第7話 ◆明晰夢(めいせきむ)
◆明晰夢(めいせきむ)
木の上で深い眠りと浅い眠りを何回か繰り返す。 そのなかで明晰夢を見た。
それは岩山にいるドラゴンを見つけに行く夢で、荒れ狂うドラゴンをシルフと一緒に手懐けるのだ。
自分がこうなって欲しいと思うように夢をコントロールし、手懐けたドラゴンの背に乗って下流にある集落へ一っ飛びする。
その集落では大歓迎を受け、肉や魚や果物をお腹いっぱい食べるのだ。
途中悪い方向に脱線しそうになる夢を修正しながら、厚い肉にやっとかぶりつける直前まで行ったのに、木から落ちそうになって目が覚めてしまう。
気が付けば、危うくシルフを食べてしまうところだった。 あたしはシルフの頭と足先を持って、口を大きく開けていたのだ。 涎も少し垂れていた。
シルフは、幸いなことに気づかず爆睡していた。 あとで分かったことなのだが、この特性のためシルフの種族は数を減らしたのだそうだ。
つまり無防備に寝ている間に、獣人達に襲われたということなのだろう。
人なら見張り役を立てるが、シルフ達は一定の時間が来ると誰もが自然に眠ってしまうのだそうだ。
さて、夢と同じように都合よくドラゴンを手懐けられるとは思わないが、なんとか前に聳そびえる岩山の間の谷を抜けねばならない。
この谷を通らず迂回するとなると、何日かかるか見当がつかないため、必ず食料と水の問題が浮上するからだ。
シルフを突いてみるが、まだ起きる気配がないので、そのまま寝かせて置き、自分は地上へ降りた。
顔を洗いたいところだが、水は貴重なので一口だけ飲む。 やはり甘くてとても美味しい。 あとでシルフにも飲ませてあげよう。
まだ陽(赤い星)が昇ってこないので辺りは薄暗い。 やることも無いので、岩山の方へ下見に出かけることにする。
野宿した場所から、岩山の麓までは1kmくらいだろうか。
ドラゴンと遭遇しないことを願いながら、黙々と先へと進む。
周りは、自分の身長ほどの岩がごろごろと点在しているので、身を隠すには好都合である。
ただし、それらの岩を避けながら歩かねばならないので、時間は予想の倍近くかかってしまう。
ようやく谷の入口近くまで来たとき、赤い星が昇ってきた。 あたりは、また夕焼け空のようなオレンジ色に染まり始める。
谷の奥からは時々、心が凍り付くようなドラゴンの鳴く声が響いてきた。
空が明るくなったこともあり、ドラゴンに見つかると厄介なので偵察を打ち切り、寝床がある大木まで戻ることにした。
もっとも、ドラゴンは夜行性だと思われるので、昼間のうちに谷を抜ける方がよさそうだ。
ここまで来てシルフを置いて来たのを後悔する。 これからいったん戻るのなら昼を過ぎてしまうだろう。
仕方がない、戻ったらシルフがドラゴンの生態を知っているか確認してみよう。
予想通り夜行性なら、明日もう一度出直しだ。
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