26話 『境界への想い』

 地龍ナージャドレイクの三つある頭が天を仰ぐ。

口を大きく上げながら咆哮する仕草を見せるが口内から咆哮が発せられる事は無く、それどころか鳴き声すら上げない。

 周囲の耳に聴こえる音といえばナージャドレイクの蠢く音だけで、魔力は感じられるが生気は全く無い。その姿は動く死体のようだった。

 あくまで本物ではないのだ。

 本物のドラゴンであるミルは、偽物でも他の龍の姿を見て興味を抱くが、脅威は全く感じられずに偽物地龍の物まねをしてカミラと一緒に遊んでいるのだ。


 召喚魔法という魔法にもそれぞれ差がありレベルがある。

それこそ魔法陣を必要としない召喚魔法から、詠唱をして大きな魔法陣を必要とするものまである。

 召喚物で例えて言うならば、それこそ木製コップからドラゴンまで召喚できるが、生命体を召喚する場合は体と魂を呼び出すか、存在しない場合は一から創らなければならないならない。

召喚者の能力範囲内であれば完全体の物質や生命体を召喚できるが、召喚者の能力を超える生命体を召喚する場合は召喚獣の体と魂を召喚して、その召喚体の特性である魔力やオーラを形成することで本来のモノに近づけていくのだ。


 地龍ナージャドレイクの場合、リティスで完全体を召喚するのは魔力容量的に不可能だ。

それでも召喚する為には自身の魔法属性である地属性を利用して地面に魔法陣を描き、ナージャドレイクの肉体は地をベースとしてその肉体を創り、魔力で造った疑似の魂を込めるのだ。

つまり体はさっきビンセントが倒したゴーレムと同じ土人形である。

 ゴーレムとの違いは、姿と魔力容量の違いだ。

リティスはこの土人形を生み出すのがギリギリで精一杯であり、そもそもドラゴンを召喚できる者は数える程しか存在しない。


 音無き咆哮が終わり、大きな首が下りてくる。

「ビンセントさん! ゴーレムの破壊は見事でした! しかし、この地を這うドラゴン。ナージャドレイクは破壊できますか!? 」

 リティスの声を合図にナージャドレイクが前進すると、岩で出来た胸中が大きく雰囲気を発した。

 土人形から今まで圧倒感しか感じられなかったが、巨大な魔力やオーラから発せられるような威圧感を発し出した。

 圧を受けるも、今のビンセントは引き下がらずにそのまま歩を一歩ずつ踏んでいく。

(今の瞬間、トカゲ野郎の感じが一気に変わった。何が起こったのかは分からんが、どうなるんだ)

 ビンセントは徒歩から地を蹴って駆けていく。

勢いそのまま巨大な脚をめがけて横大降りに剣を振ると、衝突面から聴いたことのあるような高音と少しの破壊音を混ぜた音が響く。

「えぇ……」

 ナージャドレイクの足には剣が届いておらず、その前面には透ける青白い障壁がヒビを入れて張られていた。

「もうッなんなん――、召喚獣もオールガード使えるんですか!? 」

 オールガードというもどかしさを感じて苛立つビンセントは、召喚獣が魔法を使える事に驚いてサリバンを苦笑しながら睨むが、ビンセント以上にリティスが驚いている。

(自律したナージャドレイクのオールガードにヒビを入れた!? )


 魔力供給を切り離し、自律したナージャドレイクの疑似魂は魔力を自ら生み出して使っていく。

生む魔力は魂の格によって違うが、劣化しているとはいえナージャドレイクのオールガードを傷つけるのはそう簡単に出来ることではない。


「ナ、ナージャドレイクは自律していますからね、自ら魔力を生み出して使っています。人には出来ない永続的なオールガードが可能なのですよ」

「な、なるほど……」

 ナージャドレイクが足を上げて、そのままビンセントめがけて踏み下ろす。

ビンセントは回避するが、踏まれた地はへこみ揺れる。

(でもさっきのオールガードはサリバンさんのよりもろいな)

