まさかの…

「あ…いや、大丈夫だよ!ユウキちゃん!」

「ぇ…?(…ちゃん…?いや、ちょっと待て…よし、落ち着こう…)」


しかし、ユウキの心配が杞憂だったようだ…が、敬称に違和感を感じる

驚いて混乱しかかる脳を落ち着かせているユウキをよそに、ミナミは喋る


「いや~、さっきからどっちかなぁ~?って思ってたんだよ!

中性的な顔立ちだし、一人称も『僕』でしょ~?

男の子かなぁ~…って思ったんだけど

その割には、華奢な体だなぁ~って思ったりしてたら

胸があったから、女の子だ!ってさっき気がついたの!」


そう言われ、ユウキは今の自分の状況を確認する

簡単なシャツにズボン…別に肌蹴ているわけでもないが…

サラシをつけていないので、年相応に小さく存在感はあった


「(あぁ…そうだ…僕寝起きだよ…

寝てる時にサラシなんかつけてねぇけど…何だろう敗北感…)

……はぁ…そうだよ…確かに僕は生物学上女だけど…」

「何でそんなに残念そうなの!!?」

「いや、間違われるのが当たり前だったからさぁ…

逆に見抜かれると、負けた気分になるんだよね」

「え?!それ、おかしくない!!?」

「仕方ないじゃん、前の世界でも、この世界でも性別間違われんのが当たり前だし」

「間違われたくなかったら、可愛い格好すればいいんだよ!

ユウキちゃん可愛いから、きっと似合う!」

「いや、似合いたいわけじゃないからね!てか、間違われんのが嫌でもないからな!!!」

「あ、むしろ間違われたい!みたいな?」

「…まぁ、そんな感じかもしれないな…

相手が間違える事で、ひそかな悪戯を楽しんでいる…みたいな感じ?」

「なるほどなるほど…」


ユウキの言葉にミナミは納得したように、頷いた

実際、男の子に間違われるのが嫌だったのなら、今のミナミの言葉は

狂喜乱舞物だっただろう

それなのに、ユウキはどちらかというとテンションが下がっていたので

間違いなく、間違われる事が楽しみの一つになっていたのだ


「はぁ…ちょっと色々な事があり過ぎた…落ち着こう

向こうの部屋にテーブルと椅子があるから、座って話そうか

ついでに僕、着替えたいし

(キョウヤはまだ寝てるだろうから、向こうに行っても問題ねぇだろ)」

「分かった、向こうで待ってるね!」


そう言うと、ミナミは向こうの部屋へと移動した


(…一回死んでるからか…落ち着くの早いな…

もうちょっと混乱するかな…とか、受け入れられないかな…とか思ったけど…

どっかの誰かさんは受け入れるのに、時間かかったし…)


そんな事を考えながら、いつものようにサラシを巻き

身支度を整えて、ユウキも隣の部屋へと向かう


(…うん…本当に順応性が高い…よね)


部屋を移動して、最初に目に入ったのは、コップに水を入れて飲んでいるミナミの姿だった


(…あれ?でも、ミナミのステータスに鑑定なんて無かったはず…

コップを自分で出せたのは…まぁ、メイキングを試したって事なんだろうけど…

魔石の使い方とか…ってか、魔石そのものを見た事ないはずだよな…?

何で使い方が分かったんだ…?)

「あ、ユウキちゃん!着替え早いね!

てか、そんな格好してたら、ますます男の子だよ?!

カッコイイから良いけどね!」

「まぁ、僕、カッコイイ方が好きだからね…

それより、僕にも水を入れてくれないかい?」

「うん、いいよ~」


そう言って、ミナミは何事も無くメイキングを使い

そして、セレインの湖と繋がっている魔石に触れ

水をコップに注いでテーブルに運んできた

そう、何の戸惑いもためらいもなく…


「んじゃ、話そうか…」


ミナミが自分の分の水を準備し終えた所を見て、ユウキは口を開く

ミナミは頷いて、ユウキの向かい側の椅子に座った


「まず一つ…疑問があるんだけど…いいかな?」

「うん、良いよ」

「ミナミは、この世界初めて…だよね?

何で、魔石の使い方を知ってるの…?

(僕みたいに、鑑定があれば、使い方とか分かるだろうけど…)」

「ん~…なんて言ったらいいのかなぁ~…

見た瞬間に、コレはこう使う!っていうのをね知ってて、その通りにしただけだよ!」

「…見た瞬間に知ってた…?」

「そうそう、あ!あれは何だろう?って思った瞬間に

そうそう!あれは、あぁ使う物だった!…って感じ」

「へぇ~…何だろう…鑑定とかのスキルは着いてないけどなぁ…」

「あ!何か、神様がね、私の体はこちら側の物で出来てるから

あまりサポートはつけられないなぁ…って言ってたよ」


ミナミの言葉で、ユウキは考え込む

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