第152話

「自ら滅びの道を選択したんじゃないかな……あくまで仮説だけど……」


「何が……」


「この地球上には舞ちゃん達に至るまで、多様な文明が繁栄しては衰退、消滅してきた……その繰り返しによって今がある。良い悪いは別にしてね……。その事実を踏まえ、ちょっと考えたんだけど、行き着く所まで繁栄を極めたとある文明の人々は、これからの行く末に不安、恐れ、そして絶望を抱き、自らの死をもって自らの文明を消滅させたのではないか……と考えたんだけど、どう思う……」


「私、いえ……私でなくても、誰もそんな風には考えないわね……きっと」


「確かにね……でも、礼子は想い、考え、実行しようとしている……だからボクも、そしてヴィーラヴが生まれた……この世界を終わらせる為に。んまぁ礼子の事だから、生きてゆくのに飽きた……なんて言って舞ちゃんを説得したんじゃない……」


「そうよ……」


「やっぱりね……飽きた……それも絶望と同義だよ。もっともらしい説明よりも、簡素で潔くて、本質をついた礼子らしい言葉だよ……」


「私はね正直言うと、その言葉で全てを納得しているとは言い難いのだけれど……私も決断した以上、もう聞けないし……」


「えへへ、舞ちゃんの場合は、ヴィーラヴの存在が魂を動かしているから、ちょっと事情が異なるかな……だから、上っ面な説明じゃきっと舞ちゃんは納得しないよ……」


「…………」


「んじゃぁ戯言を……環境破壊を抑え、子供達の未来を守り、争いをなくし、私達の母なる地球を守る……仮に礼子がこんな言葉を吐いて、舞ちゃんは納得するかい……」


「それは、礼子さんらしくないと……私も思うけれど……」


「ねっ……そんな歯の浮く様な主張は、安っぽい環境保護団体や動物愛護団体に任せとおけばいいよ……どうせ彼らの本音はカネと権力の渇望だからね……」


「きっぱり言うわね……」


「まぁ表向きは、地球の環境を守り、動植物を保護するなんて言ってるけど、結局は自分達が生きてゆけなくなるのは困るから偽りの看板を掲げ、大袈裟に吠えているだけだから……時には裏で権力者を動かしたり、非現実行為に及ぶ輩だから……」


「彼らの本音なんて、私はどうでもいいわ……それより私達が消えたら今まで維持、管理していたものはどうなるの……」


「ん〜、原子力の事だね……んまぁヴィーラヴや量産型に管理させる事もできなくはないけど……しばらくはボクが管理してゆくかなぁ……でも乱暴な言い方をすれば、放置でもいいんじゃない……とボクなんかは思うのだけれど……」

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