 口を大きく上げた頭の一つがビンセントを襲う。

ビンセントが後ろに跳躍して避けるとナージャドレイクは追撃の為に首を伸ばす。

「オラァッ!! 」

 ビンセントが縦に大きく斬撃を加えると、ナージャドレイクの鼻前のオールガードを砕き、鼻を通して上顎を斬り砕く。

 上からの斬撃による衝撃で、頭は地面に落ちめり込みながら勢い尽きるまで進んでいった。

「な、なんという事でしょう、ナージャドレイクが……」

 驚愕をもって、自身最強の召喚獣の頭の一つを見ていた。

 上顎は砕けて、割れたオールガードは修正されていく。

「オールガードか、いいなぁ俺もそのスキル欲しいなぁ、何で皆使えるんだろうか」

 ビンセントがブツブツと小言をこぼしながら、上顎砕けた頭が上に上がっていくのを見ていると、横から別の頭が突っ込んできた。

「うお、あっぶない! 」

 横に振り向いて思いっきり剣を叩き込む。

突っ込んできた頭は口を閉じていたが、ビンセントの斬撃により口内の牙を切断しながら、下ろされた魚の身の様に開く。

「うわぁ――! 」

 ダメージは与えたが勢い止まらない頭に衝突して、ビンセントは地面をえぐりながら吹き飛ぶ。

ビンセントと衝突したナージャドレイクの頭の一つは砕けている。

対するビンセントは地面に転がったが、問題無く起き上がる。

 ナージャドレイクは続けて巨体を旋回させ、尻尾で薙ぎ払う。

薙ぎ払った地点は土煙を立たせていて様子が見えないが、何かに当たったのか、ナージャドレイクの尻尾は砕けていた。

ビンセントがいるであろう土煙内に頭を突っ込み、ナージャドレイクは獲物仕留めにかかる。


 土煙舞う中ビンセントは青く淡いオーラを纏っており、傷も見当たらない。

 ビンセントの生存を確認したナージャドレイクは、オールガードを纏ったボロボロに砕けた頭を突っ込ませる。

「さっきから鬱陶しいぞトカゲ野郎が!! 」

 迫る歪んだ土人形に向け、ビンセントは対象の頭一つ分程高く跳躍し、剣は縦に真っすぐ降りた。

防御魔法を貫通して、ビンセントはナージャドレイクの頭とその下の地面に剣を突き立てる。

その衝撃で頭一つは完全に破壊された。


 土煙の中から後退するナージャドレイクを見て、同じく土煙の中から前進するビンセントを見て、リティスは悔しさと恐れを露わにした。

「ぐぅ、まだです! 」

「まだ? もうすぐお昼の時間なので、少し急ぎますよ」

 舞い全身に付着する土煙と、もうすぐ昼時だから三人でランチを食べに行きたいのに戦いを延長させるリティスと、折角オールガードが使えるのにソレが脆いナージャドレイクが重なって、少し苛立つビンセントは自分が知らないところの本気になった。


