ガラクタゴミフェイス
亜木のぞみ
プロローグ
ある日の朝、それは突然起きた。
「ちょっと~、やめてよ汚いってばぁ~」
「バカじゃねぇの?コイツ」
「近寄らないで!」
クラスメイトの女子が数人並びになって笑っていた。そう、彼女達は俗に言う『いじめ』をしていた。一人はバケツを持ち、一人は指を刺して笑い、一人はモップを持つ…。
やって良いことと悪いことが、この世に中には存在する。
いじめを受けているのはクラスでも一番地味な女子生徒「速水ねる」だ。速水は小学5年から陰湿ないじめや暴力を受けている生徒、その為一時期不登校になったが、父親から「無理でも、そいつらの事は放っておけ」と言われ、再び学校に来たものの…、まだいじめは終わらず、小学6年になったらなったで徐々にエスカレートしていった。
速水はそれでも学校に休む事なく来ていたが、突然来なくなった。「ストレス性胃潰瘍」という事が理由で。
「ねぇ速水さん、何で学校に来てんのぉ~?」
「教えてよ~」
「あ、もしかして親にチクって、学校に無理矢理行かされてる的な?」
「はぁ!?コイツ何勝手にイチャモンつけてんの!?」
「勝手なコトしてんじゃねぇよ!!」
次々と暴言を吐きまくる皆、その中には苛立ちを放つように、速水の机をガンッ!と強く足を打ちつけるヤツもいた。それでも速水は涙一つ流さず、ただぐちゃぐちゃに書かれた落書きをボーっと見ている。何も動じずにしている。
いじめているヤツらが吐いている暴言をシャットアウトしているように。
「ねぇ、コイツ調子に乗ってんじゃねぇの?」
「あぁ、そのようだな」
「何かコイツを蹴り飛ばしてぇぐらいだ」
そう言っていじめっ子達は速水を机から蹴飛ばし、情け無しに暴力を振るった。
それを見ている数人のクラスメイト達、何の声も上げる事もせず見ている。一方で先生を呼ぼうとしているビビリもいる。
愚かさを全面に押し出そうと、いじめっ子達は速水を暴力・暴言で痛めつける。速水は何も言わない、ただただ痛みに翻弄されているだけ。
そして私は、残念な事にそれを見ている。これもいじめになるのであれば、これをどうにかして終わらせたい。
私は朝の時間、大体この空間を無にして過ごしている。後ろから4番目の席である私はこの悪魔な時間と空間に挟まれる人間、しょっちゅう物が飛んできたり、当たったり。私はいつものように本を黙読して、気を紛らす。
「國任さん、ちょっと来てくれないかなぁ?」
私は、さっきまで笑ってたいじめっ子の一人に声をかけられた。目つきが悪いヤツで、自分はいかにもブスじゃないと思わせる、イカついメイクで化けたクソみたいな野郎に、しつこい。
「ほら、速水さぁ~ん、この無口な子に本当の事を言わせに連れてきてやったよ、少しは感謝しな」
感謝など必要ない、私は速水を見下ろした。私はくだらなさすぎて、速水にこう言った。
「……後悔先に立たず」
この発言にビックリしたのか、皆は私の方を見て唖然としていた。
実にくだらないゲームは、いつしか私に回っていた。
ガラクタゴミフェイス 亜木のぞみ @nozomi-aki0321
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