第11話人の好意には何かしら裏があるかもと疑うべきだが疑いすぎるのは厳禁

セリムは己が生まれ育った村から逃げ出し、森の中を走っていた。着の身着のままではないが、村人が着る簡素な服に、ローからの渡された荷物を持ちながら。道中、家族など気になる事はあったりして、何度か振り返る。だが、今は考えてもどうしようも無いと割り切るとひたすらに走った。纏衣を使い使い身体能力を底上げして走る。



数十分くらいだろうか…そのくらい走ると目印の場所が見えてくる。結界を突っ切り護衛のモンスターに見つからないように疾駆する。そうして漸く目的の場所ーーカルラの家に辿り着くことが出来た。


ソート村から一番近い村まで行くには少なくても半日~一日はかかる為、今から行ったんじゃ夜になってしまう。そうなると、夜の森を行くこともあり得るので今回は行かず、カルラを頼りにここまで来たのである。



ここまで全力で来たため、多少ではあるが汗をかき呼吸が乱れる。以前ならばもっと乱れていたはずだ。これも肉体・魂の変質の影響かもしれない。


今回ばかりは神敵スキルに感謝だ。と言うか、神敵スキルがなければこんなことにはなっていない。そう思うと何だか複雑だ。


ログハウス風な家ーーと言うより別荘に近いーーのドアを叩き、来訪を告げる。



「あら、久しぶり。あれっきり来なかったからもう来ないのかと思ってたんだけど…」



背後から急に声をかけられ、ビクッとなるが聞き覚えのある声に恐る恐る振り返る。


そこにいたのは目的の存在の人物だった。黒い服と白い髪をしたナイスバディな年齢不詳の女性。手にはバスケットを持っており、中には山菜らしい物が入っている。



「まぁ、ちょっと色々あって…」



悪戯が成功した子供のような仕草でフフフと笑う。だが仕草に対して浮かべられた笑みは、大人の女性のもので何だかアンバランスだ。それからセリムが持っている荷物に気が付くと「これからバカンスかしら」とからかうってくる。



「そんな楽しそうなものなら良かったんですけどね」



そう言うと物悲しげに笑みを浮かべるセリム。その表情にからかうのは失敗だったかしら、と反省するとドアを開けログハクスの中へと招き入れるのだった。


カルラに続きドアを潜ると、促された椅子に腰かける。



「さてとっ、まずは何でここに来たのかしら?」



至極当然の疑問を口にする。



「少し前にソート村にクロント王国を名乗る騎士と白衣を着た人物が現れて」



そこまで言った瞬間カルラはすべてを悟ったように成程と短く相槌を打ち、セリムの言葉を遮って話し始める。



「スキルがバレて逃げてきたって訳ね。おっちょこちょいね相変わらず。隠蔽スキルは会得しなかったの?」


「いや、ここのモンスターで持ってる奴見当たんなかったし、師匠も覚えてなかったから教えてもらえなかったし」



と言い訳じみた事を言った後、つーかここの森ほとんどゴブリンしか出ないしゴブリンが隠蔽なんて持ってるのかよと八つ当たり気味に言い放つ。


カルラは確かにその通りだと納得顔を見せていた。しかも手のひらに拳を叩く納得したと言うポーズ付きで。



「それでここから一番近い村に行くにしても時間がかかるので一晩だけでも泊めてもらえれば…それがここに来た理由です」



丁寧に理由を話す。もし泊めて貰えなければ野宿しなきゃならいので下手に出て少しでも泊まれる可能性を上げる事が狙いだ。野宿などした事も無ければ知識も持ち合わせてないのでできる自信がなかった。



「そう、分かったわ。ただし条件付きだけど。それでもいいなら一晩とは言わず一週間でもいいわ」



とちょっと嬉しそうにOKの合図を出す。正直一度会った位の人間を泊めてもらえるとは思ってもいなかったので返事をするのに時間がかかってしまう。



「…え、あ お願いします」






泊めてもらえることになり、色々と今後の事についてどうするか意見をもらうことが出来た。



「国に見つかってしまったのはこの際もう諦めた方がいいわ。どうせすぐに報告され手配書が出回るから。でも、見た人物全て殺すとかなら時間くらいは稼げるでしょうけどね」



中々物騒なことを言ってくれるな、そもそもそんな力はない。勇気もない。



「それはやめときます。結局時間稼ぎにしかならないしリスクが高いですしね」


「そうね。ならまずは見た目を変えて見つからないようにするのはどう?」



犯罪を犯した者が捕まるのを避ける為に体型を変えたりするのは知っているが一日程度に変わるものでもないだろう。と言うかその前にスキルを隠す事をしなければならない気がする。その事をカルラに告げる。