 赤いカミラと対となるような青い力を纏うビンセントは、リティスを対戦相手から変わって敵とした。

「おぉ、ビンセントの本気かな。今までの中で一番高まってるかも」

 土煙が舞う中、淡い青い光とその雰囲気を見てカミラが感心する。

「ビンセントー頑張ってー!! 」

 ミルもそれに疼き、声を張って応援をした。

「おう! これ終わったら昼飯行こうな! 」

 ミルの方を振り向いて手を振って答える。

手を振っているとビンセントの周囲に影がかかり、上には巨大な脚がある。

ビンセントはそれを避けて一閃を通し、短いグラディエーターは脚を切断する。

 太い脚に対して、明らかに断てる長さを持たない剣で断ったビンセントを見るサリバンは、立膝ついて拝み、顔は感動の涙で濡れている。


 斜めに片寄る巨体は、その脚の断面を地響きと共に地面に落とす。

 ビンセントの青い力とその斬撃を、今までどの戦闘でも見たことの無かったカミラは、サリバンとはまた違った感動をして静かに惚れ続けている。

 その感動とは離れた男は一人歯ぎしりして、疑問と焦りと嫉妬を抱いていた。

そのリティスという男は、べド・サイモンの側に堕ちつつあるのだ。

 リティスとべドの違いは、役目の違いによる双剣の腕と、禁忌魔法を使用したかしていないかだ。

べド・サイモンは特殊だが、氷の禁忌魔法を持っているように、リティスもそれに近い地の魔法を持っている。


 リティスは静かに詠唱を行った。

「地、地精霊の鎮魂歌。生命の蠢きを……鎮め、我が肉体を……依り代として、還る。禁忌土魔法『ガリルセッション』」


 リティスは今まで持ち続けていた答えを呟き終えた。

彼の口と片目以外の感覚は無くなり、感覚が無くなった部位から発せられるオーラと属性はリティス・オスヴァーグの物ではなく、全く別物となった。

「こ、これが禁忌、魔法ですか」


 戸惑いながら初めて使った禁忌魔法。

べドの扱っていた禁忌魔法に比べれば格は遥かに低い魔法であるが、この魔法が禁忌とされた理由は、

術者の肉体の制御は宿った精霊により行われ、一時的にとはいえ肉体が魔法化する為に禁忌とされている。

 べドが使用したような最高位禁忌指定魔法は、術者能力が低ければ魔法を使った瞬間死ぬことになるが、リティスがそれを扱うと確実に死ぬことになる。


 リティスの変化にカミラが最初に気が付き、ミルも気にしてはいないが気が付き、サリバンも気が付いて最後に知るのはビンセントとなる。

 土煙が開けて飛び出てきたリティスは、二本の双剣を振りかぶり襲い掛かる。

ビンセントは斬撃を弾き返して、リティスは背後にいたナージャドレイクに叩きつけられるが、彼の体は土人形と同化して衝撃を吸収した。

「それも魔法ですか? リティスさん」

「その……ようですね。初めて使ったのですが、なかなかです! 」

「リティス!! 」

 サリバンの怒号がリティスに飛ばされるが、リティスは体の自由が利かない為、片目だけサリバンを向き謝る。

「申し訳ございません。しかし、私は全身全霊、私ができる限りを尽くすのです」

 ナージャドレイクに同化したリティスがビンセントに襲い掛かる。

 切断された脚を生やし、体から武器を生成すると、ビンセントに向くナージャドレイクのありとあらゆる部位から無数に槍が伸びて射出された。

 それを見たビンセントは、ここで初めてリティスの変化に気が付いた。

(……リティスさん。そんなのが魔法なんですか? 俺の憧れた魔法とは少し違うな)


 ビンセントは後退してカミラの方を向く。

「終わらせるから、ちょっとミルの目覆ってくれるかな」

 そう言われたカミラは理解するが、ミルは理解せずに疑問を浮かべて二人を見ている。

「わかった。ちょっとミルは目を瞑ろうね~」

 急に眼を覆われたミルは訳も分からず驚いた。

「わわっ!? 見えないよカミラ~、暗いよぉ」

 ミルの目をそのまま覆いながら抱っこして、カミラはミルと同じ椅子に座る。

「おっけー」

 ビンセントに向けて呼びかけるカミラに対し、手を振って答えるビンセント。

「よし! ありがとう」


 ビンセントが敵に対して振り向くと、目の前には槍が無数に生えた頭が突っ込んで来るのが見える。

(お望み通り『境界』を使ってやるよ。オールガードだとか、硬い体だとか、その気味の悪い魔法だか何だか知らんがな。この能力の前では障害にもならないんだぜ、うん。最近思ったんだがな)


