人形遣い
天城雪子
第1話 プロローグ
「やっと仕事終わったー」
サラリーマン風の中年男性が疲れた顔でオフィスを出てきた。
時計を見るともう11時を回っていた。
最近部長に昇格したばかりで仕事が一気に増えたのだ。
新しい仕事はとてもきつかったし収入もあまり上がらなかったが男は確かに充実して
いた。
家に帰れば専業主婦をしているやさしい妻とやんちゃ盛りの中学生の息子がいる。
彼らのために働くことを思えばすこしも苦ではなかった。
「さて帰るかあ」
男は駅に向かおうとした。が、歩けなかった。
彼は気付いた。自分の体が真っ二つになっていることに。
ハァハァ
男は暗い小道を無我夢中で走り続けている。
背後から何か得体の知れないモノが追いかけてくるのを感じる。
しかし男は振り返ることすらできない。
振り向いた瞬間命を落とすことが本能的にわかっているのだ。
だから走り続けるしかない。安全な場所までー
やっとの思いでコンビニの明かりが見えてきたのでとりあえず飛び込むことにした。
しかし不運なことにコンビニの前には大きな横断があった。
交通量の多い横断歩道だったので信号が青になるのを待つしかない。
「くっそぉ。いつになったら青になるんだよ」
その間も影は着実に近づいてきている。
男はいをけっして渡ることにした。
が、そのとき=その影が宙を飛んだのだ。
男は驚いてバランスを崩して転倒してしまった。
そこに材木を積んだトラックが走り込んできた。
トラックは倒れた男の体の上をぐちゃっと奇妙な音を発しながら素通りした。
あたりにはもはや原型をとどめていない男の死体が転がっているばかりだった。
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