アイ・ドール 〜愛人形たちの希望と絶望〜
プラチナサファイア
アバン「嘘と真実の境界線での女という存在」
第0話
「殺し……て……」
「何ですって……よく聞こえなかったわ、舞さん」
「
「そう……だったら殺しなさい。殺してみなさい……うふふっ、もっとも今のあなたにそんな事はできないでしょうけれど……」
「くっ……」
意識を失い、冷たい部屋で目覚めた私の前に開示された「真実」に怒り、やるせなさ、恥ずかしさを伴った私の感情は礼子さんを突き刺し、魂が本音を紡いだ……。
しかし、礼子さんは私を薄笑い、挑発する。
「何をそんなに怒っているのかしら」とでも言いたげに、しなやかな躰を見せびらかしながら……。
思い切って決断し、彼女達と時を共にして語らい、触れ合ってきた私は何だったのか……。
あんな思いまでして、彼女達を受け入れ、心と折り合いをつけたばかりなのに……。
シークレットライブで魅せた彼女達の姿は、眩しく、女神と見紛う程の「神々しさ」を私に、彼らにダイレクトに照射した……。
飛び散る汗……
言霊を紡ぐ唇……
華麗に舞い、欲を吸収する躰……
「愛している……」
そんな感情さえ芽生えた……。
なのに……私の目の前の彼女達は、私の想いを嘲笑う……。
「ごめんねぇ……」
「ゴメンなさい……」
「いやぁ、悪い悪い……」
「ホント、ごめん……」
『ごめんねっ……』
「舞さん……すみません」
「ホントっ、申し訳ない」
「ソーリィー」
本心とは言い難い彼女達の謝罪……。
「それで、私を殺す覚悟はできたかしら……」
「礼子さん……」
「あんまりそこで煮え切らない態度を取っていると苛つくから、覚悟がないなら私があなたを殺すわよ」
静かな動作で、鈍く光る黒い物体を礼子さんは私に向ける……。
「女性でも扱いやすいものを頼んだのだけれど、案外重たいのね……構え方も適当だからいつあなたを撃ち抜くかもわからないわよ……」
そう、女性としての「弱さ」を強調するも、銃口はしっかりと私を睨みつける……。
「でもね、これだけは言わせて……」
「…………」
「彼女達は、あなたを愛している……これまでも、これからも……」
「少し猶予をあげるわ……思い返してみなさい……あなた自身の歩みを……彼女達の愛を……あなたに捧げた真の愛を……」
これは猶予などではない……曖昧な仕草を見せれば礼子さんは私を躊躇なく葬るだろう……。
「殺される……」
恐怖と場をわきまえない「快楽」の疼きが心を搔き乱し、脳神経を刺激する……それは「悔しい」のか、それとも「渇望」していた真の私なのか……熱く、熱くこみ上げる「熱」は一体、どちらの想いなのか……。
そんな私を見て、礼子さんは「軽々しく」笑う。
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