第52話 ◆1階層目(その4)

◆1階層目(その4)


用心深く扉に開いた穴をくぐり、要塞内部に一歩を踏み入れる。


魔物の気配も門の外とは比べ物にならないくらいに強くなっている。


門を入って直ぐのところには、おそらく出兵する兵を並べたであろう広場があった。

門の左右に伸びる城壁は結構な幅があって、内側からは城壁に上るための階段が等間隔に作られている。

敵が攻めてきた場合に城壁の上から、一斉に攻撃をしたのだろうか。


広場の正面には、頑丈そうな石を積み上げて造られた高さ40mほどの塔がそびえ立っている。

この中が、地上7階、地下2階のダンジョンになっているのかと思うと武者震いがしてくる。

エイミーから預かった、マシンガンを持つ手に思わず力が入った。


いつの間にかメイアが隣に来て、あたしの手をぎゅっと握っている。

しゃがんでメイアの顔を見ながら、どうしたのか聞いてみる。

すると、もう魔物に囲まれているので、自分の側から離れないようにと言う。

それから、この姿(幼女)のままでは、戦いづらいのでドラゴンの姿に戻るが大丈夫か確認される。

モッフルダフは分かっているはずだが、エイミーはメイアの正体を知らないので、敵と勘違いすると同士討ちになってしまう。


エイミー ちょっといいかな。 塔の入口を調べていたエイミーに声をかける。

どうしたの?  エイミーが駆け寄って来るが怖い顔をしている。

セレネ。 あたしたち、もう囲まれているけど気が付いてる?

うん。 メイアが教えてくれた。

そう、油断しないでね。


あの。

うん?

実は、この子なんだけどね。

メイアちゃん?

そう。 この子、実はドラゴンなんだ。 それでこの姿では戦いにくいからドラゴンの姿になるって言ってるの。


やっぱり、ドラゴンだったのかあ。

えっ、知ってたの?

うん。 なんとなくだけど、人ではないな~とは感じてた。


それで、ちょっと心配なのは混戦になったりしたら、メイアを敵と間違って攻撃してしまわないかなんだけど・・・

そうだねぇ・・  咄嗟にぶっ放しちゃったら洒落にならないしなあ・・

それじゃあ、角とかに目立つ色のリボンとかつけておいたらどうかな?

あ、それいいかも。


あたしは、メイアがドラゴンの姿に戻った後、赤い布でメイアの両方の角にリボンを結んであげた。

エイミーは、ドラゴンになったメイアの体を触りながら、初めてドラゴンに触れたと興奮している。

そんなことをしている間に、魔物達が間合いを詰めて来て、あちこちの物陰からその姿が見え隠れしていた。


あたしは、マシンガンのセーフティロックをカチリと外した。

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