洞窟の報告

「(ちょっと待てよ…この話を続けていくと、金塊の話にあるよな…

 シーヴァ達の反応を見るに、ココでも金は良い物なんだろう

 そんな話をこんな人通りの多い所でして、もし聞いていた奴がそこに向かったら?

 …間違い無く、あそこの物言わぬ者が増えるよね…)

 その話の前に、人が少ない所…個室なんてものはないですか…?」


ユウキの言葉にアリアは目を細める

思っている以上に、大きい物を持って来たのだと…

危険な個所…という、簡単な物ではないのだと…


「個室は、もちろんあるさ

 そこへ案内しよう」


アリアの案内で、ギルドの3階にやって来た

以前と変わりなく、簡易宿泊施設が並んでいる

この階にある一番奥の部屋がギルド長の部屋

アリアは、その部屋の廊下を挟んで向かい側の扉を開ける


「ココは、応接室さ

 大事な話はココでされるから、音漏れなんて気にしなくても大丈夫

 さぁ、座って続きを聞かせておくれ」


案内されたのは、とてもシンプルな部屋だった

壁は木製、室内にある唯一の窓からは、日の光が差し込んで明るい

部屋の雰囲気に合わせてだろう

向かい合う長椅子もその間にあるテーブルも木製だ

まぁ、この世界で木製が主流なので当たり前かもしれないが


(応接室…という割には、シンプルというか、必要な物しかないよな…)


それは、前の世界での応接室を基準にしたら…だが

この世界がどういう基準なのかを知らないユウキには

前の世界が基準になってしまうのは仕方がない事だ


(応接室って言うよりも…ただのフツーの部屋だな)


もちろん、キョウヤの基準も前の世界である

一方、この世界の住人であるシーヴァとミーシャは

特に何も言わずに座っている

やはり、この世界ではコレが普通なのか…

とりあえず、ユウキもキョウヤも2席につく


「ご配慮、ありがとうございます」


シーヴァはお礼を言い、目を閉じ一呼吸置く

きっと、あの光景を思い出しているのだろう


「洞窟に入り落ちた先は円状の広々とした所でした

 そこには、俺達のように幻術にかかって命を落とされた方が数名いました…」


シーヴァの言葉に、皆表情を曇らせる

今まであの洞窟に行って無事でいた者はいないのだろう

いたら、ギルドに報告しているか

そこにあった物で大きく儲ける事が出来るだろう

それ程の物があったのだ


「そこから横穴が続いていて

 その横穴の向こうには…

 金の採掘が出来る場所がありました」

「なんだって!!?」


アリアは驚きのあまり立ち上がる

その反応にユウキとキョウヤは驚く

ちなみに、シーヴァとミーシャはその反応が当然…

というように、驚いている素振りは無い


「しかも、その量はとても多く…

 そうですね…かなりの熟練の採掘師が一心不乱に作業をする事で

 取り尽せるレベル…」

「そんな大量の金がこの地にあったのかい…

 しかし…それなら、入り口の幻術も説明がいくわけだね」


落ち着きを取り戻したアリアは、再び座りなおす

ユウキからしたら、シーヴァの説明で金の採掘場がどれほどの規模か

全然想像がつかない

それはキョウヤも一緒で、首を傾げている

自分でその規模を見ていなければ、同じく首を傾げていただろう


「せっかくある物を使わないのも無駄になってしまいます…

 しかし、そこに辿り着くには、大きな危険があります」

「そして、そこに眠る者も何とかしてやらないとだね…」


アリアの言葉に頷く

どれだけの月日、あの場所にあったか分からない

肉親がいるのか、その肉親すらいないのか…

そういう事を調べるのはギルドか…

それとも、ラグーンという街規模を統治している人なのか…


「分かったわ

 この事に関してはギルド長に報告しておくよ」

「お願いします」


シーヴァがお礼を言い、ミーシャとユウキはペコリと頭を下げる


「それでは、失礼します」


一礼して室内から退出する

シーヴァは気が抜けたのか、「ふぅ」とため息を吐いた

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