八光年

ある冬の日、七十億人が居たら七十億通りの日がある、そんな日。

そんな日に私は現実に夢を見た。明るく光った"それ"は私の未来を照らすのだ。


キラキラキラ


"それ"は太陽よりも眩しく


キラキラキラキラ


私の意識を飲み込んだ。

飲み込まれた私は"それ"を掴むために必死になった。

必死になった私は我を忘れ、時を忘れ、それを欲した。


ズキズキ


光っていた"それ"は、いや、まだ光っているそれは私を傷つける。


なんで?


早く、早く"それ"を手に入れたい。

私を忘れた私。忘れるたびに光を増していく"それ"は遠くなっていく。


イタイイタイ


本当に痛い。痛すぎるのだ。

あれだけ眩しかった光が点となっていく。


約八光年先に見える"それ"、つまるところの"愛"は私が見えるよりもとっくに光尽きていたのだろうか。


まったく、七十億通りの愛なんて酔いも冷めるしな。

ふてぶてしく言った私は、皮肉にも光に影を落としていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る