第二章-2:あたしと悪魔と最終兵器-2

「……っ、高橋――っ!!」

 高橋「先生」に連れてこられたのは、学校の北側にある裏庭。今はホームルーム中だから、当然周りには誰もいない。あたしは心おきなく、腹の底から叫んだ。

「どうした」

 さっきのお仕事スマイルもきれいさっぱり消えた高橋が、見慣れた無表情で言う。

「突然叫ぶとは……ストレスでも溜まっているのか? ここの中学校の昼食は給食ではなく弁当持参らしいから、牛乳を摂取する機会が少ないのは分かるが」

「牛乳関係ねェェェェッ!!」

 ストレスはお前のせいだ――!

「そうか? せっかく俺は今教師なんだし、この中学校に給食を導入する提案をしてもいいぞ」

「音楽教師に、給食に関するどんな権限があるんだよッ!!」

「でも音楽は素晴らしいぞ」

「だから何だ――ッ!!」

 どうしてこんなに会話が噛み合わないんだ!

 っていうか、あたしはさっきから突っ込み続けてるけど、突っ込むポイントはそこじゃない!

「なんで!」

「何がだ」

「なんで高橋があたしの学校にいるの!」

「音楽教師だからだろう」

「なんでそんな『当然だろう』みたいな顔してんのよ、そうじゃなくて! どうしてあんたが音楽教師になってんのよ、あんたはエクソシストじゃなかったの!?」

「この国では、エクソシストは音楽教師になってはいけないという法律があるのか?」

「お前は小学生か、何だその屁理屈は――ッ!!」

 まずい、息が切れてきた……。

「大丈夫か、のばら」

 高橋が表情を全く変えずに、あたしの顔を覗きこんでくる。

「……高橋に心配されたくないんですけど」

「そうか」

「うん。……って、何、自然な感じで会話終わらせてんだ!!」

 危ない、また高橋のペースに持ち込まれるところだった。頑張れあたし、ここは追及しないと、あたしの平和な三学期が真っ暗だ!

「誤魔化されてたまるかっ! もう一回聞くよ、どうして高橋があたしの学校に来てるわけ!? わざわざあたしを呼びだしたところからしてどうせ魔物関係なんだろうけど、別に魔物退治なら不法侵入しとけばいいじゃん! いや、不法だから本当はだめだけど! わざわざ教師になって潜入してる理由は何よ!?」

 高橋に邪魔されないように、一息で言い終える。当の高橋は、顎に手を当てて、……どうやらちょっと感心してくれてるみたいだった。

「なかなか鋭いな。さすが神の」

「巫女はバイト!!」

 高橋が言い終わらない、かつあたしがフライングにならないタイミングで否定すると、高橋は軽く首を傾げた。よし、ナイスタイミング。……そのタイミングが分かるくらい慣れてきたんだって思うと、全く喜べないけど。

「まあ、それは後でじっくり牛乳を飲みながら話し合うとして。ホームルームが終わる前に説明し終わらないと、生徒たちが来てしまうからな。手短に言うぞ」

 あ。少し、高橋の緑の目が鋭くなった。ちょっと真剣な話らしい。台詞の前半部分に突っ込みどころはあったけど。

「俺がこの守本中学校に来た理由。それは、この学校に用があったから。エクソシストとして、この学校に潜入する必要があったからだ」

「用、って」

「この学校に、対魔物用の最終兵器が隠されている」

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