アカギリ
@Komuteli
第1話
「えー、渡部圭介」
「はい」
名前を呼ばれた圭介は起立し、元気とも言えぬ返事をした後、腰を下ろした。
今日は高校の入学式。
地方から親の仕事の都合上上京して来た圭介は、東京の高校に入学することになっていた。中学の友達と別れるのが嫌で何度も上京に反対した。でも「仕方ない事だから」
「友達なら向こうでもできるから」と、のらりくらりとかわされた。
違う。もうあついらみたいな最高な友達はできない。親は何もわかっちゃいない。圭介は悩んだ。
気がつくと入学式は終わり、教室でホームルームをしているところだった。
「えー、だから皆さんには城高生としての自覚を持って高校高校生活を送って頂きたいと思います」
校長祝辞と被った話をした担任は得意そうに、
「以上ですね。起立」
全員が気だるそうに立ち上がる。
「礼」
生徒の動きは様々だ。圭介のように足早に帰ろうとする者、部活動の見学をしようとする者、早く友達を作ろうとSNSを交換しだす者。今までの圭介なら焦りを感じていただろが、もうそんなことはどうでもよかった。
何故か食塩を机に置く男がいたからだ。
見た所運動部だろうか。顔も中々整っているし、かなり良い体格をしている。すると今度は入学式にしては大きなバックを取り出すと、中から瓶に入った透明な液体を取り出した。水か?
確か「木村 岳人」と自己紹介で言っていた。
「俺は渡部 圭介。よろしく木村」
何故圭介が話しかけようとしたのかは、自分でも分からなかった。ただ、なんとなく自分と同じく一人でいる木村に親近感が湧いたのかもしれない。
「おぉ、よろしく圭介。俺のことは岳人って呼んでくれ」
「塩なんか出して何してるんだ?」
恐らく最も興味が惹かれていた点----------
塩について尋ねてみた。
「あぁ、これな。ちょと野暮用でね。圭介は、幽霊信じる?」
幽霊。信じていない。
「いや、信じてない。人の間違いとか、そう言ったことじゃないのか?」
「じゃあ幽霊怖くないよな?」
なんだこいつ。興奮してやがる。
「あぁ、まぁそこまで。」
「じゃあ今週の金曜の夜会えるか?
行きたい所があるから付き合って欲しいんだ。」
肝試しか?金曜日は明後日だ。部活に入る気もない圭介はヒマである。
「いいけど」
「よっしゃぁぁぁ」
何故か大げさに喜ぶ岳人。
「金曜の放課後駅前な!!」
そう決めつけると岳人は忙しそうに教室を飛び出していった。変な奴だ。だが、この約束によってあんな事になるとは、まだ気づけていなかった。
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