タレント

苫野りう

タレント

 私は、ある番組に出演することが決まった。

 その番組は、ある大物の語り手を呼び、怖い話をしてもらうという内容だった。

 本番当日、出演者である売れっ子の女優さん達が揃い、その面々に遅れを取らないように頑張るぞという意気込みで、私は本番に望んだ。そして、語り手が拍手で迎え入れられ、いよいよ怖い話が始まった。

 しかし、ふたを開けてみたらクソほど話が面白くなく、全く怖いと感じることができなかった。

 私以外の出演者も、私のように心底困った表情をしているのかなと思ったが、思いの外、ちらほらと悲鳴が聞こえ始め、しまいには泣いてしまう人もいた。

 このままではまずいと思い、その場のノリに便乗し、さすがに泣くまでは行かなかったが怖そうな表情をしようと心掛けた。

 嫌に長い収録が終わり、私はそそくさと帰ろうと席を立つと、出演者一同が集まり、何やら話をしているようだった。主な話題は例の怖い話の件で「面白く無さすぎ。次はちゃんと怖い話にして欲しい」とか、「泣くのって疲れるんだからぁ」等の愚痴を叩いていた。

 その光景を見た私は、素でゾッとしてしまった。やはり人間が一番怖い。

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タレント 苫野りう @Riu-tomano

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