第17話 ◆メイド長のフネットさん

◆メイド長のフネットさん


アイデンさんに連れられてメイド長さんに会いに行くことになった。

メイド長はフネットさんという名前だそうだ。 こんな名前の歯ブラシがあったような気がしてならないが、なぜだろう?

それ以上のことは思い出せず、もどかしい。


フネットさんは、いま厨房にいるらしい。 アイデンさんの案内で厨房に向かう。

厨房は、館の東の端にあった。

この館に何人いるか知らないが、大厨房の真ん中にある大きなテーブルに山積みになった食材を目の当たりにして料理の大変さを知る。


料理と言えば、サフラの家でシルフとシチューを作ったっけ。 シルフは今頃どうしているだろう?

男達に襲われた時、木の上でパンを喉に詰まらせて、目を白黒させていた。 水筒は木の根本に置いてあったけど、うまく水を飲めただろうか。

シルフのことを考えて、ぼぉーとしていたら、フネットさんにいきなり怒られた。


ごめんなさい。 今日はいろいろなことがあったので、ついぼぉーとしてしまいました。

アイデンさんも一緒に誤ってくれた。 いい人だ。


フネットさんに挨拶をすませたので、あたしが何をすれば良いかを尋ねると、今日は仕事を教える時間がないので、明日からでよいと言われた。

アイデンさんを見るとにっこり笑って、よかったですねと言う。

今日も一日いろいろあって、たいそう疲れたので確かにラッキーだった。


アイデンさんにあたしが使っても良い部屋を教えてもらう。 少し狭いけど、ベッドと小さなテーブルと椅子が一つあった。

ベッドに腰をかけ、今日あったことを思い出す。


シルフと離れ離れになってしまったけど、シルフは不思議な力を持っているようなので、そのうちここまで追いかけてくるだろう。

でも、シルフは泣き虫なので心配でならない。 まるで自分が生んだ子供のように思える。 まだエッチなことはしていないけど。


次の日の朝、まだ夜が明けないうちに起きて厨房に向かう。 そうしたら、既に沢山の料理人とメイドさんたちが、てきぱきと働いていた。

しまった、出遅れた!

フネットさん、遅くなってすみません。 今日の第一声が謝罪から始まり、気持ちが暗くなる。


フネットさんは忙しいのに手を止めて、使用人は交代制で働いているので気にしなくても大丈夫と言った。

朝食の仕度が終わったら時間ができるので、そうしたら仕事を教えてくれるそうだ。

それまでは、自分の部屋で待っていなさいと言われたので、いったん部屋に戻る。


することがないので、鞄の中身をテーブルに並べて行く。

教科書が3冊、ノート、ペンケース、お菓子が少し、テイッシュ、ポーチ、時間割表、手帳、財布・・・


ポーチの中には、スマホとメイク用品、ヘアブラシ、手鏡などが入っていた。 特に直ぐに役に立ちそうなものはない。

スマホはバッテリーが切れていて電源が入らなかった。

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