ一緒に行こうと快諾してくれた。


メイア聞いた? またフィアスと一緒に旅ができるよ!

って、メイア・・そのお腹・・・ いったいどんだけ魚食べたのよ!  お腹壊しても知らないからね。


ホホホホホッ

パンパンになったメイアのお腹を見て、モッフルダフが大きな声で笑った。


あのモッフルダフの懐かしい笑い声が聞けたのが嬉しくて、あたしは少しだけ泣いたのだった。

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