第96話変わった二人組

時刻は朝。時間にすれば九時の少し手前くらいだろうか。


朝特有のひんやりとした空気に包まれる街であったが、ギルドは仕事を受ける冒険者などで人が溢れ、熱気があった。


ガキンガキンと金属同士がぶつかり火花を散らす。かと思えば、色とりどりの魔法による爆発が周囲一帯を破壊、爆音がそこかしこで鳴り響いていた。


城郭都市アルス冒険者ギルド地下訓練場。


現在訓練場では全ての視線が激しい戦闘を繰り返す、とある二人に向けられていた。


一人は魔術師などが着用するローブを着ている。それだけなら普通なのだか、手足にはおよそ後衛職には似つかわしくない物が装備されていた。


周囲の光に照らされて銀色の輝きを放つ手甲に足甲だ。


普通後衛ならばそのような重いものを着けない。前衛職にただでさえ劣る身体能力に、そんなものを着ければ動きが悪くなるのは想像に難くない。よって装備するものはかなりの変わり種くらいなものだ。


これが、魔法戦士としての職をとっているのであれば然程問題ない。


だが、この人物ーーキーラは専用スキルを使う素振りもなければ剣の腕があるわけでもないように見受けられる。そのことからも魔法戦士の可能性としては低いだろう。


もう一方ーークロは軽鎧を身につけ、貫通に特化した武器である細剣レイピアと呼ばれる剣を使っている。時折魔法などを織り交ぜて戦っている。


キーラと同じように手足には部分的な鎧を纏っており、銀色に光を放っている。


二人は装備しているもの自体は似ているのだが、唯一違うのがローブの有無だ。


魔法戦士の専用スキルでもある付加攻撃エンチャントアタックにより、剣には様々な魔法が纏われ威力をあげていることから細剣レイピアを使っている人物が前衛職だというのが分かる。


後衛職でありながら、前衛職のしてのスタイルを取り込んだ魔術師と、魔法を剣に纏わせ戦う前衛職。


二人のスタイルは、似たもののようにも感じられるが、前衛と後衛では今まで培ってきた経験も、してきた修行も違う。違う筈なのだが後衛職である少女は前衛職であるはずの獣人の女性の動きに付いて行っていた。


突き出される刺突の一撃を頭を振ることですんでのところで回避。反撃にレイピアのような刺突特化の細剣でなく、斬ることも考慮に入れた片手直剣による斬り上げを行う。


ガキィンと言う音とともに獣人の女性――クロの手甲によって受け止められると、引っ張られ前のめりの体勢にさせられる。しまった!と思うよりも速く繰り出された腹部への蹴りをもらい、身体が宙に浮いたところで剣の柄で殴られ地面へと叩きつけられる。


