言いがかり

「行ってらっしゃい、気を付けてね♪」

「…ぇ?何に気を付けるの…?」


ユウキの問いかけにミナミは悩む

そう、送り出しに使った言葉は、昔よく聞きなじんだ言葉

特に深い意味は無いが


「…う~ん、車…はないし…

変な人に絡まれ…ても、何とか出来るよねぇ…

ん~…厄介な人に絡まれないように気を付けてね?」

「…なんか、それ…フラグにしか聞こえないんだけど…」


気を付けるべき物の中に、魔獣が出てきていない事に

ユウキは気付いていたが、あえて触れる事はしない

何故なら、話が長くなりそうだから…だ


「ふらぐ…?」

「(ミナミの生きていた時には、無かった言葉なのかな?)

なんつーか…これから起こりそうな事を言う事…みたいな?」

「なるほど…まぁ、さっき言った事、起こりそうだから

本当に心配なんだよ」

「…起こる前提で話進めんといて…」


確かに、今まで色々面倒な事には巻き込まれてきた自覚はある

だがしかし、それを前提とされると

否定したくなるものだ


「だって、ユウキちゃんだよ!!?」

「ねぇ、何でも僕って事で片付けないでよねぇ!!?」

「だって…ねぇ?」

「…はぁ…まぁ、気を付けた所で、巻き込まれる時は巻き込まれるしなぁ

今日だってボスを押し付けられたし…」

「えぇぇ!!?ボス押し付けてくるとか、一番やっちゃいけないのに!?」

「まぁ、倒したけどね」

「あ…やっぱ、そこはユウキちゃんだよね…

逃げるんじゃなくて、倒しちゃうあたり…」

「倒せないなら逃げるけど…倒せるなら、倒すだろ?」

「…そだね…(普通、ボスを押し付けられて倒せるとか思える辺りがね…)」


当然とでも言いたそうなユウキの表情に

ミナミは、それこそ『ユウキちゃんだから』という言葉で

自分自身を納得させるしかなかった


「んじゃ、行ってくるな」

「うん、いってらっしゃーい」


ユウキはとりあえず、一番気になっている、あの事を知るため

ある場所へと向かう


(えーっと…確か…ウサギの耳は…)


一度行ったところはすぐに行けるが

行った事の無い所は、地図を見ながらでないと難しい


「おい、号外見たか?」

「おぅ、見た見た、アイツら最低だよな

冒険者の風上にも置けない奴らだ」

「でも、あの子達本当に強かったわねぇ~」

(この世界でも、号外とかあるんだなぁ…

さてと…ウサギの耳は…)


周りの声に一瞬気を取られたが

再び地図でウサギの耳を探そうと視線を落としたユウキ

ザワザワとする周囲の音はシャットアウトである


「おい!!」

(セリア通りか…となると…あっちか…)

「おい!クソガキ!聞こえてんのかぁ!!?」


方角が分かって、そちらに向かおうとしていたユウキは

怒号と共に胸倉を掴まれ、強制的に相手と対峙する事になった


「僕に何か用事?」

「用事ありまくりだ!!よくもデタラメな事言いやがったな!!?」

「あの記事のせいで、俺達は悪者みたいに扱われてんだ!!

どう落とし前つけてくれんだ!!?」

「悪質なウソは、犯罪なんだぜぇ?」

「はぁ…僕は何にも言ってないけど?

(コイツら、どうやって僕の居場所知ったんだ?)」


今、ユウキの目の前にいる3人には、見覚えしかなかった

そう、あの事件の当事者である

大声でデタラメと言いユウキを罵る事で

自分達が無実であると訴えているのだろう

それが功を奏するかは分からないが…


「ウソ言うんじゃねぇ!!

とんでもねぇ嘘つき野郎だな!」

「さっさとウサギの耳に連れて行って

俺達が証言して、コイツの言ってる事がウソだって証明しようぜ」

「はっ!そうだな!

こんな子どもの言う事を真に受けたウサギの耳も大した事ねぇな!」

「さっさと来やがれ!」

(はぁ…まぁ、結局行くとこ一緒だから良いけどな…)


ズルズルと引きずられる形で、ユウキは自動でウサギの耳へと

連れていかれたのであった

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