靴擦れ

第1話

波の音が聴こえるのは

きっと今恋をしているんだね？

寄せる想いと返す言葉だけが

心の真ん中で待ち合わせをする

好きですとインプットしたままで

胸に氷が当たる時の痛み

冷たくて切ない涙のように

透明なナイフが溶けてなくなる

君はもうハードルは跳ばないけれど

グラウンドの隅を見つめていよう

蟻の行列が巣に帰ってゆく

君の行方は誰に訊けば良い？

人気のない道で物音がする

缶コーヒーの転がる場所まで

急いで行くとヘルメットを脱ぐ君と

有刺鉄線越しにキスをした

携帯電話のライトを付けて

季節外れのプールで隠れんぼ

擦りむけた踵に血が滲んで

二人とも鬼を選んだみたいだ