「そうしたいんだけど生憎、私隠蔽系のスキル持ってないの」



いきなり初手から詰むセリム。oh my godとつい心の中で叫んでしまう。ちなみに英語はほとんど出来ない。


カルラは真剣に考えてくれているらしくう~んと唸っている。少ししてそうだ!と言いだし立ち上がるとどこかに行ってしまう。


その間特にやることも無かったので部屋の中を見回す。女性にしては物が少なく殺風景な印象を抱かせる部屋だ。他の部屋は分からないが、今現在いる部屋にはテーブルや椅子などの家具類それからキッチン。あとは本棚に数冊の本が入っている位だろうかざっと見た所そんなもんしかない。あと観葉植物らしきものがある。


そうやって部屋の中を見回しているとカルラが戻ってきた。



「これこれ、あげる」



そう言い銀色の指輪を投げてよこす。指輪にはぐるっと一周する位の長さの文章が二行程書かれており所々に宝石らしきものが嵌っている。



「これは?」


「その指輪には隠蔽スキルが込められてるの。私の自作のマジックアイテムの指輪よ。長いこと生きてるとやることも無くてね、ついつい色々やってしまうの」



ついでに作った感みたいなものがものすごくしたが、くれると言うなら貰っておこうと思う。と言うより予想外の物が手に入りちょっと驚くと同時にカルラの事を見直す。伊達に長生きはしてないらしい。


お礼を述べ指輪を嵌める。ステータスを表示してみると隠蔽のスキルが表示されている。



名前 セリム・ヴェルグ

種族 :人族

年齢 :7歳

レベル :30

体力 :1200

魔力 :1100

筋力 :1600

敏捷 :890

耐性 :1200


スキル

神喰ゴッドイーター LV2

剣技 LV6   

纏衣まとい LV8→9 up 

筋力強化 LV7 

拳技  LV5 

命中率上昇  Lv5 

体力強化  Lv3  

敏捷強化  Lv2 

耐性強化  Lv1 

火魔法  Lv2 

魔力強化  Lv1 

硬化  Lv3 

気配遮断  Lv3 

気配感知 Lv1 



隠蔽  Lv10 max≪魔道具≫



纏衣のスキルが上がっていた。ちょっとラッキーなどと思ってしまう。




「ステータスに隠蔽スキル出た?」


「出てます」


「ならどれを隠蔽したいか意識して、そうする事で見えなくすることが出来るわ」



カルラのアドバイスに従い隠蔽スキルを試す。




名前 セリム・ヴェルグ

種族 :人族

年齢 :7歳

レベル :30

体力 :1200

魔力 :1100

筋力 :1600

敏捷 :890

耐性 :1200


スキル

神喰ゴッドイーター LV2】

剣技 LV6   

纏衣まとい LV9  

筋力強化 LV7 

拳技  LV5 

命中率上昇  Lv5 

体力強化  Lv3  

敏捷強化  Lv2 

耐性強化  Lv1 

火魔法  Lv2 

魔力強化  Lv1 

硬化  Lv3 

気配遮断  Lv3 

気配感知 Lv1 



隠蔽  Lv10 max≪魔道具≫

  

【】の中のものは基本的には他人には見えない。例外もあるが。




「出来た?」


「視れば分かるんじゃ?」



隠蔽したのだから当然見えないものと思っているセリム。だが何事にも例外は付き物でそれがこの女性カルラだった。



「生憎と私の全てを見通す眼イルミナティはその程度の隠蔽じゃ防げないわ」


「は?」



なら隠蔽意味ねぇじゃねーかーと叫びたくなる衝動に駆られるがそこは我慢。一応相手は恩人だ。



「魔眼を防ぐには隠蔽の上位スキル"隠匿"でなければ無理よ。と言ってもそうそう魔眼なんて持ってる人はいないと思うけど…まず悪魔と契約したがる人が少ないのよ。代償が付くからね」



安心させるための説明なんだろうが、安心できない。とは言え何もないよりはマシだろう。一つ問題が片付いたところで次の問題に取り掛かる。


見た目をどうするかと言う問題である。だかそこは既に対策をとっているらしくカルラが怪しげな赤色の液体を差し出してきた。



「これが交換条件のもの。ついでに見た目にも効果があるわ」



何の液体かわからず訝しんでいるとカルラから魅力的な悪魔の囁きがもたらされる。実際に殆ど悪魔だが…



「泊めるのとついでに魔法を教えてあげてもいいわ。それを飲んでくれたらね。死にはしないから大丈夫よ」



もう完全に怪しさ満載、天元突破だったが魔法を教えてもらえるとあっては逆らえない。ローは魔法を覚えてなかったので教えてもらえなかったのだ。その為ゴブリンを吸収してしか習得する方法がなかった。


意を決し液体を飲む。





その瞬間思いっきり殴られたような感覚がそれも複数セリムを襲う。



「アァァァァァァァァァァァァ」



どこかデジャヴ感を感じながらセリムは叫ぶ。



「何を‥飲ませ…やがっ‥た」



朦朧とする意識を必死につなぎ止め問いかける。死なないとは言っていたがかなりの激痛だ。


身体が熱い。身体のあちこちからボキッ、バキッと異音が鳴り今にも意識が飛びそういなるが堪えカルラを睨む。今はそれが精一杯だった。


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