高校三年生の女子が、ラブコメに習って恋をしました。

みずみやこ

教えて!ラブコメ先生!!!

私は、美奈!

三つ編み、地味眼鏡のモブ少女。

周囲にはガリ勉に見えがちだけど、そうじゃなああああい!(まあそうだけど…)

ほんとは恋を夢見る女の子。

えっ?なんて?もう高校三年生なのに恋したことがないの?って?

そーゆーあなたはどうなのよ?えぇ?

…まあいいわ。…え?そんなに恋がしたいなら無理矢理にでも彼氏作れよ?

いやいやいやいや。分かってないわねええ。あなたは。

そ・れ・!いちばああん、あぶなあああい!(びしいいいいっ)

恋っていうのはね、運命の相手を見つけて!どっちかが告って!……そんなやつよ。

はあ?今度は何?運命の相手なんていないって、アルフレッド・アドラーが言ってるって?

…なに言ってるのか分からないんだけど。まあいい。もう放っておくわ。


今は、朝。

私は、一人で学校に向かっているとこ。

そう。ぼっち。 あははー。

周りでは、楽しそうに笑い、おしゃべりしながら歩く、同じ学校の人たち…


私は、制服が可愛いと評判の名門高校の生徒なんだよ!

前のテストだって、なんと!学年二位だったんだああ!


なのに…

みんな、私に寄ってこない。

この見た目がいけないのかな?でも、三つ編みって可愛いし…

あっ、眼鏡がいけないのかなあ?でも、お母さんがこれじゃないとダメっていうから…


学年二位だったらモテるって思ったのに…頭良くてもモテないんだ…ってがっかり。


学校に着き、教室に入った私は、自分の席に座るやいなや、鞄から文庫本を取り出した。カバーが付いていることを確認し、開く。

本のタイトルは、『シュガーラブ♡』。高校三年生の男女がすれ違いを重ねながら恋をし、ついには結婚する物語!


『「ああーん遅れるー!」あたしはチャイムが鳴り響く廊下を、全速力で駆け抜けた。角を曲がれば教室だ――――そう思って先の見えない曲がり角を曲がった時―――「きゃあっ!」「ぅわっ!」

「いったあ~…って、い、池上君?!」「あっ、永田さん……大丈夫?…もう、危ないから走らないでね?」「う、うん…ごめんなさい。」「ああ、もうそんな顔しないで?せっかくの可愛い顔が…あっ、ほっぺたにすり傷が…」「えっや、大丈夫!平気――」「駄目!……はい、絆創膏!」「えっ?!あ、ありがとう…」「貼るよ。」「えっ…」(ぺたっ)「あ…………りがとう。」「ん、…じゃあね。」

池上君はふわりと笑うと、立ち上がり、その場を後にした。あたしは絆創膏が貼られた右頬を抑えた。』


ここが私のいっちばん好きな場面!二人が出会うシーン!

…それだ!

さっすが、『ラブコメ先生』!

私は文章を目で追いながら目を輝かせた。

ふふっ、面白くなりそう!


    ♢


よし、復習だ!

私は、『シュガーラブ♡』を開いた。

ここは、学校の廊下。すぐ左には、あのシーンのような曲がり角がある。まるでスパイのように、壁に背中を貼り付け、角から顔を出し、曲がり角の向こうの様子を窺った。50メートル先には、まるで『池上君』みたいなイケメンが歩いてきている。


よーし、順調順調!上手くいけば、私だってラブコメの主人公になれることを読者の皆に思い知らすことができる!

学年2位の力、見せてやるわ! ハッはっはっはっ!………っえ?

ああーーーー!!!!


私は心の中で絶叫しながら通り過ぎていくイケメンを見送った。


の、逃した…

続く

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