 ビンセントの周りの空間に無数の境界線が引かれて開き、亜空間が露出する。


 敵に対して『境界』を使うと対象から除いてあるリティスを除き、ナージャドレイクの巨体に無数の境界線が引かれて開き、開いたままの状態で境界が消えていく。

 境界を受けたものは何が起きたのか理解できない。

ただ生きてそれを見てしまったならば、恐怖と絶望に飲まれることとなるだろう。


 境界を開かれたナージャドレイクはバラバラになり、大きな破片は更に細かく散る。

境界に分けられ粉微塵になった自分の最強の召喚獣を見て、又自分の体を見てリティスは落下の中で絶叫する。

「ワァ亜ああ亜亜亜亜亜アアあ亜亜亜亜亜亜ア亜――――――ッ!!! 」

 自分が魅せられ惹かれて憧れた能力に恐怖して、更に絶望して叫んだ。叫んでしまった。

 体中に境界が引かれている。体中に引かれた細い線から覗き見える亜空間は、ナージャドレイクを見る限り一瞬にして開くことが出来るのだ。

 リティスはそれと後悔を思い絶望した。

崩れ積もるナージャドレイクだった破片からは魔力は全く感じられない。

その塵山に落下したリティスは心の底から体の動きを拒否するが、体は精霊に奪われている為止まらない。

 起き上がると、ビンセントに向けて剣を握って駆けだしてしまう。

片目は笑っているが、残りの表情は見るに耐えない程酷く歪んでいる。

「止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ、止マレェ――!! 」

 いくら止まり退きたいと思っても、体は一部の魂を無視して走っていく。


 ビンセントはまだ少し遠くに見えるリティスの体中に引いた境界をそのまま閉じて解除すると、自分の目の前とリティスの左腕に境界を開いた。

「な、何を――!? 」

「リティスさんの魔力が違うから、今とり憑かれているんだろ。解放してやるよ」

 ビンセントは目の前の境界を剣で斬ると、リティスの左腕が跳んだ。

「ぐわぁっ……あれ? 」

 しかしリティスの断面は岩肌で血も出ていない。

「やっぱり、カミラの言ってたべド・サイモンってやつみたいじゃないか」

 血が出ない代わりに、リティスの物とは違う魔力が噴き出す。

ビンセントに向かって走っていたリティスの体の動きは鈍くなり、とうとう崩れ倒れた。


「な、なんだこれは、ぐ、ぅぁあっ」

 じわじわと、断たれた断面が岩肌から本来の姿に戻って行く。

「カミラ、もうミルの目抑えてなくていいよ。ミルごめん、また傷直してくれないかな」

 ビンセントがリティスの治療の為にミルを呼ぶと、ミルが元気に返事をして駆けてきた。

カミラもミルに付いてくる。

 リティスの腕断面が次第に肉質となり、リティスが徐々にやってくる痛みに悶える中、断面からは血が滲んで、終いには噴きだして止まらない。

 ミルが到着と同時にリティスの腕を直すと、断面は再生されて皮膚に覆われた。

 今度は痛みが徐々に引いていったリティスは、驚きながら何度も傷を癒したミルと自分の腕の繋がっていた部分を見た。

「あ、ありがとうございます!! 」

 地に這いながら三人に礼を言うリティスは、顔半分が酷く歪んでいた。

 禁忌魔法で憑依させた精霊により、笑っていた顔面はそのままになっていた為である。

「ミルありがとう。ごめんね呼び出して」

 ビンセントもミルに礼を言うが、ミルは苦笑いをして何故かすまなそうにしていた。

「あぅ、ごめん。いきなり回復しちゃったから、腕くっつかなくなっちゃった……」

 カミラに頭を撫でられているミルの言葉に反したのは、横から歩いてきたサリバンであった。

「いえミル様、十分過ぎます。本当にありがとうございます! 左腕は、国内でドラゴンを召喚し、禁忌魔法を使用したこいつの正当な罰となるでしょう」

 それを聞いていたリティスも三人に対して完全に屈服していた。

そして自身の憧れていた能力を持ち、それに恐怖と絶望を抱いたリティスは、能力を完全に操るビンセントに対して感服する。

「ミル様に、皆様に生かされた身、感謝の極みでございます」

 顔を地面に押し付けながらリティスは礼を言う。

「もういいじゃないですかリティスさん、顔を上げてください。シャワー浴びてご飯食べましょう。もう昼じゃないですか」


 感服後に感じる今までの愚行を恥、それを許してくれたビンセントに堕ちたリティスはビンセントに対して、ミルに、カミラに対して絶対の忠誠を誓う事となった。

 半面酷く歪んだ顔を上げてビンセントの顔を見ると、いそいそと立膝を突いて三人に対し宣言をする。


「今日の愚行、どうぞお許しくださいませ! このリティス。アースドレッド国軍、エルスト特殊新鋭部隊大隊員『地の双剣』リティス・オスヴァーグ少尉! ビンセント様、ミル様、カミラ様の騎士となることをここに誓います!! 」


