零章「序章の序章」 2
───二〇XX年、七月七日、深夜一時頃…
突然語らせてもらうが神様は眠らない、というより眠りを必要としないのである。
それが神と人類との違いとかそういうのはあまり僕は考えない質たちなので、神様が眠らないとか人間は何故眠るのかとかの質問は担当外である。
あっ、名乗り忘れたようだけれど、僕の名前は"
ちなみに名付けたのは僕の主の"
いや、地球神様なら"奴隷"とか"家畜"とか"ゴミクズ"や"愚か者"とかいう名前を付けそうだなぁ……
一番酷いものとなれば……これ以上はやめておこう。精神がどんどん磨り減るからね。メンタルがいくらあっても足りないよ。そもそも僕はこんな話よりも大事な話がしたいのだ! ……が、誰か来たようなので後にするとしよう。心が読める神とかその辺りにたまに居るからね……
「おい、俺の使いが何故ここで呆けてるんだ?」
さっきみたいに自分から精神を削る考えは止めにして急いで仕事に戻らないと地球神様に起こられるかもしれないしなぁ……まだバレてなさそうだし、もう少しだけサボろうかな……
「聞こえているのか? 無視をするな!」
うるさいなぁ……こんなに待たせるとか使いの者も頭おかしいんじゃないのかな……
どことなく、地球神様に似ている声や口振りだけど似た神様も居るもんなんだなぁ……
「聞いているのか! 神!」
神? 神様が使いなんて珍しい。そんな卑劣な奴が神の居場所こんなとこに居るなんて知らなかった。
偶然にも僕の名前も"神"だけど勘違いして返事するのは恥ずかしいので多分僕ではないと思われる……うん、きっとそうだ。「もういい! 本来ならばこれから五時間の労働だが、今日は昼の十二時まで、みっちり仕事してもらうぞ!」
さてと、そろそろ僕も神様のところへ向かうとするか……
一人妄想終了!僕、満足!
「雷撃ッ!」
そして僕は目を見開き、目の前によく知っている地球神様のお顔が、どアップで見える。若干、怒っている様にも伺える。まずは僕が声を掛けようとすると高濃度の光が目の前に広がっていった。
「痛──ッ!」
人間だったら普通はこの痛みで死んでるよ⁉ 神様とか神霊の類いは基本的に死なないからって、こういう魔法を平気で使うのはどうかと思うんだよね……! うー……痛い……
体が多少ビリビリする……そんな気分だ、多分雷系統の魔法でも撃ったのだろう。
「よう、どうだ? 仕事そっちのけで楽しい妄想に浸っているときに主が邪魔してくる気分は」
ハッキリ言って最悪だし、丁度妄想終わって仕事に入ろうってときから邪魔され……痛てててててててっ⁉
「言っておくが、お前の考える事は全てお見通しだからな……? 紛らわしい名前が何だって?」
聞かれてたんですか……えぇ、体に叩きこまれたので分かりました。これから控えさせていただきます………トホホ……
その後、僕は神様が言っていた、らしい? 昼の十二時までみっちり仕事をさせられた。僕が確実に悪いです、ハイ。
仕事の内容は資料の整理とかそんなのだけど神様の領域に来てしまうと地球上の社会人と比べて仕事量や難しさは天と地程の差がある…天界だけに。
「痛い!」
今のは僕悪くないですよねー⁉
僕が今やっている資料の整理を例にすれば、毎分に約五百枚の処理された資料を仕分けして片付けるんだ。人間の身体能力じゃ無理だろうけど、僕ならギリギリ達成出来る程度の難易度にはなっているようだ。勿論、この時間外労働におけるボーナスは無し、現実は非常である。
"神様の使いだから〜とか、高度な術式や〜、凄い魔法なんかが使える〜"ってみんな思ってるだろうけど現実は甘くない、そう非常なのだ。 確かにそう言った類いの物は存在するし僕も使える。ただ、ここでは『『疲れない仕事があってたまるかッ! 脱ゆとり思考!』』という上の話で、身体能力を上げたり、物を瞬間移動させる、つまり……楽が出来そうな魔法の類いは使えない様に決まったそうだ。誠に遺憾である。
そんなこんなで仕事を終わらせたわけなのだが……どうしようか……
下界に降りて人間達と会話するっていうのもいいなぁ……今、日本って国が熱いから行ってみたいんだよねぇ。
僕が暇潰しに何をしようか考えているところにドアの扉がノックされている事に気付く
「どうぞー」
特に帰す理由も無いので普通に部屋に招待する。
「どうだ? 仕事は済んだか?」
ドアが静かに開くとそこから地球神様が顔を出しに来る。
「丁度終わったところですよ、仕事の追加はやめてくださいね? 本当にキツイので……」
すると、地球神様はチェスと英語で上品に書かれた箱を、まるで手品の様に空中の何も無いところから取り出しながら喋りだす。
「仕事の追加は、他の神様に回してもらった。ただ私も暇なのでね、暇潰しがしたい、それだけでここに来たんだが……」
そう言ったときは大抵、会話を交えながらのチェスと相場が決まっている。
神様はチェスがお好きだ、駒を並べながらそう思った。
「神は戦が好きだ、だからチェスを好む」
地球神様は僕の思考を読んだのか、はたまた、そう語りたかったのかは分からない。
ただ、自分は気になる事がひとつ思い浮かんだ。
「……? 他にも立派な戦系のシミュレーションゲームならいくらでもありますよね? 将棋とか正に該当しませんか?」
「チェスは最も単純に戦が楽しめるように造られたゲームだ。正に単純、故に綺麗な決着が付く訳だ。」
つまり、どういう事なんだ? 確かにチェスは駒を動かして相手の王を討ち取る訳だけれど……?
「まだ理解していないようだな。それでは問うぞ、人間同士の争いに感情や人間関係があるはずで、集団同士の争いともなれば、自軍の士気向上は必須と聞く。攻撃をする事しか脳の無いユニット。そして権力を使えば戦わないであろう、王や姫が戦に入る等々。不可思議な所を極端に省いている訳だ、だから人間性の無い単純なゲーム。頭は使うが深く考える必要性が無いゲームだ。感情を持つ者を動かすというのは数式で編み出せるような動きしかしないロボットよりも断然、難しいという事だ」
「地球神様って何かと人間を嫌っていますよね、人間が作った嗜好品は好きなのに」
「そう言えば、まだお前には話していなかったな、私の過去を」
「えぇ、忙しい時に契約されて仕事ばっかりでしたし。今は退屈続きで仕事も落ち着いてますし、聞きたいです!」
二人はチェス盤に乗っている駒を交互に動かしていく。それと同時に地球神様は語る。
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