第169話
彼らは「巡礼者」となり、ようやく愛人形と出逢い、洗礼を受ける。
愛の洗礼を……。
ヴィーラヴ、ファーストライブツアー。
「天使降臨」
福岡から大阪、名古屋、東京、そして最終公演地の札幌へと、5大ドーム巡る各会場2日間、昼、夜1日2公演の行うとの概要がヴィーナスタワーにて発表された。
が、この概要は数日後には修正を余儀なくされる。
各会場2日間公演だった予定を3日に変更、追加発表する……渇いた人間達に少しでも潤いをもたらす為に……。
急な変更にもかかわらず、各ドーム及び関係各所は歓迎さえした。
それぞれに本拠地、サブに置く球団も「偶然」か早々とBクラスに落ち着き、ドームの稼働率を少しでも上げる事ができるならば、異例の変更も喜ばしい現象なのだろう。
懸念も囁かれた……日程追加によるヴィーラヴのライブパフォーマンスの維持……。
マスコミ、スタッフからも不安の声が漏れた。
「心配ないわ……」
礼子さん、ヴィーラヴ本人達のこの言葉で全ての不安要素は解決された。
寧ろ、心配すべきはツアースタッフ達とヴィーラヴのお飾りとなる新人アイドル達の体力と気力だろう。
私のアイドールに、過密日程になった事による不安要素など微塵もないのだから……。
ツアー終了後には彼女達は再び生まれ変わる。
次世代型は生産工程もより短縮化され、欧米の理論、技術も導入され、よりグローバルに進化してゆく。
そして、アイドールの量産化が始まる……手始めに、ヴィーラヴの妹というコンセプトでのアイドルグループと、何組かのソロシンガーが「創られ」ドロシーエンタープライズからデビューする。
これをもって「御披露目」期を終え、さらに次世代型へ移行……大量生産が開始され、私達の中に紛れ込んでゆく……偽人はそれが「真の人気」と知る事もなく……。
そして……死んでゆく。
セカンドアルバムのセールス、配信も好調を維持している。
万希子さんの「茶番」や本人のブレイクによって、ツアーの前祝いに相応の「利益」をもたらしている。
敵は……もういない……。
全てを愛人形が支配した。
2週間後に迫った福岡公演に備え、アイドール達は地下スタジオに設営された仮ステージで個々の動き、位置取り、フォーメーションの確認に余念がない。
披露する楽曲は30曲にも迫る……しかも、それらをライブサイズではなく、全てをフルコーラスという編成で駆け抜ける。
「こんなのは尋常じゃない……」
あるスタッフの言葉。
それでも私のアイドール達は平然と「演じて」しまうだろう。
その意味で一番の不安要素は、人間の側にあるのだから。
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