第2話三嶋夢馬と私の放課後。

三嶋夢馬。

ビビットピンクのリュックサック。

ビビットピンクのスニーカー。

ビビットピンクのユニコーンのぬいぐるみのキーホルダー。

彼女は一番好きな色はパープルだと言った。

紫とは言わなかった。パープルだと言った。


「中山さん、」

ーあすかでいいよ。

「パンケーキ食べに行こう!」


頷きかけて顔を上げた。学校から駅に向かって、五分くらい歩いた時だった。

それまで話したり、沈黙したりを繰り返し、特に気まずいと思うことも無く歩いていた。

それゆえ急な彼女の提案に、驚きを隠せなかった。

私と彼女は、1年生の時、体育祭係で一緒になった。彼女は3組、私は4組。

係会の席は隣で、少し話した。私は彼女の話を聞くことに退屈しなかった。

恋愛や流行りものの話をする友達が、私には多かった。

でも満足していた。時々話についていけなくても、そういう話をしている時間は楽しい。


彼女はそういうタイプじゃなかった。

恋愛にも流行りものにも興味を示しているようには思えなかった。

彼女の目に映るもの以外、きっと何も信じていない。

ただ、目に映るものなら、絵本の中の妖精も、絵に描かれた空想上の生き物も、彼女が信じるに値した。

高校という狭い世間は彼女を不思議な子だと噂し、

遠巻きに彼女を見る生徒は皆、彼女の魅力に気付いていた。

ただ、話しかける、彼女の世界をのぞき込む勇気がなかった。


彼女の話についていけなかったのは最初だけで、彼女は周りに何を言われようと気にしない、何も言われなくても気にしないと気づいた時から、

私は話を聞くだけでいいと気づいた時から、

彼女の話はとても心地よかった。



パンケーキは920円では割高だろうと思う容量だった。

彼女は満足そうに食べていた。理由は何となくわかった。

期間限定のフレーバーは、

ベリーベリーミックス、パープルのベリーソースが鮮やかな1品となっていた。


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