異端児と呼ばれた少年
@Tokimizugimegami
入団試験編
ディールと女神の出会い
もしも。そんな風に思った事はあるだろうか?
もしも空が飛べたら。
もしも魔法が使えたら。
もしも過去を変えられたら。
例を挙げればきりがない。
そして今から、一人の神が作った。もしもの世界の話をしよう。
2017年、7月30日。
そこは変わった所だった。
いや、今は世界全体が変わった所だった。
空のを鳥、いや、ドラゴンが羽ばたき。
地を犬や猫、いや、怪物が徘徊している。
そして、その世界には。ある力が存在していた。
魔法、その世界には魔法があった。
人が生まれながらにして持っている唯一無二の物。
それが魔法。
何百種類もある魔法が、人には宿っていた。
一人一つの物で、大抵は親や、祖先の能力が受け継がれるが、たまに新種の魔法を持って生まれてくる子は、特殊子と言われていた。
そして、ディールという少年は、特殊子とは少し違った呼ばれかたをしていた。
ディールは、魔法を使えなかった。
今までに確認されたことがない、魔法を使えない人間。
そんな一人の少年を、人々はこう言った。
異端児
「やーい異端児!悔しかったらやり返してみろー!」
一人の少年殴る子共達と、殴られる児。
その村ではその風景が普通だった。
「や、やめてよぉ」
「あ!?なんだ!異端児の癖に、逆らってンじゃねーよ!」
いつもいつも殴られ、突飛ばされ、蹴られ、虐められる。
そんな時間がディールには本当の苦痛でしかなかった。
反抗すれば虐められ、反抗しなくても虐められる。
そんな理不尽な環境に、ディールはずっと耐えていた。
何年も、何年も。ずっと、ずっと耐えていた。
「悪いのは自分が魔法を使えないからだ」
そう何度も自分に言い聞かせた。
「なぁ、もうそいつに飽きてきたんだけど」
ディールを虐めていた一人の少年がそう言った。
「確かにそうだな・・・そうだ、なんか違う事しよーぜ」
全員がそうだな、と便乗し、さっきまで続いていた暴力が止まった。
「おいディール、お前今日は帰れ」
初めてだった、暴力がこんなに早く終わるのは。
「うぅ、」
いくつものアザができた足が痛み、立つのだけでも激痛が走る。
足だけではない、体全体にアザがあるのだ。
ディールは早くその場を離れようとするが、少しづつしか進めない。
15分歩いた所位で、ついに倒れた。
「あれって異端児じゃない?」
「イヤーね、あんな、所で。早く死んでくれないかしら」
周りにいる大人達も、ヒソヒソと自分を見て嫌悪を抱いている。
この村には味方は一人もいない、一人を除いては。
「ディール、こんな所で寝てちゃダメでしょ。ほら、早く帰るよ」
この村、いや、この世界唯一の味方、それが母親のテルナだった。
「ディール、何があっても、やり返したらダメだよ。やり返してしまえば、相手と同じと自分で認めることになってしまうから」
それが母親の口癖だった。
そして、それをずっと守っていた。
守ったいくはすだった。
あの、災厄で最悪な日が来るまでは。
その日の夜。
家の一階から、物音が聞こえ、その後音で目覚めた。
ディールが寝ている二階の部屋と、母親が寝ている一階の部屋。
その階段を降りる時に、ディールはある声を聞いた。
「なぁ、これってバレたらヤベーよな」
「大丈夫、異端児とその母親が死んだって誰も悲しまねーだろ」
「バレても英雄って言われたりしてな」
聞こえてきた声は、とても小さかったが、確かにそう聞こえた。
声のした部屋をそっと覗くと、そこには最悪の光景が広がっていた。
自分を虐めていた子共達の足元に、血まみれになった母親が倒れていた。
子供の一人が持っていた なたで母親を斬りかかったのだろう、
なたは血で染められていた。
その光景を見た瞬間、ディールは心が崩壊し、体は制御できなくなっていた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ディールは叫びながら、なたを持った子供に殴りかかり、持っていた なたを奪い、斬りかかった。
右肩から左腕に抜け、体が二つに別れた。
他の子供橘あっけにとられ、数秒間動きが停止した。
その数秒間が命取りとなった。
体の制御ができないディールは、ほんの数秒で、もう一人の子供に斬りかかった。
時間にして15秒ほど、やっと自分達が置かれている立場を理解した時には、4人から2人に減っていた。
一人が、好戦状態に入り、もう一人が逃げ出した。
先に逃げた方を仕留めようと斬りかかるが、真横から氷柱が吹き飛んで来て、左肩に深々と突き刺さった。
でも、痛みは感じなかった。
倒れた体を起こし、肩に刺さった氷柱を抜く。
氷柱を飛ばした本人は、余裕の顔でディールを見つめていた。
なたを右手に持ち替えかて、襲いかかる。が、魔法を使える人間相手に魔法を使えない人間が普通に戦っても勝てる訳がない。
それはディールも例外ではなかった。
飛んできた氷柱を、なたで吹き飛ばし。
間合いを詰める。
しかし、また飛んできた氷柱を弾き飛ばせず、氷柱が右腕に刺さり、吹き飛ばされた。
「やめとけ。異端児はどこまで行っても異端児だ。死にたくなかったらこの村から出ていけ」
そう告げられたが、今のはディールにはその言葉は届いていなかった。
「30秒待ってやる、今死ぬか村を出るか、お前が決めろ」
「お前が村にいると、災いが訪れる。そう親が言っていた」
右手をディールに向け、いつでも氷柱を飛ばせれるように身構え、カウントを始めた。
「30.29.28.27.26.25.24.23・・・」
どんどん時間が過ぎていき、18に差し掛かった瞬間。
氷柱が体に突き刺さった。
「なっ!?あっ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
痛さで意識が飛びかかるが、なんとかこらえた。
ほんの一瞬だった。
ほんの一瞬、ディールが動いた瞬間、自分が飛ばし、ディールが引き抜いた氷柱が、自分の胸に突き刺さった。
ディールは、その怯みを見逃さなかった。
なたを左手に持ち替え、痛みで悶絶している子に近づいていく。
「な、何で左が使えるんだ!?」
一回目に氷柱が刺さった時の傷が、塞がっていた。
ディールは少しずつ近寄り、頭になたを振り下ろした。
気がついた時には、周りに災厄な光景が広がっていた。
血まみれになっている母親と二人の子供。
そして、血で染まったなたを持つ自分。
その光景を見た瞬間、その場から逃げた。
村の奥にある林に入り、そしてそのさらに奥にある森に逃げ込んだ。
「何で、こんなことになっちゃうんだろ」
川に映った自分を見つめ、問いかける。
その時、自分の真上が「カッ」っと光った。
そして、声が聞こえたきた。
「やぁ、初めまして。だよね?」
自分と同い年位の少女が、自分の目の前に立っていた。
ディールは、その少女を見た瞬間に逃げた。
全速力で逃げた。
何キロか走った所でディールは倒れた。
村であの光景を見た時から、10時間は経っていた。
しかしまた、その少女は現れた。
「人の・・・神の顔を見るなり逃げるなんて、心が傷ついたよ」
その少女は一滴の汗もかいていなかった。
「私の名前はミルシ=ルテナ、天界に住む神様よ、よろしく」
異端児のディール、女神ルテナ。
これが、後に世界を揺るがす二人の出会いだった。
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