殴られた衝撃で歪む視界の中、"無詠唱"による魔法をクロの足元に展開。


突風を巻き起こそうとする。だが、足元に展開された魔法陣に細剣が突き立てられると魔方陣がくだけ散る。


しかし、それを予期していたかのようにクロの背後に魔法陣を二つ展開していた。


背後から襲いかかる風と炎。二つが合わさり火炎旋風となる。威力を増した魔法がクロに襲いかかる。


その隙に体勢を起こすとバックステップ。追撃として魔法を放つ。


正面からは速度を重視した雷魔法の紫電の雷槍ライトニング・ピアス。背後からは――既に背後なんて規模ではないが――火と風による複合魔法である火炎旋風が迫っていた。


しかしクロは得に慌てた様子もなく、意識は魔法に向けつつも視線はキーラへと向けていた。


あと一、二秒もしないうちに攻撃が到達する。そう思った矢先のことだった。


クロの身体から雷が迸り、次の瞬間には前後全ての魔法を回避、キーラへと接近したのだ。


セリムがライジングバングから得たスキル"雷獣変化らいじゅうへんげ"と同じように雷を纏ったものではあるのだが、違う点がある。


"雷獣変化らいじゅうへんげ"は雷で全身を包み込み、速度や攻撃の威力を上げる。クロのは名付けるならば"稲妻増幅化ライトニング・エンハンス"とでも呼べる代物だ。


速度、威力などがあがるのは同じだが、纏う雷が稲妻のような細い線であり、それが何本も身体の周りを走っているのだ。



「っ!」



もの凄い速度で迫ってくるクロ。このままでは追いつかれると悟ったキーラは、躊躇なく手札を切ることを選択した。



「っ、瞬光!」



言葉が発せられたと同時、キーラの世界が広がる・・・・・・


知覚速度、知覚範囲、身体能力などと言った様々なものが爆発的に高まる。この他にも上昇効果あるのだが今はいいだろう。


引き上げられた知覚により、今までよりも正確な距離を把握可能となっている。さらに強化された身体能力が回避の手助けをしてくれる。


突進する勢いで突っ込んできたクロを躱し距離を取る。しかし、完全に逃げられたわけではなかった。


ガガガッと片足で地面を削るようにしてブレーキをかけると方向転換したのだ。


手にはリングから新たに出したであろう剣が握られている。魔法を繰り出すも全てが斬られてしまう。徐々に縮まる距離に募る焦り。思考が狭まっていく。



紅炎なる間欠泉プロミネンス・ゲイザー!」


「遅いにゃっ!」



未だ数mは距離が離れており、決して剣の届く距離ではないのだが、猛突進しながら剣を振りがぶるクロ。


すると徐々に剣の周りを魔力が帯び始め、全長三mはあろうかと言う剣身が生成された。それを一気に振り下ろす。



「っつ…」



振り下ろされた剣は肩に当たり、容赦なくキーラを地面へと叩き潰した。


幸いなのは刺突武器の剣身を模していたために、切られたわけではなく殴打されたことだろうか。



「まだやるかにゃ?」


「はぁ…もう、はぁ、無理…」



"稲妻増幅化ライトニング・エンハンス"状態ですぐ傍に歩み寄ったクロにまだ戦うかの意思を確認される。


さすがにもう限界だったのか、降参を示すようにうつ伏せのまま手首を動かし告げた。


それと同時に瞬光による強化が途切れ、全身を駆け巡っていた風の衣、暴風翼テンペストが周囲に散っていく。最後に纏衣に回していた魔力も途切れた。


荒い息を吐きながらゴロンとうつ伏せから仰向けに向きを変え、クロを見上げる。


今回の戦いはどうだったのよ!と聞きたいのだが、魔力の大量消費に加えて受けたダメージもあり、口を開くのが億劫になってしまっていた。代わりに目で語りかける。



「んにゃ~。 そうにゃね~、魔法の威力や速度なんかは問題ないと思うにゃ。瞬光を使ってからはさらに上がったしにゃ。けど、やっぱり前衛として戦うにはあまりに魔力を常時消費しすぎててガス欠が早いのにゃ。剣の腕の関しては前より上がってるにゃぁよ~。でも、前衛としての戦い方としては剣じゃなく魔法に頼りすぎにゃと思うにゃ~」



「まぁ、キーラは前衛として戦っていくわけじゃにゃいから問題にゃいと思うけどにゃ~」と続けると今回の総評を締めくくった。


前衛として戦うわけでもないのに前衛として鍛えているのは、変な事のように感じられるだろう。


この訓練は前衛として戦闘を出来るようになることを目的としたものではなく、接近戦になった時の対処法及び、身体を鍛えることが主なる目的だ。


ついでの目的として接近戦でもそれなりに戦えるようにという意味もあるのだが、それはまだまだ遠いだろう。



「そ、なら回復したらもう一回挑むわよ。今度こそ負けないから」


「まだまだキーラには負けにゃいにゃん。それと今日はもうお開きにゃ」


「な、なんでよっ!」



魔力欠乏も疲労もなかったかのようにガバリッと勢いよく上半身だけを起き上がらせるとブーブー言い放つ。



「私ももっと力をつけなきゃにゃんだにゃ…これからの為に、にゃ。にゃからモンスター討伐に行ってくるにゃん」



もっと修行に付き合って欲しい、そういった欲望がないわけではない。セリムのあの尋常ではない強さを目にした者としては、己の力が如何に矮小であるかがわかってしまったのだ。


