第12話ピチピチになると形がよくわかる

少ししたら異音も止み、痛みも引いた。何とか意識が飛ばずに済んだようだった。

                  


「あの液体は何だ?」



きつい口調でカルラに問いかける。返答次第ではただでは済まさないという意味を込めて。



「まずは服をどうにかした方がいいでしょう」



話を逸らす気かと感情が乱れそうになるが身体に違和感を感じ己の身体を見る。


そこにはピチピチになった服を着たセリムいた。もちろん上下ピチピチである。



「あら、結構大きいね、セリムって」



「キャアァァァァァァァァァァァァァァァ」









みっともなく女の子みたいな声をあげてしまったセリム。かなり恥ずかしくSAN値がごっそりと削られていた。


カルラから服を貸してもらう。何故女の人が男物の服を持っているのだろうかと疑問に思い聞いて見た所、人が滅多に来ないため恋しいらしく、人の温もりが欲しくて置いてあるのだそうだ。


意味わからないなと思いつつも服があり感謝だ。上はジッパー付きのタートルネックらしき襟が付いたもの。生地は黒で、ジッパーの線に沿って金の線が入っている。下は灰色がかった普通のどこにでもある長ズボン。



「人肌が恋しいなら今夜どうだい?」



とーーイケボを意識ーーちょっとからかうつもりでいってみたら



「え、あ、えっと…あぅ~」



と顔どころか全身真っ赤にして恥ずかしがっていた。あれは処女だな。などと考えながら初めてカルラに対し優勢に立てたことに満足感を得ていた。

が、そろそろ現状について話す為に、これはどうゆうことだと軌道の修正をする。



ゆでタコ状態から復帰したカルラが胸を張りながら得意げに語りだす。



「セリムに飲んでもらった液体はね、私の魂の欠片で作った者だけに有効な液体なの。モンスターに対し無理やりに成長を促し戦闘力を上げる為のものね」


「無理やりに成長を促す?」



自身の身体を見れば分かるでしょと質問に真面目に答える気がないように感じられる言い方だったが、実際己の身体を見れば大体は理解できたので然程気にする事でもないと思い、身体の状態を確認する。



服を着た時点である程度は分かってはいたが、体が急激に成長している。少し前までは七歳の小学生の身体だったのに今は十五歳位の中学生の身体になっていた。


筋肉が程よく付き130あるかどうかの身長だったのが170くらいまでに伸びている。先程の異音は成長促進による肉体への影響なのだろう。まるでコ○ンの薬の逆バージョンだ。



「何でもありなんだな、あんたは…」



もう完全にカルラがチート主人公まっしぐらである。



「まぁ長生きしていると色々と知識も経験も増えるものだけど、何でもできるわけじゃ無いの」



事実、セリムが先程飲んだ液体はまだ実験段階のもので副作用がどのようなものか分からなかった。そのためカルラはセリムで試したのである。


あの液体、名前は無いが本来ならカルラを守護するモンスター達の強化に使うものだった。普通の人間やモンスターなどがこの液体を摂取する事は出来なくカルラの魂の欠片を持っている者等の特別な存在限定なのである。摂取すると理論上では身体能力の向上、思考力の向上などがある。


さすがに真実を打ち明けたりはしなかったが成功してカルラとしても安堵から笑みが零れていた。なんつー恐ろしいものを飲ませてんだ。


セリムにしてみれば激痛を伴い変化をもたらすという色々と危険極まりない物に感じられたのでもっと効果について聞いときたかったのだが、安定しているし特に何も起こらない!ときっぱり言い切ったカルラにこれ以上聞くことが出来ずにいた。





そんな事があり、時刻は夕方近くになっていた。軽く食事を済ませる。文字通り本当に軽い物だった。

女性と言うのも関係あるのかもしれないが、拳サイズのパン一つと庭で栽培している野菜を使ったスープだけだった。



「さて、スキルと変装これで済んだし後は今後どうするかね」


「何をするにも金は必要だからまずは金を稼がなきゃだな」



セリムが言った通りお金とは生きていく上で絶対に必要な物である。時に金は力にも成り得るのだから。それを聞いたカルラが出した答えは至極一般的で危険が付きまとう冒険者と言うものだった。



「危険なんてのは今更だしな、冒険者ギルドがあるとこにいくか…」


「そうね、それが一番無難でしょう。これからの事を考えると取りあえずは、ここから一番近い所で冒険者ギルドがあるのは…都市アルスかしらね」



都市アルスとは森を挟み帝国領直ぐ隣にあるため帝国からの移住者や帝国と戦争が起こった時には物資などが運び込まれ、血気盛んな者など強者が多く集まる場所である。ソート村からアルスまでは東に三、四日行くとたどり着くことが出来る場所にあるらしい。


案外あっさりと目的が決まり少し拍子抜けしてしまうセリム。後はアルスまで行く手段だがそれは道中の村でどうにかできるだろうと考え今後の方針についての話し合いが終わる。


そして街に待った魔法を教えてもらう話へと移行するのだった。

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