七
「夏休みの最後の日にみんなで花火やらない?」
真海は、僕にそう言った。
僕は渋々了解した。暇だから、約束の日まで長いと思ったが、すぐにやってくるもので、約束の日はすぐにやって来た。僕らは、花火をやるために買い物へ行った。んまぁ、殆ど荷物持ちだが。そして、僕らは、真海の家の近くにある海岸に行った。後は、友達を待つだけだ。
僕らは友達を待った。しかし、友達は一向に来る様子はない。
「来ないからさ、先に花火してない?」
真海が僕に問いかけた。僕は、その提案の乗った。
「背を向けて、花火してみない?」
「なぜに?」
「ロマンチックじゃない!?いいから、いいから!」
僕は仕方なく、背中を合わせ花火をすることにした。火をつけると、棒の先に火が灯った。花火は明るく閃光が舞った。その花火には、僕達が以前行った夏祭りの花火を思い出した。隣で微笑む真海の顔が思い浮かぶ。その笑顔を見て、僕も微笑んだ。
あれ?なぜ真海の笑顔に微笑む自分がいるのだ?こんな気持ちは感情を抱いていた時以来だ。僕はあの時に“感情”を抱いていたということになる。なぜ真海に感情を抱いてしまったのか不思議に思った。
そう思っていると、花火は消えてしまった。以前の僕だったら、特に何も思わなかったと思うが、今の自分はまるで不吉なことが起こるような感じがしたいた。
でも、気のせいだろうとそんな思いは振り払い、僕らは、花火を再開した。
「友達、遅いな。」
僕がそう聞くと、真海はかなりの間を開け、
「実はね…。友達呼んでないんだ…。」
「え?」
「嘘ついちゃった…。えへへ。」
どういうことだ。友達は来ないのか。なんでだ?僕は必死になって考えた。でも、何も思いつかない。だが、二人でいられることに嬉しく感じた。二人きりでいられるなんて。いつも二人きりだが、いつもとなんだか違う。前々から感じていた感じたことのない感情。何なんだろう。今まで、感情を棄てた僕は驚いた。棄てたはずなのに、また抱いてしまった。棄てたはずなのに。
「真海ってさ、好きな人いんの?」
僕はこの質問をした理由が分からなかった。
「いるよ。優しくて、かっこよくて、私の命の恩人。」
僕は、何だか悲しかった。僕は、命の恩人なんかじゃ無い。なので僕は好きな人ではないことになる。別に良いんだ。僕は別に…。さっきから、自分でもわかる。おかしい。やっぱり感情なんか棄てた方がマシだ。僕は感情を棄てるよう努めた。
「あのさー、愛斗?」
「ん?どうした?」
後ろを向いていてもわかるぐらいに真海はモジモジしている。そして真海は、
「私のこと好き?」と聞いてきた。
「え?急にどうした。」
「好き?」
僕は、急に言われたので驚いた。僕は、好きが分からない。経験したことがないからだ。どういう感情なのか分からない。でも、今感じている感情は。
喜び?違う。
怒り?違う。
悲しみ?違う。
楽しみ?違う。
この感情は…。
「おう。僕は真海の事が好きだよ。」
僕は、真海が好きだ。この気持ちは好き以外で表せない。
「良かった…。」
僕は真海が好きだ。いつからはわからないけど、真海の事が好きだ。もしかしたら、ずっと前から好きだったのかも知れない。
僕は、何か嫌な予感がして、振り返った。するとそこには、彼女がいなかった。どっかへ行ってしまったのか?いや違う。消えたのだ。足跡が無い。
僕は、必死に彼女の名前を叫んだ。だが、返事が返ってこない。僕は、とにかく走りだした。僕は、必死に捜した。途中で隼人にあった。そう。以前に喧嘩した隼人だ。
「どうしたんだ?愛斗。」
「実はな、真海を捜しているんだ」
「真海って、いつも一緒にいるやつか?」
僕は、力強く頷いた。
「愛斗にとって、真海はどんな存在だ?」
「大切な人だ」
「よし、燃えてきた!俺は、仲間使って、ここ周辺捜してみる」
「ありがとう!」
僕は、走りだした。が、すぐに振り返って、
「もしも、大切な人以外で答えたら、どうしてた?」
「…ん?いや、聞いただけだ。親友からの頼みだ。断る訳ねえだろ?」
僕は、親友という言葉に心が響いた。
「本当にありがとう!」
僕は、真海を捜しに走った。色んな場所を捜した。
でも、真海を見つけることが出来ず希望を持って彼女の家に行った。
僕は扉を開けた。家の中は静まりかえっている。
「やっぱり、ここにもいないよな」
そう思いながら、捜していると、机の上に手紙が置いてあった。僕は、手紙をとった。明らかにこれは真海の字だ。ずっと、一緒だったのでわかる。手紙には、
『愛斗へ
これを読んでいるということは私はそこにいないんだね。
急にいなくなってごめんね。でも、私だってもっと愛斗といたかった。
でもそれはできないの。何でかは、実は私達、ずっと前から…でしょ?。どうか私を許して。
最後に愛斗は私の命の恩人だよ。愛斗に出逢えて、良かった。さようなら。』
最後の方が字が滲んでいた。きっと真海が涙を落としたのだろう。
「なんだよこれ。こんな急に別れるなんて、嫌だ。」
僕は、捜そうとした。しかし、宛がない。僕は、考えた。真海と初めて会った場所?三年五組の教室?何か違う気がする。ずっと前から知っていた?…僕は、電撃が走ったように脳に漂っていた雲が晴れた感じがした。
「あそこだ!」
僕は、何かに取り憑かれたかのように、家を出た。辺りは、日が落ち、暗くなっている。僕はがむしゃらになって走りだした。
「何で、今まで分かんなかったんだ!なんで思い出せなかったんだ!真海の事。アイツはずっとずっと僕のそばにいたじゃないか!ずっと前から!」
僕は、隼人に電話をしてから中学校へ急いだ。
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