 片腕を失ったが、リティスはその忠誠を四人に向けて公言した。

「そ、そうですか……うん、とりあえず、傷は大丈夫ですか? 」

 また奇妙な騎士が増えたと、ビンセントは困惑しながらリティスに手を貸す。

「は、ミル様のおかげで、完全に癒えております」

 恐れ多いようにし、なかなか手に捕まらないリティスの手を無理やりに引っ張って体を立たせた。

「では、戦闘はコレで終了でいいですね」

「はい。数々のご無礼、お許しください」

(そんなに謝らなくてもいいのに……しょうがない、こういう場合使える言葉は)

 ひたすら謝罪を続けるリティスの肩を叩いて、ここ数日で身に着けた言葉を考え出して加える。

「いえリティスさん、そんなに謝らないでください。今後も、期待していますよ? 」

(ど、どうだ……)

 リティスの反応を無表情で、しかし内心ハラハラしながら窺うビンセントだが、彼の反応は見覚えのある反応だった。

「はい! 期待以上の働きをするよう、努力致します! ありがとうございます!! 」

 見覚えのあるとは、サリバンのことだった。

「うむ、それでこそだ」

 その反応に真の意味で満足しているのは、おそらくサリバンだけだろう。

「宜しくお願いしますね。サリバンさんも、土地を貸してもらってありがとうございます。大変勉強になりました」

「当然の事でございます!! 」

 戦争でもあったかのように凸凹になった庭だが、使ってもらえた事に喜びを感じる騎士は、主に対して感謝をする。

「それでは、私達三人はこれから定期的に旅に出ますので、不在の時は連絡が付かないので宜しくお願いします。また、サリバンさんには既にお伝えしましたが、先に予定を伝えていただければ、その時には境界を使って現れますのでご心配なく。また七日周期でここには戻ってきますので、その時にもし何かあればお伝えください。サリバンさん、リティスさん。面倒かけます」

 ビンセントがそう言って頭を下げると、二人の騎士は立膝ついて声を合わせて張り上げる。

「滅相もございません!! どうぞ旅路はお元気で! 」

「立膝はやめてください」

 絶対の忠誠だが、そういうところは何故か耳に入らないのもこの騎士達の共通点であろう。

「それでは、俺達はこれで失礼します」

「失礼します」

 三人がお辞儀をして、ビンセントが作った境界の中に入ると境界もろとも消えていった。


 三人の行き先は宿のシャワーと決まっているように思えるが、残された二人の男は敬礼していた。

暫くたった後、サリバンはリティスに向き直って口を開いた。

「さて、リティスよ」

「はいサリバン様」

「ナージャドレイクの召喚はやりすぎだ」

「――申し訳ございませんッ! 」

「禁忌魔法を使うとはどういうことだ」

「申し訳ございません!! 」

 二人の騎士は昔の様に上官と部下の関係を再現していた。

「御三方ならば分かった通り一瞬で片付けられるが、それはあまりにも無礼なことだ」

「その通りでございます」

 リティスは頭を下げようとしたがサリバンがそれを制し、歩き出した。

「俺の庭も滅茶苦茶になったが、まぁそれはいいとして、これから俺達二人で、地響きと破壊音で起きつつある周りの騒ぎを鎮めて周るぞ」

「承知致しました。ご迷惑をおかけ致します」

「まぁそれは良い。終わった後は、身を清めた後飯でも食いに行こう」

「はっ!! ですが最初に、サリバン様のお庭を直させてください」

「む、すまんな」

 リティスは歪んだ顔のまま地面魔法の呪文を詠唱し始めた。

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