ずっと一緒に居たわけではないがそれなりに居たのだ。


何かしら思ってしまうのが道理であろう。そうでなくとも仲間を甚振り、無関係な村人を殺した。そんなことを許してしまった不甲斐なさや弱さを消すためにも力を欲する。そんな人物に自身が強くなりたいからと言って邪魔は出来ない。



「そう…なら仕方ないわね」



訓練後だというのに得に疲れた様子も見受けられない、軽い足取りで突き刺した細剣を回収するクロ。回収が終わると地下訓練場が出て行った。


その背を見ながら一人思案顔になってしまう。


息を切らした様子もなければダメージを負ったようには見受けられない。同じ三次職持ちでありながら、こうもレベルの差がありすぎるとさすがに落ち込んでしまいたい気持ちにになってしまっていた。


同じ三次職持ちになったとは言え、今までの経験や、種族柄の特徴を考えればクロがリードしているのは当たり前なのだが、キーラにとってはそんなものは関係なかった。


セリムに追いつくまでとは行かなくとも、最低でもセリムと戦う為の舞台に手をかけるくらいの実力がなければダメなのだ。


冒険者ランクが下だとか、種族柄の特性だとか、そんなこと関係なく勝てなければ届かない。


どこまでも強さを求めるのに貪欲でストイックに訓練を積み続ける、これが今のキーラだ。


しかし、相手がいないのであれば実践はできない。


となればできるのは只管にスキルなどのLvアップを図ることだろう。最近三次職になったことでまだスキルレベルが低い。よって丁度いいかな…とこれからの予定を決めたのだった。





~~~~~~





数十分後――


ようやくある程度動けるまでに回復したキーラ。地下訓練場から地上の酒場兼依頼受付場である一階のギルドへと繋がる上がり階段を上っていた。


最近は暇さえあればクロとの模擬戦を何回も重ねているのだが全戦全敗という結果に終わっている。


既に二桁の黒星がついてしまった身であるが、そこは素直に己の力量が足りなかったと認めざるえない。だが模擬戦をしてからというもの自身は全力で戦っているのに対し、クロは余力を残しているように見受けられた。


纏衣はさすがに使っているようだが、獣人としての奥の手でもある"狂獣化"は一度たりとも使わせられたことがないのだ。


そもそもステータスに差があり、狂獣化までしたら開いていた差がさらに広がる。もはや勝負にならないのだが、相手に全力を出させることなく負けてしまうという状況が何とも気に入らなのだ。


どうすればいいのか、ん~と唸りながら階段を上っていく。するとやけにギルド内が騒がしい事に気付く。



「何かしら?」



いつも騒がしいギルドだが、現在聞こえて来るものはいつものお酒を飲んで酔ったりした者たちのバカ騒ぎなどではないように聞こえた。


時折聞こえて来る声は女の子、それもかなり幼い感じの笑い声らしきものが聞こえて来るのだ。


新人の冒険者でも来たのかしら、と考えながら階段を上った。


その先で見たものは十代、それも前半の十二歳位のゴスロリ衣装を着た女の子がギルド内にて逃げる冒険者のおっさんどもを追いかけている姿だった。


130ほどしかない身長の少女。そんな少女が追いかける姿は大人たちによるイジメか何かか…と勘ぐってしまいそうになる。が、見れば少女は笑顔であり杞憂であると教えてくれる。


一瞬何これ…と放心状態になるが、直ぐに復活すると近場に居た冒険者に話しかけた。



「まぁ、なんつーか…見たまんま話すとだな…」



そういって冒険者が話してくれたのは話をきいたあとでも理解出来ないことだった。




冒険者曰く、いきなりギルドに入ってきた少女が、近場にいた冒険者に向かって元気な声で「あそぼー」と声をかけたのだ。それが始まりだった。


訝し気な顔で真意を探っていると、答えを聞くよりも先に少女が他の冒険者のところにいき声をかけていた。


そうして同じことが数回繰り返された辺りで遊んでくれる人を見つけたのか、追いかけっこが始まり酔っ払いが混じり、ノリの良いやつが混じり…と段々と勢力を拡大していったのだ。


この大人たちは何してんのよ…とげんなりしつつ現在も走っている集団に目を向ける。


受付嬢や良識のある冒険者が走るな、キケン!とどこかのポスターに乗ってそうな言葉で注意を促すが意味をなさない。うぇい、うぇーいと走り回る非常識な者達。


非常識連中と同じパーティーに属する仲間なのか、必死に良識ある者達に頭を下げている大柄な男性がいる。


手に菓子折りらしきものを持ち、高速で一人一人に謝罪する姿は苦労人であろうことが想像できてしまう。謝罪のスペシャリストとか謝罪の達人といったオーラが漂ってきている。


さすがは謝罪の達人と言うべきか、一人あたりに対する謝罪時間は短いながらも決して雑に扱っているような感じではない。


目を視て謝罪の言葉を述べると一気にトップスピードで頭を下げ、脇に抱えていた菓子折りをサッと丁寧に差し出す。


目を見ることで視線を固定、そこから止めるまもない程の勢いで下げられる頭。最後に素早くありながらも決して丁寧さが損なわれていない手さばきで菓子折りを渡す。


あまりにも自然で流麗な動作からは数多くの謝罪現場修羅場をくぐり抜けてきた歴戦の猛者をも思わせるオーラがある。


謝罪の歴戦の猛者がなんなのかは不明だが…


今まで見てきた謝罪とは次元の違う謝罪を見せられたキーラは驚きを露わにしたものの、一番は大変そうねと他人行儀な事を思っていた。





