第158話
いっそ、楽曲はある時期から全てゴーストライターが制作して、シフォンはただ歌っているだけ……綺麗な容姿の裏側は、醜い性格が取り憑いて、ファンも、私達スタッフさえもただのカネと名声を得る為の道具としか思ってません……と、全て白日の下に晒せばいい……。
だが、偽人らは先の言葉でまたもシフォンを崇拝する者達を欺こうと画策する……。
ならば……私が偽人らの企みを葬り去る演出を施すまで……。
橋下 明子はもう、シフォンではないのだから。
シフォン陣営の会見当日の朝に、ヴィーラヴに関する緊急記者会見を同日同時刻にヴィーナスタワーにて行うとメディアにリリースした……。
かの日の新曲同日リリースの件の、ささやかなお返し……。
さて、各メディアはどちらに注目するのか……今、この世界の頂点に君臨しているのは、ヴィーラヴかシフォンか……。
ヴィーナスタワーのメディアミックスフロアは、すし詰め状態だった……国営、民放各局、新聞社、雑誌、ネット、芸能リポーターらの人体から放出される熱、中継用カメラの「尋常ではない」熱により、朝からエアコンがフル稼動するも、むせ返る暑さは冷える事はままならなかった。
決着はついた……。
今頃、数少ない記者らを前に、シフォンの休養を平静さを装い、伝えている偽人達の苦い心の内が見える様で面白いおかしい……これでいい……。
「ありがとう……」
声が聞こえた……。
「どう致しまして……」
心の中で返した……。
きっと、何処か遠い場所で彼女が空を、空気を媒体に私の意識にそう語りかけているのだ……そう感じた。
幸せに「生きる」がいいわ……。
たとえ僅かな歳月だったとしても。
シフォンを失った偽人達が今後、どう足掻こうが、いずれドロシーエンタープライズに吸収される。
またも望んでもいないのに、私は執行役員のひとりに名を連ねていた……。
「買収でもしましょうか……」
この「茶番」の数日前に開かれた役員会議において「何か発言を……」と他の役員達の目が私に向けられた時、切羽詰まって苦し紛れに発言、提案した。
一笑にふされると思ったが、既に「政治的根回し」は済んでいる様で、礼子さんは感慨深げに頷き、私の「思いつき」を了承した……そう遠くない日に買収は完了するだろう……。
シフォンは永遠に封印される……。
ドロシーエンタープライズは更に勢力を拡大し、得られた果実は、私達が消滅した世界で生きる愛人形達の命の糧となる……。
詩織がかすれた声で言う……。
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