雨模様

彼の名は変わっていた。

変という意味では無い。本当に変わっていた。

意味することはひとつであった。


この感情は私のものだ。

18年間生きてきた記憶と感情も私のもので、18年間想い続けたこの感情も私のもので、これから噛み続けるであろう苦さすらも私のものである。


お前の人生を私がコントロール出来ることは無い癖に、私の人生はお前の言葉一つでコントロール出来る。


この下らなさが私の感情に無理やり入り込むのが私の感情の外で必然として定義されている、そんなものが恋というのなら。

それでもなお崇高で気高い私の感情の形だと言うのなら。


受け入れよう。


私はお前が好きでした。


暗い空に暗い顔がひとつ。

影を落として私の影と重なりまたひとつ。


雨は降らない。

決して降らない。


返事はない。

静寂が答えを表していた。


「雨、降れよな」


私は雨を降らした。


私は彼に雨を降らした。


空は泣かなかった。

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