~~~~~~





「いいですかっ! ギルド内で暴れるのは禁止です! わかりましたか?」



現在ギルド内にて鬼ごっこに興じていた全員が、床に正座させられフィーネに怒られていた。


いい大人が情けないものであるが、ここ最近あったことで皆の心に何かしら不安やストレスが溜まっていたのかもしれない。そういう意味ではいい発散だったと言えた。


皆を追いかける少女の後を、ゲヘヘと危ない感じの笑みを浮かべた人物が数名いたりしたのだが、それもストレス発散だったのだろう。決して邪な気持ちではない。多分…



「あと今日のことはマスターが帰り次第報告しますからね」



現在、都市アルス冒険者ギルドのマスターであるレイニー・グレイシアはアルス領主であるヴラド・サキュレータとともに、王都に此度の神敵者騒動に冠する事情の説明と言う名の糾弾に出向いている。よってマスターは不在だ。


二人一緒に王都クロスに向かったわけだが、護衛として怪我から復帰したアーサー、怪我の治療のためにしばらくアルスにいたザイドリッツとメルケルの三人が同行している。


主戦力となっている冒険者が王都に言ってしまうと街の防衛が心配だという声もあったが、一応は王都から戦力増強という意味ではないが近々騎士団が派遣されてくる予定となっている。


ただ騎士団がきたところで抜けた穴を埋めるには足りないだろう。


都市アルスには帝国と争う時くらいにしかSランク冒険者が常在することはない。


よって実質のトップはAランクとなっている。だが、実際のところアルスがSランク冒険者がいなくとも戦力的に問題なかったのはSランクのさらに上の存在である、神級者と呼ばれる最上位の冒険者がいるからだ。


この世界に数えるほどしかいないとされる最高位の冒険者。それがSSランク冒険者だ。


そして都市アルスのギルドマスターであるレイニー・グレイシアはその一人である。


プリプリ怒りながら酷なことを一堂に告げたフィーネ。


所々と言うか全体から「えー」だの「そりゃないよぉ」といった文句が出るが、威嚇らしきポーズ――熊のような――を取ったフィーネが凄むと何故か微笑ましいものを見るような目を向けられる。


