第77話 ◆最強の嵐ストーム

◆最強の嵐ストーム


昨日までは良い天気だったのに、今朝起きたら雨が降っていた。

風もだんだん強くなって来ていて、時々ゴゥゴゥという音を立てている。


窓から港の様子を覗いてみると、大きな船や小さな船の周りで人がせわしなく動いているのが見える。

目を凝らしてみれば、船を太いロープで桟橋にしっかりと係留している。  おそらく嵐ストームが近づいているのだろう。


今日は、みんなで旅の次の目的地をどうするか相談しようと思っていたので、外出できなくても問題は無いのだけれど、この天候だと昨日見て来た美味しそうなお店にはいけそうもない。

シルフはおとなしくしていると思うが、メイアは1日中室内にいたら、退屈で騒ぎ出すかも知れない。


食べ物で誤魔化すなら、まだ風雨が強まっていない、今のうちに何か買って来た方がいいだろうか?

悩んでいるうちにも風雨は、どんどん強くなって来る。

シルフとメイアは、まだぐっすり眠っている。 メイアが弾き飛ばした布団をかけなおして、もう一度外を見た。


行くなら早くしなきゃ!  昨日換金したお金を持ってあたしは一人部屋を出た。


宿の玄関前では、従業員が戸や窓に板を打ち付けてストーム対策をしている。

風が強くてカサは役に立たなそうなので、宿にあったカッパのようなものを借りて玄関を出る。


一歩外に出ると想像以上に風が強まっていた。

確か右手の通りを少し行ったところにお店がたくさんあったはずだ。

でも、この風雨の中でお店が開いているかは、行ってみなければ分からない。


風に煽られて、よろよろしながら歩いて行くと、商店街もストーム対策に追われていた。

土嚢を積んだり、お店の大きな窓を板で補強している。


あたしは、パン屋を探しながら桟橋の方に向かって歩いて行った。

雨で視界が白くぼやける中、遠くにパンの絵が描いてあるお店を見つける。


まだ開いているといいのだけれどダメなら諦めよう。 そう思いながら海沿いの道をパン屋目指して進んで行く。

桟橋には、時々大きな波が打ち寄せている。


もう少しでパン屋に着く。 お店に明かりが点いているので、どうやらまだやっていそうだ。

どんなパンが売ってるかな。 メイアの食欲は半端ないので、いっぱい買ってあげよう。


そう思った瞬間、ゴォーという音を立て、いままで見たことが無いような巨大な高波が押し寄せて来た。

あっという間もなく、あたしは聳え立つ壁のようなその波に飲み込まれた。


ゴボ ゴボッ

波に巻き込まれ、体がもみくちゃにされるうちに上下左右が分からなくなる。

早く水面に出ないと息が持たない。


もがいていると強い水流に流され、体が何か固い物に激しく打ち付けられた。

!! ガバッ ゴボッ

息を我慢していたが、激痛で水をしこたま飲み込んでしまう。

ゴボ ゴボッ ゴボッ


メイアごめんね、パン買えなかったよ・・・ 

あたしはそのまま意識を失ってしまった。

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