魔法と手料理(キョウヤside)

「…はぁ…分かった、治すから手ぇ離せ」

「言ったからな、治せよ?」

「わーったよ…ったく、心配性だな」

「別に心配したわけじゃねぇよ!

 見てて、気持ちの良いもんじゃねぇから

 早く何とかしろっての!」

「はいはい、分かりましたよー」


俺の粘り勝ちだ!

アイツは、メモ帳とペンを取り出して何やら書きだした

魔法の事は、まだほとんど知らない…

色々役立ちそうだし、覚えてみようか

そう考えている間に、アイツの書いたメモ帳が消えた

その瞬間、緑の優しい光の粒がアイツの周りに現れる

光が当たった所から、傷がどんどん消えていく

これが魔法ってやつなのか!


「うわぁ…魔法初めて見た…」

「だろーな、ほら、これで良いだろ」

「あぁ…」


俺はさっさと手を離し、先にドアの所へ行く


「早く飯食うぞ」

「はいはい…ったく、誰が作ったと思ってんだよ…」


アイツはブツクサ言いながらついて来る

まぁ、確かに、作ったのはアイツだからな

さて、美味しい食事ってのは何だろうな~

って期待してたのに…用意されていたのは…


「何だよ…あの店で出てくる肉にキノコがついてるだけじゃん…

 しかも、米無いのかよ」

「ちゃんと味つけしてるから、大丈夫だよ

 あぁ、米な…まだココに来てから出会った事ないなぁ」

「てか、野菜とか店に行けばいあるんじゃねぇの?」

「そうかもなぁ…でも、八百屋系見た事ねぇんだよな…」

「うげ…まさか、無いのか…?」

「さぁ…まぁ、探せばあるかもよ?」

「はぁ~」


ココの食事情は思っていた以上に深刻なのか

それとも、コイツがそこまで危機意識を持っていないのか…


「とりあえず、食べよ?

 いただきまーす」

「はぁ…いただきます…」


アイツは嬉しそうにお肉を食べる

ったく、味の薄いこの肉をどう美味しいって感じるんだ?


「ん~♪美味い♪

 やっぱ、先にキノコを醤油で味付けしたのは正解だよね」

「はぁ!!?醤油!!?」

「ん?うん、醤油」


ちょっと待て!醤油って!!?

あっさり頷いてやがるが…


「この世界、醤油なんてあるのかよ!!?

 じゃあ、何で店の料理はあんなに味が無いんだ!!?」

「いや、この世界に調味料は存在しないよ

 素材の味を引き出す…だけだからね

 醤油はメイキングで僕が出した物だよ」

「…はぁ、何だ…

 ん?って事は、味がしっかりついてるのか!?」


味がついているなら、期待が出来る!

急いで口の中に放り込む


「う…美味い…」

「でしょ?

 まぁでも、ここの食事情を知ってるからこそ

 この味で満足できるんだよ」

「…確かに…」


ココの食事情を知らずに、これを食べたら

普通…か、普通より劣る物になっていただろう


「だから、キョウヤにココの食事情を知って欲しかったんだ」

「…なるほどね…」


確かに、俺に普通にご飯マズイけど、一度食べてみろよ…

と言ったところで、絶対食べねぇ

というか、改善されるまで食べるつもりは無い

まぁ、これは食べても良いけどな!

って言えるのは、あの味を知ってるからだよな…

何も知らなかったら、きっと文句しか出てこなかったと思う…

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