砂埃

「この取材は結構大事なんですよ

冒険者と言っても、色々ですもん

ランクが高くても、人間的に良いとは限りません

特に、護衛などを使う人達には、貴重な情報になるんですよ」

「あぁ…確かに…」


護衛で雇った人間が、さっきの3人みたいな奴らだったら

そう思うと、そういう情報の重要性が少し分かった


「お2人は、ココで依頼ですか?」

「うん、まぁね」

「コッコが出る所では、大概ターゴが残るんですけど…

ターゴも拾いました??」

「当たり前だろ!俺らの目的ターゴだしな!」

(それ言ったら、何でターゴが目的か…聞かれるんだけど…)

「えぇ!?ターゴが目的なんて、珍しいですね?!

何でターゴが必要なんですか?特に使い道も無いのに」

(ほらみろ…)

「んなの、食べるに決まってるだろ!

あれは美味いんだ、使い道無いとかあり得ぇだろ」

「た、食べる…んですか…?」

「まぁ、急に言われても驚くよね

もう少ししたら、僕の仲間が飲食店出すから

そこで食べてみてよ、それで判断するのが一番さ」

「なるほど…良い情報を頂きました!

それでは、その日を楽しみにしてますね

あ!ちゃんとお店出す日を情報誌に伝えるように

お仲間さんに言っておいて下さいよ!」

「…あ…ハハハ…とりあえず、伝えとくよ…」


ユウキは、元々店を出すのに、情報誌に言いに行く気が無かったので

乾いた笑いしか出てこない

この世界に詳しいミナミだが、情報誌に伝えに行こうと思っていたか…

それは不明なので、無難に返答するにとどまった


「さてと…それでは、私はこの辺で…

あれ?あれは何でしょう?」


ディアナの視線の先には、砂埃が舞っている

戦闘をしているのだろうか…

だが、その砂埃は徐々に大きくなってきてる

そう、つまりはこちらに向かってきているのだ


「…何だありゃ?」

「…ん~…スピードからして…戦闘をやりながら…って感じじゃないね

逃げてる…のかな?」

「はぁ?逃げてるだけで、あんな砂埃舞うか?」

「ん~…多分、砂埃上げてるのは…逃げてる側じゃなくて

追ってる側なんじゃないかな…?」


そんな会話をしている間に、逃げている人が近づいて来て

誰なのかが分かる


「あぁ…あの3人組か」

「何か変な魔獣でも釣ったのかな?」

「よくありますよね!

まぁ、このまま通り過ぎてくれれば

魔獣がこちらを気にする事なんてありませんから

大丈夫ですよ

普通の冒険者はそうしますよ、人に迷惑かけないようにするものです」

(それって、何気にフラグなんだけど…)


ディアナの言葉に、若干不安を感じたユウキ

でも、逃げる…という選択肢は無かった


(…あの3人が普通の冒険者なら

他の人に押し付けず、自分達で逃げ切るだろ…

押し付けるような奴だったら、他の人に押し付けるより

僕に押し付けられた方が、マシだしな)


そんな事を考えている間に、3人は間近に迫っていた

ディアナの言うように、通り過ぎるのか

ユウキの感じた不安が当たって、押し付けるのか…

3人の選択は…


「ガキ…まぁだ…こんな…所にいた…のか!」


ゼィ…ハァ…と肩で息をしながら

その場で止まった3人組

止まった時点で、ディアナの顔は厳しく3人を見つめている

そう止まったという事は、目の前の3人は

一見すると子どもにしか見えない

まだか弱い存在に、自分達が手に負えない物を押し付けようとしているのだから

ディアナはユウキとキョウヤの強さを知っているが

ガキ扱いしている男がユウキ達の強さを知っているようには思えない

なのに今からしようとしている行為が

ディアナには許せなかった


「ねぇ、何か砂埃がついて来てるけど?」

「ん?あ、あぁ…弱い魔獣がついて来てるんだよ

俺達からすると、弱すぎて経験値にもなんねぇからな!

そうだ!お前らにやるよ」

「そうそう、超弱いぞぉ~」

「俺達なんて、3人でやれば一撃で済む相手だぜ~」

「何言ってるんですか!?

弱いんだったら、人に押し付けず自分でやったらどうなんです!?」

「はっ!わっかんねぇ女だなぁ!

こーはいに対して、優しく教えてやろう…っていう俺達の優しさじゃねぇか」

「俺達の経験値分けてやるよ…っていう優しさな!」

「俺達には弱くても、お前らには良い経験値だろーよ」

「という事は、2人が敵わなかった場合、きちんと対処してくれるんですよね?

負けた時は、代わりに討伐してくれて、ポーションも準備されてるんですよね?

最後まで見届けるんですよね?」

「あ、当たり前じゃねぇか!

ほら、もう来たぞ!ほら、やってみろ!」


そう言って男はユウキの背中をドンッと押す

体格差があるため、ユウキは軽く前に飛ばされ

何かにドンッとぶつかった

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