遥か未来の約束に、繋いだ昔の約束を。

 幼馴染が危篤。そんな電話が僕のもとへと届いた。

急いで病院へ向かう中、僕は昔のことを思い出していた。

 

 それは、いつの日だったのだろうか。今思えばその"いつかの日"すらも

無かったのではないかと思えてくる。

 

 いや、そんなことはないのだろう。これは僕の約束で、これは僕への罪なのだろうから。


 その日は夏の日差しの暑い日で僕は幼馴染と一緒に遊んでいた。確か…小学二年生くらいのことだっただろうか。二人だけの秘密基地を作ろうと、場所を探し木を集めそれっぽい家を作ったのを覚えている。

 

 新しく作った僕らの秘密基地は小学生が作ったにしては大きく、だけど無骨だった。だけどそんな秘密基地は僕はとても気に入っていて、親からうるさいことの言われない、静かな、とても静かな僕らの第二の家だった。

 

 そしてその日、事件は起こった。作った秘密基地で疲れのあまり寝てしまったからだ。大変だった。起きると夜中で、村は喧騒に包まれていたから。僕らの名前を呼ぶ村長さんの声は緊張に満ちていて、このまま知らんぷりでもう一度寝てしまおうかと思ったほどに。

 

 でも帰らないわけにはいかないと思い、幼馴染を背負い帰路についた。

当然のように怒られたが、ただ、その日お母さんから貰った暖かく慈愛に満ちた抱擁の温かさはいまでも心に刻まれている。

 

 次の日幼馴染から大事な話があると言われ、秘密基地に赴いたのは覚えている。

そしてその日僕らは約束した。大事なことを。とても大事な、ことを。


 僕の忘れていたこと。約束?いいや違う。秘密基地を作ったことすら僕は今の今まで忘れていたのだ。そんな僕はたぶん、はるか昔に約束したことは恐らく一生思い出せないのだろう。

 

…なあ教えてくれよ。お前と約束したことってなんだっけかな。なあ…答えてくれよ。…ごめん。

 

 かすれた声で僕は呻く。喚く。嘆く。静かに眠る彼女の隣で、冷たくなった彼女の手を握りしめながら。


 そして僕はもう一度思うのだ。あぁ、やはりこれは僕への罪なのだろう。

そしてあの約束は思い出せないのだろう。あの"約束"は果たせないのだろう。


時間はもう戻らない。笑顔ももう戻らない。そう思うと涙ももう、止まらなかった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ここはとある村のとある秘密基地。そこで彼、彼女らは約束をする。


そして彼女はこう言う。

「ねえ、いつか私を幸せにしてね…?」


そして彼は恥ずかしそうにこう言う。

「あ、ああ!」


…と。


これははるか昔に約束した二人の記憶。


これははるか未来に知らずとも果たされる未来への約束。

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