本来は言うことを聞かせる為に凄んだのだが、思ったのとは違う結果となってしまっていた。


それでも文句を消すことには成功したので凄んだ甲斐があっただろう。ただフィーネとしては精一杯の威嚇だったのに微笑ましい目を向けられて、「んもー」と顔を赤くしながら受付カウンター奥へと行ってしまった。


騒ぎは沈静化し各々移動を開始していく。その中で怒られたのに反省が足りていないのか、鬼ごっこを始めた発端の少女が近場の冒険者に「あそぼうよー」と腕を揺すっていた。


困り顔で助けを求める冒険者のところに先ほどの謝罪の達人が駆け寄る。そして、これまた見事な謝罪を繰り出し冒険者を魔の手から救ってみせた。



「…お嬢、いい加減にしないとおやつ上げないことにするぞ」



何と残酷な言葉を…と言うように驚愕を顔に貼り付けた"お嬢"と呼ばれた少女。


先ほどまで楽しげに揺れていた透明感のある銀色のツインテールも、今は元気を失い、力なく垂れているように見える。


しゅんとなってしまった少女はおやつの為に渋々ながら大人しくなった。



「仕事が終わるまでの間はこの街でいなきゃだし、街中探検にでもいかないか?」



探検という言葉に先ほどまで意気消沈状態だった少女が目をキラキラさせながら「イクイクー」と元気を声をあげる。


ツインテールも揺れ始め、完全に復調した様子だ。


謝罪の達人である大柄な獣人の男から棒付きキャンディらしきものを渡され、さらに上機嫌になりながらギルドから出ていこうとする。



「お嬢、ちょい待ち。街中を案内してくれる人がいないか探すから」


「むぅー」



早く探検に行きたかったのだろう。ふくれっ面になりながらも新たに差し出されたお菓子に機嫌を良くしてしまう。何というちょろさか。


この子がヒロインだったならばお菓子一つで簡単に攻略できてしまうちょろインなっていたことだろう。良かったと喜ぶべきか攻略対象じゃなかったと悲しむべきか…



「ちょっといいだろうか?」


「?」



ようやく騒ぎの沈静化。元凶たる人物が出て行くのを見送っていたキーラの元に、謝罪の達人が話かけてきていた



身長はキーラに比べ頭一つ分以上大きく体格も良い。肩口付近と首元にファーの付いたベストから覗く腕は今まで見てきたどの冒険者よりも逞しい。相当鍛えられているのが窺える。黄色の短髪である頭部からは獣人としての耳が生えており、周囲を警戒してか、ピクピク細かな動きを繰り返している。


そんな如何にも出来そうな――謝罪を含め――人物に面識などなく、あるとすれば"謝罪の凄い人"と言う一方的な印象だけだ。そんな人物が何の用だろうか、と首をかしげつつ次の言葉を持っていると街中を案内して欲しい旨を伝えられる。


得にこれといった依頼などの用があるわけでもなかったのだが、キーラとしては自身の力を高めるためのトレーニングをしなければと、先ほど決めたばかりだった。よって断ることを告げた。



「んんー、そうか。…ならそのトレーニングとやらに付き合うからよ、こっちにも付き合ってくれないか? こう見えても冒険者ランクはAまでは持ってるからな」



一人でスキルや魔法のレベルを上げるのも重要だが、実践の中でしか学べないものだってある。まして今はクロがおらず相手をしてくれそうな人物がいない状態だ。


そんなに案内役が必要ならばギルドで募集するなりすればいいんじゃないの?と思うキーラだったが、格上との、それも戦ったことのない人物と訓練が出来ると聞いてしまっては、迷うものは無かった。


素性などは知らないものの、十代前半の少女の面倒を見る様子からは悪い人には見えなかった。そのことも判断を下す一助になっていた。



「わかったわ。やるわよ」


「そか。助かるよ」



そうしてキーラはちょっとおかしな二人組に城郭都市アルスの案内をすべくギルドを出るのだった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る