The Blue Deep
汚れた詩
蒼穹
カフェに女が近付いてきてタバコに火をつける。吸い込む。
「Kが死んだの。自殺だったわ」
僕、タバコの煙を吸い込んでから。
「知らなかったな。通りで最近見かけないと思ってたわけだ。悲しいよ」
女
「思ってもないこと口に出さないでちょうだい」
僕
「いや、本当に。友達といえるやつなんてあいつしかいなかったわけだし。良い奴だったよ。それはそうと君のほうが悲しいんじゃないの?だって君と彼は付き合っていたんだろ?」
女
「どうなのかしら。最初は激しく動揺したわ。突然のことだったしね。理由だって分からなかった。けれど一通り泣いたらもう涙は出てこなくなっちゃった。私達終わってたのよ。とっくに」
男
「そんなものなんだろうか。分からないけど、意外とそういうものなのかもしれないね」
女
「ねぇあなたどうせこの後何もすることないんでしょ?少し付き合いなさいよ」
男
「これでもさ、僕は僕で忙しいんだ」
女
「黙って。シッ!そこ、アイツらが見てるの!」
男
「誰が見てるのさ?何を言ってるんだい?」
女
「うるさい逃げるわよ」
男
「分かったよもう仰せのままに」
★逃げるシーン四カット程度★
急にしゃがみ込む女
「怖くなってしまったの」
男
「「死」にかい?」
女
「ええ」
男
「何故?」
女
「死ってすぐそこにあったんだって気づいて」
男
「あたりまえのことじゃないか」
女
「でもおかしいわ。何もないところから生が生まれて、そしていずれ死ぬなんて」
男
「宇宙だってそうじゃないか。何もないところに突然「ある」ようになる。僕らはそういう法則のもとに生きてるんだよ」
女
「でもだとしたらもっと怖いわ。無から有が生まれるのがこの宇宙なら有から無が生まれても不思議ではないのだから。私達がここに「ある」保証なんてどこにもないってことになっちゃうじゃない」
男
「結局こうやって認識の枠組みの中で思考してる時点で間違いなのかもしれないね。こんなのいくら考えてもどこへも行き着かないよ」
手すりの上を歩く女
「じゃあ見せてあげる。ヴィジョンの極限を。蒼穹への飛翔を」
女が手すりから飛び降りる。リフレインされるイメージ。
★以下、創造の逆再生がなされる★
都市の俯瞰ショット
暗闇、パっと燃える火。浮かび上がる女の顔。僕の顔?瞳、ニタっと笑う口元。焦点外れる。
首都高、延々と進む車。ベンチに座り車を運転する仕草をする二人。
左に走る女の逆再生。右に走る男の逆再生。近づき、そして抱き合う。女が土になる。男も土になる。
流れる水。
草むらをかき分け進むカメラ。捉える青空。
太陽の光。周囲は暗い
光が消え、暗転
「!れありかひ」
The Blue Deep 汚れた詩 @drydrops
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。The Blue Deepの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます